スマートフォンは、
脳科学の分野で議論を引き起こしている
生活必需品となっています。
依存してしまうと、
働き盛りの30〜50代でも記憶力の低下や判断力、
意欲の低下が起こると指摘されています。
患者の脳では、
前頭葉の血流が減少していることが確認されています。
スマートフォンからは、
文字や映像などの大量の情報が絶えず流れ込み続け、
情報処理能力が追いつかなくなる可能性があります。
そのため、「スマートフォンによる脳の過労」や
「オーバーフロー脳」といった
言葉を使う脳神経外科医も現れており、
この脳の異常が一時的なものなのか、
認知症の初期症状なのかについて議論が行われています。
さらに、東北大学では、
スマートフォンの使用時間が
長い子供の脳の発達の遅れが見られることを
発表しました。このため、
一部の自治体では子供のスマートフォンの
使用を制限する動きも出ています。
こうした状況の中で注目されているのが、
「デジタル・デトックス」という試みです。
リゾート会社では、
スマートフォンを手放して自然を心から楽しむ滞在を
提案しています。
また、スマートフォンメーカーも、
一定時間を超えるとアプリの
使用が制限される機能を開発しました。
スマートフォンのリスクとその対策が
明らかになりつつあり、
その最前線についてお伝えします。
“スマホ脳過労”
記憶力や意欲が低下!?
近年、医師や研究者の間で、
スマートフォンの過剰使用によって脳に
異常が引き起こされるケースが
増加しているという指摘が相次いでいます。
この状態は「認知機能の低下」とも「脳過労」とも
呼ばれています。
以下は、スマートフォンの使用が原因で
脳過労に陥った人の脳画像です。
青色が血流の減少による機能低下を示しており、
正常な状態と比較すると明らかな機能低下が広がっています。
例えば、テレビを視聴しながらスマートフォンを操作したり、
パソコンを起動させながらスマートフォンを使用したり、
また、スマートフォンの中で複数のアプリケーションを
同時に開き、複数の情報を見たり聞いたり、
文章を書いたりすることができます。
これを「マルチタスク」と呼びますが、
実は脳はマルチタスクを行うことには苦手意識を持っています。
本来、一つのことに集中したいと思っても、
脳は同時に複数のことを処理することができず、
素早く切り替えることが必要になります。
このような切り替えが頻繁に行われることによって、
スマートフォン使用による脳過労の原因と
なるストレスが脳に蓄積されていくのではないかと
考えられます。
“スマホ脳過労”
子どもも学力低下!?
スマートフォンが知らず知らずのうちに脳に
悪影響を及ぼしているという事実があります。
特に子供においては、
より深刻な影響が示唆されるデータが存在しています。
仙台市において、
中学生の数学の学力とスマートフォンの
利用時間の関係を調査した結果があります。
スマートフォンを「全く使わない」
または「1時間未満」使用する生徒たちが、
最も高い点数を獲得していることがわかっています。
スマートフォンの使用時間が長いほど、
平均点が低下する傾向があります。
この点数の低下は、勉強不足が原因だと
思われるかもしれませんが、
実際に調査した生徒たちの勉強時間はほぼ同じでした。
また、長時間ネットを使用する子供たちの脳を調べると、
黄色い領域が目立ちます。
これは、脳全体をつなぐ神経線維の集まりである
「白質」の発達が遅れている領域です。
川島隆太教授、東北大学
「これまでにない広範な領域に悪影響が
現れるものとして初めて出会いました。
子供たちの記憶能力にもマイナスの影響が予測されます。
極端な話ですが、法的な制約によって18歳までの間は
スマートフォンの使用を1時間以上制限することで、
将来的には幸福に繋がると考えています。」
「スマートフォンを1時間以上使用しない」という規制は、
学術界で確立された見解ではないものですが、
スマートフォンメーカーは主導権を握って
自発的に対策を進めています。
実際に、使い過ぎを防止する機能が導入され始めています。
例えば、iPhoneでは「スクリーンタイム」、Androidでは
「Digital Wellbeing(デジタル・ウェルビーイング)」と
いった機能があります。
これらの機能では、
特定のアプリの使用時間を事前に制限する設定が可能であり、
設定時間を超えるとそのアプリが使用できなくなる仕組みです。
脳は可塑性という特性を持ち、
起こった変化を保存する能力があります。
一度悪いことが起きたとしても、
習慣を変えて良い方向へ向かっていくことで、
脳は変化していくのです。
特に子供の場合、
その可塑性は非常に高いと言われていますので、
早く回復する可能性があります。