なんか昨日はみんなサッカーを見てたらしい。



僕はサッカーをここ十何年観戦していない。



別に嫌いとかではないのだ。



ただ、シンプルに興味がないのだ。



友人達や世の人々が夢中になる理由もな~んとなく解る気もする。



ウチのヴォーカルの可愛ノ マリヲも好きらしいし。



ただ、僕は本当になんとなく見ない。其処に深い理由はない。



とにかくそんな感じだから大きな試合の前後日らへんの会話には本当に苦労する。



みんなサッカーの話をしてる。



飲み会の時とかは特に盛り上がって話をしてる。



酒が入って声も自然に大きくなり、ジェスチャーなんかも大げさになってくる。



その場にいるもれなく全員が、興奮している。



僕を除いて。



非常にマズイ雲行きになってると言えるだろう。



僕は試合を見てないし、見ようとする努力もしないので全く話についていけないが



何とか阿保みたいな笑みを浮かべ、適当に頷いたりすることで虚しくも自分の体裁を保とうとする。



そんな必死な僕の気持ちを置き去りにするかのように、宴の盛り上がりはグイグイ加速していく。



よく解らない単語や横文字がバンバン出てくる。



雲行きは完全に悪化し、もう僕の頭の上だけ土砂降り状態である。



土砂降りのなか阿保みたいな笑みを浮かべ頷き続けているのである。



もうそれは「阿保みたい」ではなく、「阿保」以外の何者でもない気がする。



そこで僕は不意に或る既視感に襲われる。



あれ?こんなこと前にも有った。



あれ?この空気感、僕知ってる。



土砂降りの中、一人阿保丸出しで只、ニヘラニヘラ笑い、頭を上下させるだけの



マシーンの様な存在になったことが在る。幼い頃,,,,,,,,,なんだっけ...........?








っっ!?





ポケモンだっ!!





「ポケモン言えるかな」だっっ!!!




周りのみんなが我れ一番!と大声で歌ってる中に全く歌えない、と言うか歌の意味がわからなかった僕。



わからないから、とにかく笑顔で必死に頷いてた阿保な小学校時代。



小学生はシラフでもテンション高かったんだなー。懐かしいなー。



なんてこと考えながらも、顔にはしっかり笑顔を作り、首を縦に振り続ける僕。



もう僕の残り体力も少ない。



と言うより、このままでは土砂降りの雨のせいで風邪をひいてしまう。



この事態を早急に解決しなけばならない。



そこで勇気をエイヤッと振り絞り、さりげなく違う話題を宴の中に投げ入れても



誰も気付かない。



何故ならば雨に凍えた僕の声は非常に小さく、宴を楽しむ彼らの声は非常に大きいからだ。



事態を早急に解決することを失敗した僕は笑顔を崩さないままゆっくりと立ち上がり、



「トイレ近くなっちゃったなー。」



なんてことをポツリ呟き、晴れ間を求めてトイレに早急に退避するのであった。



もちろん、楽しく熱狂的な宴の世界から僕が消えたことは



誰も気付かない。



そして阿保のいなくなった宴の盛り上がりはますます加速していくのであった。