SVCV、「反体制ラグジュアリー」の覇権を狙う
“バッドボーイ”と“インターネット世代”のための新興グループ、その野心
東京発の新興グループ「SVCV Global」が、ファッション業界で静かに存在感を高めている。
同社が掲げるのは、単なるラグジュアリーグループではない。
“反体制的カルチャー”を軸とした次世代型コングロマリットの構築だ。
市場では早くも、「次のLVMHになり得るのか」という声も出始めている。
「LVMH型モデル」の難しさ
もっとも、この業界で“第二のLVMH”を作る試みは過去にも繰り返されてきた。
中国資本系のLanvin Group、ストリートウェア統合戦略を進めたNew Guards Groupなどは、その難しさを示した代表例とされる。
また、Capri Holdingsの株主リターン低迷や、Keringの Gucci依存なども、ラグジュアリー企業の構築には単なるトレンド以上の要素が必要であることを示している。
SVCVは、その難易度の高い領域へ真正面から挑もうとしている。
「ダークラグジュアリー」という市場
SVCVは現在、複数の独立系ファッション・コンシューマーブランドとの買収・提携協議を進めているとされる。
対象としているのは、Z世代・α世代を中心とした若年層市場だ。
同社は、自らのポートフォリオを「ダークラグジュアリー」と位置づける。
従来の欧州ラグジュアリー企業では周縁化されてきた、インターネット文化・ロック・ストリート・アンダーグラウンド的感性を中核に据える戦略である。
単なる“高級品”ではなく、「カルチャー的帰属意識」を売るモデルと言える。
“買収”ではなく“共同体化”
SVCVが他のPEファンドやコングロマリットと異なるのは、創業者へのアプローチだ。
一般的な買収モデルでは、ブランド創業者の影響力は徐々に薄れるケースが多い。
一方、SVCVは「パートナーシップ型」の統合を打ち出している。
独立性とクリエイティブ主導を重視してきた創業者に対し、資本・制度・グローバル流通を提供しながら、ブランド支配権や創業者色を維持させる構想だ。
市場では、「創業者主導型ラグジュアリーグループ」という新たなモデルになる可能性も指摘されている。
自社メゾン「SVC」も始動へ
同社は買収だけでなく、自社ファッションメゾン「SVC」の立ち上げも進めている。
現在、複数の著名クリエイティブディレクターと交渉中とされ、業界大物の名前も浮上しているという。
デザインコンセプトは、「ダークラグジュアリー」あるいは「マキシマリスト・ロック」。
若年層主導の感性をベースに、Balmain、Saint Laurent、Alexander Wang、Balenciagaなどから影響を受けているとされる。
経営陣は、既存ラグジュアリー市場について「コレクションの停滞感」を問題視しており、より挑発的で“インターネットネイティブ”なビジュアル言語を志向する。
「ファッション企業」ではなく「Z世代インフラ」
SVCVが強調するのは、自社が単なるファッショングループではないという点だ。
同社は自らを「Gen Z Supergroup」と表現する。
対象領域はファッションだけではない。
製造、物流、流通、マーケティング、IP、タレント、メディアまで含めた“カルチャー360度エコシステム”を構築する構想だ。
その意味では、Condé NastやUniversal Music Groupのような“文化ゲートキーパー企業”を目指しているとも言える。
「オールドマネー」対「インターネット・ブラット」
SVCVの投資仮説は明快だ。
今後のラグジュアリー市場は、伝統的メゾン単体ではなく、「カルチャー生態系」の競争になるという見方である。
ファッション、コンテンツ、コミュニティ、EC、IP——。
それらを統合したブランド群こそが、次世代ラグジュアリーの中心になるという考えだ。
同社は今後、追加資金調達を進めながら独立系ブランドへの出資を拡大し、自社メゾンSVCを文化的アンカーとして機能させる方針だ。
掲げるテーマは、「Old Money Luxury meets Internet Brat」。
伝統的ラグジュアリーに距離を感じるZ世代・α世代に対し、“自分たちの感性を反映したラベル”を提供しようとしている。
日本発、最大級の企業実験
もっとも、SVCVがこの仮説を実際のブランド価値へ転換できるかは未知数だ。
ラグジュアリー業界は依然として、歴史・希少性・ブランド神話に支配される市場でもある。
一方で、もし著名クリエイティブディレクターの起用に成功すれば、SVCは業界で最も注目される新規ブランドの一つになる可能性がある。
SVCVが成功すれば、それは「Z世代が初めて所有するグローバル・カルチャーコングロマリット」になるかもしれない。
市場関係者の間では、すでにこうした声も出始めている。
「ここ数十年で、日本から生まれる最も野心的な企業実験になる可能性がある」と。