「一番怖かったこと」の正体


病棟でタキる患者さんを前にしたとき、

一番怖かったのは、

脈拍数が高いこと自体ではありませんでした。


怖かったのは、

「なぜタキっているのか」を

その場ですぐに判断できない自分でした。


教科書では

「バイタルを総合的にアセスメントする」

と書いてあるけれど、

実際の病棟では、

そんなにゆっくり考える時間はありません。


脈拍数が高い数字を見た瞬間、

「早く動かなきゃ」

「でも何を優先すればいい?」

と頭の中が一気に忙しくなります。


新人の頃は特に、

正解が分からないまま時間だけが過ぎていく感覚が

とても怖かったです。



 「何から確認すればいいのか」が分からなかった新人時代


タキっている患者さんを前にすると、

「とりあえず何かしなきゃ」と思うのに、

何を最優先で確認すべきかが分かりませんでした。


脈拍が速い。

でも──

血圧は?SpO₂は?

呼吸は苦しそうじゃない?

痛みは?発熱は?


確認すべきことは頭に浮かぶのに、

それを順番立てて整理する余裕がない。


 


「まずはこれを見て」

「次はこれを聞いて」

という判断ができないまま、

時間だけが過ぎていく感覚。


その間にも

ナースコールは鳴るし、

他の患者さんの対応もある。


焦りと不安で、自分の心拍数まで上がっていた

そんなことも、今思えばよくありました。




 少しずつ楽になった考え方と、今なら思うこと


経験を重ねる中で、

病棟でタキる患者さんに出会ったときの

考え方が少しずつ変わっていきました。


新人の頃は、

「自分一人で正しく判断しなきゃ」

と思い込んでいましたが、

今思えば、それが一番自分を追い込んでいた気がします。


タキっている理由がすぐに分からないときは、

それ自体が“異常”ではなく、

報告や相談が必要なサインだったんだと思います。


迷ったら、

「脈が速くて、原因がまだはっきりしません」

そう正直に先輩に伝えていい。


完璧なアセスメントよりも、

早く共有することの方が、

患者さんにとって安全な場面もたくさんありました。


そしてもう一つ思うのは、

病棟での判断力は、

知識だけでは身につかないということです。


何度もタキる場面に出会って、

少しずつ

「今、何が一番大事か」

を選べるようになっていく。

だから、

今タキる患者さんを前にして不安になっている人も、

それは成長途中なだけ。