あえて言うまでもないが、私は世間一般的に

そうそう受け入れられる生き方をしていない。



実際、実の母親にも幼少時から


「大輔さえ生まれていれば…」


といわれ続けてきた。

“大輔”とは流産した子でも死産だった子でもない。

母親が男の子を熱望しており、いれば大輔と名づけたと。


「ああ…大輔が欲しかった」


と繰り返す。もうじき42年経つ今も尚言われ続ける。


そして、出来上がった私は“家庭”や“結婚”

“男性”に夢を持たない性別:女。



私が22~3歳過ぎた頃からは、それに合せて


「同窓会なんて行かないよ。

皆、子供の自慢ばかりして、聞いてるこっちは気分が悪いだけだ。」


と。それもまた、今も言い続ける。


「ごめんね。自慢にならない子供で。」


今年、42歳と39歳になる娘はいまだにそう呟く。

妹にいたっては子供が出来ない。

もう5年近く通院しているが出来ない。


母親は言う。


「普通の人はまたいだだけで出来るのに…

誰が悪いだかねぇ…。」


妹と義弟の前で言う。



普段は物分りのいい母親をするようになった実母。

2面性はあるが、それで上手く回っていればそれでいい。


そう思うようになって、もう何十年。

それでも時折、それは私達姉妹の心に暗闇を作る。







性別も生き方も、一番近い母親に受け入れられていない娘。


分かっていても受け入れられない。

でも乗り越える力が人にはあって、それを反面教師にもできる。


私は娘達に“秀でろ”とは望まなかった。



素直であれ。


健康で健全であれ。


自分らしくあれ。


夢や希望を持てる子であれ。



長女が中学3年の夏、担任の先生から言われた


「勉強しろって言わないのは本当ですか?」


長女から聞いて、驚いて連絡してきた先生。

本当です。すいません。


その辺りから、多少勉強に関しては言うようにもなったが、

勉強…親の為にするものでもないしね…うんっ!



兎にも角にも、私は自分の身の上からくる事情もあり、

馬鹿みたいに甘かったのである。







次女と彼氏Tから、報告を受け自宅に戻って、多分約2時間後。

Tの父親から電話が着た。


T父 「急な事ですいません。」

   「今夜中にお会いできませんか?」


私は直ぐにお会いできますと答え、指定されたTの自宅近くのファミレスまで急いだ。

(こちらの近くまでと言われたが、三女の関係の親御さんに偶然でも会いたくなかった)

帰りそこなったYも同行を申し出てくれた。



ファミレスに到着すると、Tと次女、Tの両親が

何故か横一列に座って待っていた。

Tと次女は手に手を取り、寄り添ってにこやかに座っている。


何かおかしい雰囲気だよなぁ…


が、第一印象。

お互い、一通りの挨拶を済ませ、席に着く。


T父が「息子から話を聞きまして…」と話し始め、

息子…Tが言いたい事があるという。


聞きますと答えると、Tが話し始めた。



「次女ちゃんとの出会いは今年1月末です…

直ぐに仲良くなって、こういうことになったのですが、

決して遊びではありません。


僕はまだ高校生ですが、この事には親にも協力してもらって、

責任を取ろうと思っています。

次女ちゃんもそれを望んでいます。


僕達はまだ幼いですが、


次女ちゃんが両親から与えられなかった、

親の愛を、僕達は与えられる自信があります。


僕は親に愛されています。

次女ちゃんも僕と同じ愛され方をしたかったはずです。


お母さんには分からないかもしれませんが、

次女ちゃんはそれをしっかりと知っています。」



そうきたか…



「名前も愛夢とつけました。


お母さんのように無責任に子供は生みません。」



そりゃまたご立派な…

と思い、次女を見ると、何故か勝ち誇った顔。




よく分からないのだけども…

とそこでYが質問。


Y 「その話、誰から聞いた?」


T 「次女ちゃんです」


Y 「両親はなんて言ってる?まだあれから3時間くらいだよ?

   話合いはしたの?」


T 「基本は反対だけれど、そういう道もあると」


Y 「学校はどうするの?」



そこでT父登場。



T父 「僕達も最初は反対をしたんだけどね…

   この子達の気持ちが強くてさ。

   なんでも反対するのが親の仕事じゃないじゃんね。


   次女ちゃんの話を聞いて、本当の家族が欲しいのかなとさ。

   やっぱ子供には愛情をかけないと。


   Tには当然学校には行かせるよ。

   次女ちゃんには家で暮らしてもらって、育てるのは

   僕達とお母さんが手伝えばいいでしょ?」



Y 「子供は親が育てるのが筋でしょう?

  結婚も出来ない年の子供相手に、何を無責任な…

  それに、だれが次女に愛情を与えていなかったって?」


T父 「Tは優秀な子で、中学でも学年1位2位を争っていたくらいなんだよね。

   学業を続けたいっていうのだから、応援するのが親の仕事でしょ。


   次女ちゃんが一緒にいないなら、自分は家をでて働くって言うんだよ。

   それは困るでしょ?まだ子供だよ?」


Y 「まだ子供が親になれるんですか?」


T父 「じゃあ、お母さんは反対なの?無責任だねぇ。」




そんな調子で、話は進んでいった。

この間、私の口からは一言も言葉が出ず。


なんて言っていいのかも分からなかった…

と言うか、言ったらそれを発端に暴れていたと思う。


暴れなかったのは、もし次女がそっちの家にいる事になったら、

少しでも可愛がってもらえたらと思ったから。


それしか私には出来ないと思ったから。




私はまだまだ甘かった。