短編です。
今日は流星群があるという事で、妹と外に出て流れる星を見てたんですが。
「これ見てギュイェのネタになるかなぁとか思ってさぁ」

なんて言う妹にまんまと乗せられました。(笑)

くっついて無い上にギュの気持ちにさえ気付いて無い兄さんが居るんですが、こんな二人の突発短編もイイんでない?なんて優しく受け入れて下さる方はどぞっ!!






【星に願いを】



ゲームへと没頭していた午前2時。手元のワインも終わってしまい、偶には違う酒でも呑むかと座っていたイスからキュヒョンは腰を上げた。今日はソンミンは留守だというの事もあり好き放題やっていたものの、昼からはバラエティの収録がある。あと少し呑んだら寝ようと決めて、キッチンへと足を向けた。
もう季節は冬。暖房の効いていないリビングは深々と冷え込んでいる。早く目的の物を取って暖かい部屋へ戻ろうと早足にソコを通り過ぎようとして、冷たい風の流れに思わず足を止めた。

(………風?)

戸締りはちゃんとした筈だ。なのに何故リビングから風の流れを感じるのかと横を見て、キュヒョンはある一点へと目を向けたまま固まってしまった。リビングからベランダへと通じるガラス戸。そこが大きく開かれていたのだ。風のせいでカーテンが仄かに揺れ動いていて、そこから流れてくる外気は凍てつくような冷たさを含んでいる。

(誰が………)

この寒い中、何故ソコが開いているのかは判らない。が、このままでは室内が益々冷えてしまう。何処のバカが開けたのかは知らないが全く迷惑もイイところだ。薄手のカーディガンを羽織った体へと腕を回しながら、戸を閉めようと近付いたキュヒョンは外へと目を向けて。思わず声を上げてしまった。

「……ヒョン?」

大きく開いたガラス戸の外、そこにいた人物は突然掛られた声にピクリと体を揺らす。そのままユックリとコチラを向いた顔はキュヒョンの想像していた人物そのままで。自分を見つめ返してきた瞳が驚いたように見開かれた。

「キュヒョン…?」

寒い空の下、そう呟いたのは紛れもなく自分の兄であるイェソンその人で。真冬だというのにこの寒い中、薄手のシャツ一枚という姿にキュヒョンは呆れた目を向ける。それに気付いていない相手は何で此処に居るんだ等とキョトン顔で聞いてくるから余計に呆れてしまった。

「貴方こそ、そんな薄着で何してんですか…」

正直バカなんじゃないかと思う。こんな寒い中ベランダで何をしていたかは知らないが、自分の体をもっと労わるべきだろう。強いとは言えないイェソンの体は直ぐに風邪を引く。だから冬は厚着をしろとリョウク等は口を尖らせて言っていた。

「風邪引きたいんですか?」

ヤレヤレと寒い腕を擦りながらイェソンへと近付いて、それにキョトリと小首を傾げたイェソンは不意に空を指差した。そのままキュヒョンへと笑顔を向けて言うのだ。

「星が、流れてるんだ。」


その笑顔の柔らかさにキュヒョンはドキリとした。普段から笑顔をよく見せる人物だとは思っている。だが、今自分へと向けられている笑みは普段とは違うように見えた。本当に心から喜んでいる微笑み。
その笑みに見入っていたキュヒョンをイェソンは不思議そうに見返す。

「キュヒョン?」

声を掛られて正気に戻った。

「あ、ぁ……ふたご座流星群ですね……」

自分の陥っていた状況に動揺して、キュヒョンは慌てたようにイェソンの言う流れる星の正体を口にする。
イェソンが見ていたのはふたご座流星群。確か今日の夜から明け方まで観測されると言っていたソレ。テレビで聞いた事をイェソンへと告げれば、へぇなんて返事をして頭上の星へと視線を戻す。

イェソンは空が好きだ。色々な表情を見せる空は楽しいのだと前に言っていた。彼にとっては星もその表情の一つなのだろう。

「あっ!また流れた!」

弾む声は子供のようだ。その横顔を見れば普段とは違う子供の様な表情があって。

「…楽しいのは判りますけど、風邪引きますよ…」

いい加減寒さに身震いしたキュヒョンが触れたイェソンの腕。そこは服越しだというのに酷く冷たかった。

「ちょっ…何時から居るんです!?」

慌てたキュヒョンにそれでもイェソンはキョトン顔のまま。
どうやら自分がどれだけ冷えているのかが判っていないらしい。その事に若干目眩を覚えつつ、本気で風邪を引いてしまうと掴んだ腕に力を込めた時だった。

「願い込めたら…叶うかな…」

ポソリと呟かれた言葉にキュヒョンは動きを止める。その声が思った以上に弱々しくて、思わずイェソンの横顔を見つめる。その顔が切なさを含んでいるのは何故だろう?そして、その顔から目が離せなくなっている自分にも気付く。何時も何かとからかって遊んでいる兄。そのコロコロと変わる表情が面白くて毎回チョッカイを出してしまっていたが、彼のこんな表情は見た事が無い。

「……何を、込めたいんですか?」

普段だったら一笑に付していただろう言葉。でも今はその願いとやらが聞いてみたい、そう思ったから。イェソンの隣へと並んで同じように星空を眺めつつ、もう一度同じ事を口にする。

「何を、願いたいんですか?」

「…………今のまま、ずっとお前達と一緒に歌っていたい…」

流れた星と同時に囁かれた小さな声。それは下手をすれば聞き取れないんじゃ無いか。それ位に小さなもので、思わずイェソンの顔を見つめる。
それに気付いたイェソンが少し目元を染めてコチラを見たのに気付いて、その瞳が酷く綺麗だと思った。
こんな世界に生きている自分達だ。何時何があるか判らない。
人気が低迷して分裂させられるなんて事だってあるかもしれない。そんな不安と隣り合わせに自分達は生きているのだ。

「…僕達と、ずっと一緒にいたいって…?」

向けられた瞳を見つめて言えば、イェソンは真っ直ぐな目を向けてキュヒョンを見返した。

「どんな事があっても…一緒、だろ?」


嗚呼…この人はそうやって自分達を信じて突き進もうとしているのか。


その真摯な眼差しにキュヒョンはそっと微笑んだ。

「……僕達は、永遠に一緒ですよ…」

告げた言葉は本心。だけど、イェソンとは少し違うニュアンスも含まれている。彼の瞳を見て、彼の…イェソンの傍にいたいと思った。
それはきっと突然芽生えた感情ではなくて。普段から彼の一挙手一投足をいつの間にか目で追っていた自分に気付かないフリをしていたのだ。
だけど、こうやって今日。イェソンの綺麗な瞳を見てしまった。
そうしたら、自分の気持ちに気付かないフリなんてもう出来ないじゃないか。

「……キュヒョン…?」


不意に抱き締められたイェソンは驚いた様にキュヒョンの顔を見ようとする。だけどそれを拒むように抱き締めた腕に力を込めて。

「貴方の望みは…僕が叶えますから…」

随分と外にいたのだろう、冷えきった体へと体温を与えるようにキュヒョンはその体を強く抱き締める。
それにイェソンは少し黙った後、そっと冷たい腕をキュヒョンの背中へと回した。

「……お前が言うと、ホントに叶いそうだな…」

ポンポンとあやすように背中を叩かれる。
イェソンはキュヒョンの気持ちには気付いていない。だから自分の不安がキュヒョンへと伝わらない様にとこうやって優しく背中を撫でてくれるのだろうけど。キュヒョンはその優しさに胸が押しつぶされそうになった。

この人の願いは何があっても自分が叶える…

優しい腕を悲しませたりなんて、しない。



「僕が、必ず叶えますから……」



だから…



「……僕を、離さないで下さい…」



強い瞳に見つめられて。それでもイェソンはキュヒョンの想いに気付かないまま口を開くのだ。


「…離れないって……約束する…」


そんなイェソンの低く掠れた声と同時に、二人の頭上を一つの星が流れ落ちた。





※ギュの恋心に気付かない兄さん。離れないって言ったギュに嬉しくて甘やかしちゃう兄さんにもっと惹かれちゃうんですよねギュは!!

この後きっとガンガン押してくるギュにポヤヤン兄さんは根負けして落とされちゃうっていう落ちどーですか←

こんな短編も偶にはイイかと。



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