成功法則などを学んで苦しむ人がいます。


というより、苦しみ始める人の方が多いのです。


成功法則という有り難いノウハウを学んでいるのに、なぜ、苦しみ始めるのですか?


と、多くの人が疑問に思っています。


その答えは明確です。


自分が成りたいと思っていない“何か”になろうとしている、からです。


成功者の本とかを読むと、その人のようになることが成功だと思い込んでしまうのです。


たとえばこんなことがありました。


私が指導をさせていただいた青年・佐藤さん(仮名)の話です。


佐藤さんは、成功法則を学んで、自分の目標を持ったそうです。


その目標は、「フェラーリを買って乗り回す」でした。


でも、私に相談しに来たときには、「目標を明確にしたのに苦しくて苦しくて・・」と言っていたのです。


私はこう言いました。


「佐藤さん、その目標は佐藤さんが望んでいることではないですよね」


「いえ、僕の目標です」


佐藤さんは意地のように答えました。


「では、もうフェラーリに乗りましたか?」


「え?だから、フェラーリを買うことが目標だから、まだ乗ったことはないですよ」


「佐藤さん、だから、それが佐藤さんの目標じゃない、と僕は思いますよ」


「どうしてですか?」


「だって、本当にフェラーリに乗りたいなら、もう乗ってますよ。乗る方法はいくらでもあります。

 それが好きで好きで仕方がなかったら、どんな方法でも乗ろうと思います。

 レンタルで借りてみるとか、知人を伝ってフェラーリオーナーを捜してみたりとか、最低でも

 試乗することくらいはやりたいはずです」


「・・・・」


「私の知人でフェラーリが好きな人は、お金がないのに、何度もフェラーリに乗ってます。

いろんな方法を試して。

実際にフェラーリに乗って、やっぱりいいな欲しいな、と実感を増しているんです。

彼の目標は本物ですよ」


「・・・・」


「だから、佐藤さんは、本当に自分が望んでいることを目標にされたらどうですか?

 フェラーリに乗ることが成功の象徴、と考えているだけで、好きでもないフェラーリに乗ること

 を目標にしているから苦しいんですよ。

 しかも、自分はダメだ、と余計なことまで考えている」


「・・・たしかにそうですが・・・」


「本当にやりたいことは何ですか? 以前から興味があった仕事は」


「実は、教師になることが小さい頃からの夢でした。でもすごく地味で、成功者とは呼べません」


「どうしてですか?」


「だって、成功者っていうのはお金持ちでマスコミにも出るほどの有名になることです。

 教師なんて何万人もいますよ」


「それは違いますよ。

 成功者はそういう人だって決めたのは誰ですか?

 フェラーリに乗っていない成功者だっていますよ。お金持ちでなくても成功者はいますよ。

 成功って自分が感じることですよね。

 人が感じることではないですよね」


「それはそうですが・・・」


「あなたが苦しみながら目標を達成したとしても、人は羨ましいと思うかもしれませんが、

 あなたには苦しみしか残りません。

 人があなたを羨ましいと感じるのは一瞬です。あとはあなたのことも忘れますよ。

 人は自分のことだけで頭が一杯なんですから。

 あなただけ、ずっと苦しいって不幸じゃないですか? 

 成功は自分が決めることであって、自分がやりたいということをやれている状態が成功

 だと思いますよ」


この会話を交わして一年後、佐藤さんは家庭教師の仕事から始めて、学習塾の先生になりました。

車は中古車ですが、一年前とは比べようもないほど元気でした。


「鈴木さん、あの話は本当でした。

 今だったら、フェラーリと今の仕事とどっちを取ると聞かれたら、絶対にフェラーリを捨てます。

 だって、本当にフェラーリに興味ないんですもの」


お互い大笑いしたのを思い出します。


本などで成功法則を学んで苦しくなる人は、誰からが作った“成功者像”に自分を合わせようとするからです。


好きでもないことを目標にするから、苦しくなり、自分を見失うのです。


誰が何と言っても関係ないじゃないですか、あなたの人生。


あなたに何かをいう人も、自分を見失っているのです。


人生の価値を決めるのは、あなたの価値観です。


あなたが価値あると思ったことが、この世で一番価値があるんです。

(もちろん反社会行為は論外です)


私は、この世に不幸というものがあるとしたら、それは「幸福」という言葉があるからだと思ってます。


「幸福」という言葉があると、「幸福」という特別な状態がある、と思ってしまいます。


そんな特別な状態にない、今の自分は「幸福じゃない」、つまり不幸じゃないか、と人は勝手に解釈しています。


成功という言葉があるから、特別な状態だと勘違いしてしまうのだと思っています。


今、目の前にある幸せと成功に目を向けることが、目の前の壁を消していく、第一歩です。