僕の個人的なネットワーク「超ヒントメンバーズ」には、会員限定のメルマガで既にお話ししていることだが、僕は、25歳頃に、一度、死にかけている。


大学を中退し、24歳で東京に上京したものの、友人もいるわけでもなく、お金もあるわけでもなく、ただ夢だけを持ってやってきた。


なんだかんだとアルバイトで生活していたが、25歳直前になり某企業の販売特約店となり、無謀にも自営を始めた。


最初の3ヶ月まではなんとかうまくいったものの、すぐに行き詰まり、お金もなくなり、借金だけが増えていった。


やがてアパートの電気ガスが止まり、最後には水道まで止まる有様である。


しばらく何も食べていたい状況が続いたため、ついには自分のズボンの革ベルトが美味しそうに見えてきた。


タンパク質に限りなく近いモノが、僕のズボンに付いていたのだ。


あまりにも空腹過ぎて、もう一歩で食べてしまうところだった。


そんな狂気の中で、僕はとんでもなく不思議な現象を体験する。


昼間なのに、僕の目の前に、真っ暗なトンネルが見えてきたのだ。


何度目を閉じても、そのトンネルは僕の目の前にあった。


そのトンネルは、次第に大きくなり、僕を包み込むような感じになった。


僕は正気を失っていた。


何の恐怖も感じないのだ。


その暗闇の先には、間違いなく死が待っている。


今振り返っても、その時の恐怖が蘇ってくる。


自ら自分の命を絶つ人は、最後の最後には、死さえ恐怖しなくなる精神状態になるのだろう。


真っ暗なトンネルを見ていた時の、あの時の僕のように。


恐怖を感じないだけではない、なぜか心が静かに落ち着いているのだ。


僕はまさに死の淵に立っていたと思う。


もう一押しがあれば、僕は、静かな気持ちのまま、自ら命を絶っていただろう。


でも、、わずが数ミリのところで、僕は正気になろうと踏ん張った。


そして、なぜか目の前にあったメモ帳とペンを手に取っていた。


何かを書こうと、衝動的に、本能的に思ったのだろう。


その刹那、僕の頭に一つの言葉が、記憶の奥底から現れた。


その言葉に従い、僕は必死にメモ帳に、あることを書き始めた。


それは、


  「僕は生きている」


という、当たり前のことだった。


しかし、それこそ僕を正気に目覚めさせ、僕の命の炎をかろうじて消さずに済んだ魔法だった。


あの時、僕の頭の中に現れた言葉。それは、かつて読んだ本の中に書かれていた一節だった。


 「逆境では、なくしたものではなく、得ているものを数えよ」


僕はこの言葉に従い、必死で得ているものを探した。


そして、見つかったのだ。


僕が生きている、ということを。


メモに書いたあの瞬間こそ、僕に起こった奇跡の時だった。


さらに僕はメモに書いていった。


 「僕には手と足がある」

 「僕は息をしている」

 「僕はまだ20代だ」

  ・・・・・


馬鹿馬鹿しいほど当たり前のことを書き殴った。


そして、次にもっと驚くべき奇跡が起こった。


何もかも失い、何も可能性のない、落ちこぼれた男が、くたびれたメモ帳に、この先5年後に達成する夢、を書き始めたのだ。


5年のうちに、本を書き、テレビに出て、オリジナルの能力開発プログラムを作る。


バカな話である。


さっきまで死にそうにしていた空腹の男が。

ズボンのベルトを食べる寸前にいた男が。



しかしである、その夢は5年も経たないうちに実現していまう。



その過程に起こった奇跡は、またあらためて書こう。


でも、僕に起こった最大の奇跡は、最悪の状況の中で、


 「逆境では、なくしたものではなく、得ているものを数えよ」


という言葉が、僕の頭の中に現れた、あの瞬間なのだ。