「私は常に正直である。だから告白しよう、

       実は、私は常に嘘ばかりついているんだ」



さてクイズだ。ここでの「私」は正直者なのか、嘘つきなのか。


正直者であるなら、「嘘ばかりついている」ということが真実となる。


すると、「私は常に正直である」ことも嘘になり、「嘘ばかりついている」ことも嘘になる。


ということは、正直のはずだが・・・・



これは「自己言及のパラドクス」といわれるものの応用事例である。


このパラドクスは、様々なことを教えてくれる。


人間は完全ではない、ということと、人は常に間違う、ということを教えてくれるばかりではなく、この世には完全なものはない、ということまで教えてくれるのだ。


これは数学の世界では不完全性定理と言われ、不完全性定理を発見した数学者ゲーテルは、その発見に自ら驚き、「神の存在証明」にまで言及することになる。


つまり、この世には「完全な神はいない」ということを証明したということだ。


その後、多くの天才数学者が不完全性定理を証明し、「完全な世界は存在せず、完全な世界を作る存在もいない」という結論に至る。


完全な神もいないのなら、完全な人間もいないのも当たり前である。


完全でないことに対して、恐れることはない。


完全である、と思った途端、自己言及のパラドクスに陥り、不完全である自分を悟ることになる。


故に、常に自分は不完全である、のだ。