2008年12月11日放送 NHKクローズアップ現代 「揺れる24時間コンビニライフ」
※以下、番組要約
一日に利用する人は3500万人というコンビニ。
全国に43228店舗あるコンビニは、そのほとんどが24時間営業である。
京都市の門川大作長が市民会議の席で「コンビニの夜間営業をやめた方がいいのではないか」、との提言を行ったことを発端に、全国的にコンビニ24時間営業の是非を巡る議論が起こった。
そもそも京都でこの議論が起こった背景には、今後20年間で二酸化炭素を半減させるという目標を掲げたことにある。
今や世界中で環境問題解決の代名詞となった「KYOTO」。「DO YOU KYOTO?」(環境にいいことしてる?)という言葉も出てきたほど、京都議定書から世界中から注目される都市となった京都が、環境問題解決のモデルとなるべく二酸化炭素削減の矛先を「コンビニの24時間」に向けたわけだ。
一方コンビニ業界側は、経営努力によってこの20年間で二酸化炭素排出量を20%削減したとし、環境問題に取り組んでいると反論。さらに照明を消費電力の少ない発光ダイオードに変えてきていることなどから、24時間営業に対する議論に真っ向から反発している。
コンビニ業界側は、24時間営業をやめたとしても二酸化炭素の削減効果は4%程度しかないと発表。その根拠は、24時間冷やし続けなくてはならない冷蔵庫の存在である。
市民の意見は真っ二つに割れた。
「不便になる」「深夜の防犯の意味でも必要だ」という反対派。
「青少年の非行の温床になる」「環境問題である」という賛成派。
1975年から24時間営業となっていったコンビニ。
今では深夜帯(1時~5時)に500万人が利用するようになった。
コンビニライフは我々の生活スタイルを変えてきた。
午後11時に起きている人の割合は、1970年当時は24%だったのが、2005年には48%になった。
また、警察はコンビニの防犯効果に期待をしており、犯罪防止の協力を求めている。
現在、全国の交番・駐在所は13308件。
警察がカバーできないところをコンビニに補ってもらおうとの考えだ。
昨年、コンビニに逃げ込んだ女性は1万3000人。
一方、深夜に補導される青少年は80万件を超え、10年で3倍の数になった。
市民からはコンビニが犯罪の温床になっているとの指摘も出てきている。
平成19年度の警察庁統計によると、小売店を狙った強盗の件数は1164件。うちコンビニを狙った強盗は51.1%であった。
コンビニオーナーからは、現場の切実な状況を語る。
ある都内のコンビニオーナーは、「24時間営業を今すぐにでもやめたい」と言う。
深夜帯の平均売上げは、一時間あたり6000円で、やればやるほど赤字となる。
バイトを雇うわけにいかず、深夜は妻がレジに立つ。
夫婦はすれ違いの生活が何年も続き、家庭崩壊となったという。
「防犯を求められても、深夜に私一人で対応するのは正直怖い」
とはいえ、深夜営業を自主的にやめようとすると契約違反になり、違約金数百万円を払わなくてはならなくなる。
契約上15年間24時間営業をしなくてはならないことになっているのだ。
警察や市民が期待する防犯の役割も、コンビニのオーナーにしてみれば「自分の生活」の犠牲で維持しているのだ。
自分の生活を犠牲にしながらコンビニの24時間営業を維持しているコンビニオーナーは多い。
オーナーからの深夜営業中止の願いに対して、日本フランチャイズチェーン協会の土方清会長は、
「コンビニが深夜営業をやめると客離れが起き、20%売上げが落ちます。約8割の店舗が赤字になるでしょう。オーナーさんの収入にも響くのです」
と説明し、深夜営業中止はコンビニ経営を悪化させるとの意見を述べた。
しかし、長野県軽井沢町では、午後11時以降のコンビニ営業をやめるよう働きかけ、すべてのコンビニは午後11時以降の営業をストップした。
結果、コンビニの経営にほとんど影響が出ていないという。
しかも、コンビニ午後11時閉店が住民にも浸透し、午後11時までに買い物を済ませる人が増えてきて、住民からも不満が出ていないという。
さらに広島県呉市もコンビニの深夜営業中止の申し入れを行い、ローソンがいち早く深夜営業を中止することを決めた。
ローソンの新浪剛史社長は、「行政による規制には断固反対」としながらも、「地域住民の皆様の要望には柔軟に対応したい。新たなビジネスモデルを考える時期」と語った。
利便性と収益性のみを追求してきた日本のコンビニライフも、今、見直しの時が来ている。
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【すずりょうの意見】
そもそも僕は地球温暖化「CO2犯人説」に対する懐疑論者なので、CO2削減の為のコンビニ深夜営業中止には納得できない。(CO2犯人説への反論は過去の日記を参照ください)
CO2削減という観点では、極めて微々たる影響しか無く、CO2削減に貢献していないという新たな議論が出てくるだろう。
今回の問題が提起したのは「コンビニビジネス」の新たな転換点ではないだろうか。
コンビニ本社としては売上げを下げる深夜営業中止論には徹底的に対抗しようと考えるのは当然だが、現実問題としてオーナーの生活の犠牲の上に成り立つビジネスモデルは、早晩破綻を来すのも必定である。
しかも、行政側もコンビニの防犯機能に期待し、本来行政が取り組まなくてはならない役割をコンビニオーナーへの役割に転嫁しているのがオカシイのではないか。
コンビニオーナーは契約で15年間1秒たりとも店を閉められず、赤字が続こうが違約金が怖くて続けざるを得ない状況にある。
店舗経営者とは名ばかりの、自ら経営方針も作ることができない「名ばかり経営者」なのである。
本社に逆らえない立場の人に、生活を犠牲にさせながら、命の危険も伴う防犯の役割までも負わせようとする現代社会。
一部の人の人生の犠牲の上に成り立つ「便利社会」は、もうそろそろ終わりにしたらどうか。