今年のアカデミー賞4部門を獲得した注目作品。
ハビエル・バルデムの名演技が光る。
久しぶりに悪役らしい悪役を観た。ハビエル・バルデムは間違いなく名優である。
1980年代のテキサスからストーリーは始まる。
ベトナム帰還兵モスが、砂漠で死体の山と大金を見つける。
大金を持ち帰ったモスの背後に忍び寄る、冷徹な殺し屋シガー。
片手に持った圧縮空気ボンベの栓をひねり、エアガンを改造したような不気味な銃で高圧空気を発射させ、無感情で次々に殺戮を繰り返すシガー。
モスとシガーの距離が接近するとき、予想もしない結末へと向かっていく・・・・
ラストはどうも納得しがたい感じだった。おそらくアメリカ人にしか分からない世界があるのだろう。
1980年代から理解しがたい殺人事件が増えていくアメリカの、最初の病を描いたのがこの作品だと思う。
これまでアカデミー賞作品は必ずチェックしてきたが、ここ数年は社会問題を扱った作品がノミネートされる傾向にある。
2004年作品の「クラッシュ」(ポール・ハギス監督)もその一つ。
「クラッシュ」は映像と音楽、そして抜群の脚本で、映画に引き込みながら人種問題を考えさせる秀逸の作品で、ここ数年では僕的にベスト作品の一つだ。
「クラッシュ」と「ノーカントリー」を比較すると、「クラッシュ」の方がメッセージが素直に伝わる作品であり、アカデミー作品賞をとったこともうなづける。
しかし、「ノーカントリー」は傑作ではあるけれども、後味がよろしくなく、少なくとも僕的には理解できないまま終わった。
そういう意味では、昨年の作品賞「ディパーテッド」もそんな作品だったが・・・
ラストもすきっと終わって欲しいと思うのは僕だけか?
しかし、ラストの問題はあるにせよ、傑作であることに間違いはない。
音楽を使用せず、映像のみでみせてくれる作品であり、それだけ映像に力のある作品である。