METライブビューイング2023-24 第8作「つばめ」を観てきました音譜

 

この作品は、「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」をはじめとした数々の人気作を世に送り出したイタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニの隠れた名作とも呼ぶべき作品です。

 

最初にウイーンの劇場からオペレッタを依頼されたものを、最終的に抒情喜劇として完成させたという3幕のオペラで、他の代表作のようなドラマチックな展開はありませんが、切ない結末に心を打たれて、鑑賞後に何とも言えない余韻が残る作品だと思いますキラキラ

 

 

主人公マグダは、資産家の愛人として優雅な日々を送る高級娼婦で、サロンでの友人たちとの語らいで、情熱的な恋愛への憧れを詩人プルニエに乗せられて歌います。

 

ここで歌われる「ドレッタの夢」は、このオペラで最も有名な曲と言われ、美しい旋律を聴いて、どこかで聴いたことがあると思ったら、昔観たイギリス映画「眺めのいい部屋」でも使われていたそうで、なるほどと思いました。

 

主人公の境遇など、ヴェルディの椿姫との共通点が挙げられますが、救いようのない悲劇的な結末に向かっていく椿姫とは違い、この作品は悲恋ではあるものの、ほろ苦さと共に希望を示した終わり方である点、登場人物たちが皆優しくて、決して人を責めたりしない点などが、このオペラ独自の魅力でもあると感じました。

 

 

主人公マグダを演じたエンジェル・ブルーは、今やMETを代表するスター・ソプラノの一人ですが、強さと軽やかさを併せ持った巧みな歌唱でヒロインの揺れ動く心を表現していました。表情豊かな演技も素晴らしかったです。

 

ルッジェーロを演じたジョナサン・テテルマンは、今作がMETデビューということですが、開演前にMET総裁ゲルプから、当日酷い花粉症で苦しめられている中での出演だとのアナウンスがありましたが、そんな心配は全く感じさせないような素晴らしいパフォーマンスでした。

 

バリトンからテノールに転向したという経歴の持ち主で、力強い芯のある輝かしい響きの声で、恋する若者の一途な思いと苦しみを生き生きと表現していて素晴らしかったです。

 

 

 

主な舞台は、パリのマグダの優雅なサロンと、人で賑わうブリエの酒場、地中海に臨むマグダとルッジェーロの愛の巣ですが、アールデコ調の装飾が施された舞台セットと衣装はどれも美しくモダンな雰囲気で、二人の出会いから別れまでをロマンチックに彩っていました。

 

 

このオペラを観て最も印象に残ったのは、2幕のブリエの店でルッジェーロがマグダへの愛を込めて歌う「あなたのさわやかな微笑みに乾杯」がマグダとの二重唱になり、その後友人たちや店の客たちを巻き込んでの合唱になる場面です。この曲の旋律が美しいのはもちろんですが、ソロから重唱、合唱へと厚みを増していく様が素晴らしく感動しました。

 

 

プッチーニの作品の中では上演される機会も少なく、あまり知られていない作品ですが、美しい音楽に彩られた情感たっぷりの素晴らしい作品なので、ぜひこの機会に映画館で鑑賞されてはいかがでしょうかニコ

 

 

(写真は全てMETライブビューイングのHPより拝借いたしました)