METライブビューイング2023-24 第4作「ナブッコ」を観てきました
この作品はジョゼッペ・ヴェルディの3作目のオペラで、この偉大な作曲家が初めて大成功をおさめた出世作として知られています。
美しい音楽と力強いアリア、ダイナミックなストーリー展開といったヴェルディ作品の魅力が詰まったオペラで、私にとっても好きな作品の一つです。
題材は旧約聖書から取られていますが、民族間の戦争がいまだに続いている現代においても、観客の心に強く響く作品だと言えると思います。
物語の舞台は、紀元前587年のユダヤ教聖地・エルサレムの神殿と、バビロン(バビロニア国)の王宮で、宗教的な戦争がモチーフとなっています。
今回の演出では、この2つの舞台が表裏一体として回転し、舞台転換を瞬時に行うという仕掛けが施されていました。
大きな階段を使ったバビロニア王宮のセットや、大人数の民衆がたたずむ、岩が積み上げられたような湖畔のセットは見ごたえがあり、それらを映し出す青、赤、金色などの照明も美しかったです。
物語の冒頭、バビロニア王ナブッコとその長女アビガイッレの軍勢がエルサレムに攻め入り、ナブッコの次女フェネーナが人質となっている神殿を占拠します。
フェネーナと恋仲のエルサレム王の甥イズマエーレの裏切りによって、神殿は破壊され、エルサレムの民ヘブライ人(ユダヤ人)たちは捕らえられます。
自らが奴隷の娘で、ナブッコが妹のフェネーナに王座を譲ろうとしていることを知ったアビガイッレは、嫉妬と悲しみから王座を父から奪う決意をし、バビロニアの神官たちの後押しもあって、王座に就くことに成功します。
怒りと悲しみ、王座への執念に燃えるアビガイッレを演じたのは、ウクライナ出身のドラマティックソプラノ、モナスティルスカです。
力強く美しく響く声を自在に操り、ソプラノとしては特に難役といわれるこの役を見事に演じきっていました👏
ナブッコは神を冒涜したことで雷に打たれ、錯乱状態となり、アビガイッレによって幽閉されてしまいます。
しかし、フェネーナがヘブライ人の囚人と共に処刑されそうになっていることを知ると、改心して神に祈り、王位を奪還することを誓います。
ナブッコを演じたのは、豊かな声と強い存在感でまさにこの役がはまり役といってもいい、ジョージア出身のバリトン、ギャグニッザです。
最初は独裁者然とした態度だったのが、改心してからは娘フェネーナを思う優しい父親の表情になり、特に情感あふれる最後のアリアには感動しました
ナブッコの次女フェネーナを演じたバラコーワは、ロシア出身の期待のメゾでまだ20代ときいてビックリ!
声も容姿も美しくて、これからの活躍が本当に楽しみです✨
そしてこのオペラで重要な役割を果たしているのが合唱ですが、今作においても合唱の素晴らしさが際立っていました。
第3幕の合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」は、イタリアの第2の国歌と呼ばれ、広く愛されている曲ですが、メロディの美しさ、捕らわれた民衆の故郷への想いがあふれていて心を打たれます。
様々な魅力の詰まったこのヴェルディの大作を、映画館の大画面で味わってみてはいかがでしょうか?
きっと贅沢なひとときを体験できること間違いなしです
(写真は全てMETライブビューイングのHPより拝借いたしました)