こんにちは、絵描きの円です
不思議な本を読みました。
「無限との衝突」 スザンヌ・シガール
アメリカ生まれのユダヤ人女性、スザンヌ・シガールの自伝エッセイ本です。
スザンヌは20代のある日、パリのバス停に立っていた時に突然「自分」という感覚を失いました。「エゴ」とか「自我」とか「自意識」って呼ばれる感覚をすっぽり無くしてしまったんです。
心理学では自意識の過剰さは問題視されるし、スピリチュアルではエゴを無くすのが究極の憧れになっています。ワンネスの感覚ってやつ。
どうしたらエゴを無くしていけるのか、無くなればどれほど良い人生になるのか。そういうことを語る人はたくさんいます。
でも、わたしの身近には、実際にまるまる無くした人がいません
エゴを無くすって具体的にどういう感じ?
なぜ、人間はそうなりたがるの?
それは本当に幸せなの?
この本を読むと、想像するしかなかった「上の方」の不思議な世界を、ほんの少し垣間見ることができます。
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スザンヌが見たエゴの無い視点には、愛も憎も正も悪もありませんでした。すべての物事は、ただ起きているだけでした。
喜びは祝福ではなく、怒りや不安は間違いのサインではなく、ただ湧き上がっては消える現象に過ぎませんでした。天気と同じなんです。
「わたし」と「あなた」の境目もありません。この世の全ては、ひとかたまりの繋がったものとして見えるからです。
そこには大いなるひとつの意志だけがあり、わたしたち全体(人も草木も天体も)を動かしていました。
スザンヌはある日突然、その「大いなる意志」の感覚にポーンととんでしまって、それまで「自分」だと思っていた視点に戻れなくなります。
でも、何の心の準備もしていなかったから、おそれおののくわけです。
「自分」の感覚が消えても、スザンヌの思考や感情は機能していました。どうやら、思考や感情、そして肉体は、人間に備えられたシステムであって「自分」ではないようです。「自分」という感覚が消えても、それとは無関係に思考し、感情は湧き上がり、肉体は生活を続けていた様子が、本には描かれています。
不気味というか、神秘というか。
人間ておもしろいな。
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スザンヌが、脳や精神の病気ではなくて「まとも」だったのかは、わたしには分かりません。
正直いって、頭では理解できない話ばかりです。
言葉では表せない内容なので、輪郭をなぞるだけの抽象的な表現が多かったです。
でも、なぜだか、分かる気がしちゃうんだ
頭では分からんのに、よく知っている当たり前の話を聞いているような感覚になるんです。
「(あなたの脳に直接語りかけています…)」みたいな感覚というか。
不思議です。
スザンヌの体験はいわゆる「悟り」の状態らしいんだけど、それを高貴だとか至福だとか感じていないぶん、逆に自然でリアルなありえる出来事のように見えます。
Kindle Unlimitedで無料で読める本なので、興味があったらぜひ読んでみてね。
わたしは、とりあえず自分はそのままで大丈夫なんだって安心できました。少なくとも、エゴを消して悟りを開いたり、いと高き存在を仰いだり、もっと「良い」行動をしようとする必要は無いんだって思えたよ。
ではでは、読んでくれてありがとう。
またね