ローズウッドです
新聞に掲載されていたこの市民公開講座。
その記事で初めて知った「ワールドキャンサーデー」
ワールドキャンサーデーとは…
毎年2月4日に世界が一体となってがんに関する意識と教育を高め、社会やひとりひとりにこの病気に対して行動を起こさせることを目的として世界各地で様々な取り組みが行われる日だそうです。
今年のテーマは
「WE CAN、I CAN(みんなでできる、ひとりでもできる)」。
参加無料だったので申し込んでおきました。
同じ主催のセミナー参加が多い為、目新しくちょっと気になって
体調次第だったんだけど、よーやく回復してきたので行ってきましたよ。
プログラムがギュウギュウに詰め込まれていたのでごく簡単なまとめです。
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第1部(13時30分~14時30分) We can prevent cancer.
がんは予防できる
①We can prevent cancer. がんは予防できる 中釜斉(国立がん研究センター理事長)座長
がんになるのには様々な要因が考えられる。
・一次予防<原因が判っている物を避ける>
例)喫煙や生活習慣。
・二次予防<できるだけ早い段階で調べる>
例)定期検査等。
「まさか自分が?!」
「なかなか病院に行きづらい」
しかし早く見つけてれば早く治せる。
病気は予防できる視点で前向きに考える。
いかに検診を受ける行動に移せるか?が大切になる。
②We can build a quality cancer workforce. 優れたがん医療人材を育てよう
今村定臣(日本医師会 常任理事)
<先ず産婦人科医の立場から>
子宮頸がんは検診とワクチンで100%予防できる。
ワクチン副作用のメディア報道で強い衝撃を与えてしまった。⇒厚労省がワクチンの積極的推奨を中止。<今もそのまま>
ワクチンを推奨していないのは日本だけ。
副作用は多くの研究機関で安全性が報告されている。
年間3千数百人が亡くなっている現実⇒救えるはずの患者を救えていない。
「かかりつけ医機能研修制度」
地域住民から信頼され何でも相談でき、最新医療情報を熟知していざとなれば専門医療機関に連携できるかかりつけ医を育てる。
③We can create healthy schools. 健康的な学びの場をつくろう
林和彦(東京女子医科大学がんセンター長)
子供達にがんの正しい知識を教える運動をしている⇒「知る」ことは重要。
※「小学生からのがん教育」
「知る」ということは「権利」でもある。
命や心のことを考えてみるのも大事。
がん教育を通じて子供達には誰にでも起こり得るのだ、ということを知って貰う。
<がんて特別じゃないんだよ。>
④I can understand that early detection saves lives. わたしは早期発見の大切さを知っている 海老名香葉子(エッセイスト)
人間ドックで胸のしこりを見つけ、手術を受ける。
乳がんは早期発見が大事。
医学は進歩&新薬も出ているのでがんは怖くて悔しいけど、闘って欲しい。
自分の健康を保つ事を心掛け、自分の身体に責任を持つ。
「笑う」ことが大切。
何もかも忘れてお腹の底から笑おう!
⑤I can make my voice heard. わたしは声を社会に届けることができる
大野真司(がん研有明病院院長補佐/乳腺センター長)
ピンクリボン運動は40年前、みんな知らなかった。
がんになったことを抱え生きて行く。
再発の不安も抱えて…。
社会はどうサポートしていくのか?声をあげていくことが大事。
⑥I can make healthy lifestyle choices. わたしは健やかなくらしを選び取ることができる
中村丁次(神奈川県立保健福祉大学学長)
がん患者を対象にしたサプリメント&健康食品があるが、この食べ物だけを食べていれば良いという物はない⇒完全な健康食品は存在しない。
大切なのは…
・塩、油を控える。
・太り過ぎない⇔体重を落とし過ぎない。
・糖分を控える。
健康商品と特定食品だけ摂っていると栄養のバランス(40の要素)が欠ける⇒免疫力を下げてしまう。
色々食べることが大切。
人類は「雑食」という特性を手に入れたから生き延びれているのだ。
第2部(14時45分~15時45分) We can improve access to cancer care.
全てのがん患者に優れた医療を!
⑦We can improve access to cancer care. 全てのがん患者に優れた医療を!
門田守人(日本医学会会長/堺市立病院機構理事長) 座長
がんと就労の問題。
<第2期がん対策基本法・就労支援>
治療費の捻出⇒優れた医療を必ずしも誰もが受けれるとは言えない。
⑧We can create healthy workplaces. 健康的な職場をつくろう
佐々木昌弘(厚生労働省 がん・疾病対策課長)
「6割」というキーワード。
①外来で治療を受けているがん患者の割合。
②5年生存率。
③男性の6割ががんと診断。
「1/3」というキーワード
①亡くなる人の1/3はがん。
②がんと診断された1/3は働く世代。
故に医療の現場&職場の総力戦である。
「働き方改革」働き易い職場とは?
この職員の強味は何か?
誰がカバーできるか?
職場の強味と個人の強味。これをどう後押ししていけるか?が問題。
①がんの予防
②がん医療の充実
③がんと共生(がん患者が安心して暮らせる社会)
<第3期がん対策基本法>
となっている。出来る事をひとつずつ実現していく。
⑨I can love, and be loved. わたしは、人を愛し、人から愛される
河村裕美(認定NPO法人オレンジティ理事長)
結婚直後に子宮頸がんが判明して子宮と卵巣を摘出。
その後、リンパ浮腫・更年期・性交渉(膣が短くなったことによる)等、様々な問題に直面する。
出産はできないので里親になり、特別養子縁組をした。
未来に命を繋げる。
社会的な母親になりたい。
色んな人と話をして、自分の気持ちに折り合いをつける。
できなくてもしょうがない。
他にできることはないか?
と考える様になった。
⑩I can return to work. わたしはがんになっても働くことをやめない
松本陽子(全国がん患者団体連合会副理事長/愛媛がんサポートおれんじの会理事長)
子宮頸がんになり一度職場を去った。
上司から「もういいよ」と言われた言葉に、「自分はもう不要という意味なのか?」「そんなに頑張らなくていいよ、という労りの意味なのか?」確認する勇気がなかった。
職場で一番大事なのは人と人とのコミュニケーション。
・何ができて何ができないのか?
・職場はどんな不安を抱いているのか?
・何を期待しているのか?
伝えてよく話し合うべきである。
ただがんになっても働く事が正しい姿だと追い込まれる人もいるのでは?と懸念される。
ちょっと立ち止まってみるのも良いのでは?と思う。
自分が自分らしく生きて行く、真の恩恵を受けられる居場所が大事なのではないか?
⑪We can support others to return to work. 同僚ががんになってもまた働けるよう支えることができる。
望月篤 (株式会社大和証券グループ本社 常務執行役 CHO(最高健康責任者) 人事担当)
1人1人の社員が生き生きと働ける健康環境に10年取り組んできた。
・がん検診未受診者への啓発
・健康推進体制
・病気になった場合50日の有給休暇 等。
「頑張るサポート」の設立。
・就労支援プラン
・副作用が出た時の診療サポート制度
・アピアランスサポート<ウィッグや人工乳房等の金銭補助>
今やがんは長く付き合う病気。
全ての社員ががんへ理解を深める組織作り。
会社と共に乗り越えて行こう!
⑫I can ask for support. わたしは助けを求めることをためらわない
宇津木久仁子(がん研有明病院婦人科副部長)
アピアランスサポートに力を入れている。
<職場復帰時にも大切な事>
脱毛等で人と会いたくなくなる。
・手軽に作れる帽子の紹介
・ウィッグの求め方の助言
・化粧のケア<脱毛した眉毛・まつ毛をカバーする>
色々と相談に乗れる場があるので積極的に利用して欲しい。
がん罹患者はがんではない人との垣根を感じる人が多い。
でもがんではない人はまだがんになっていないだけに過ぎない。
<2人に1人ががんになる時代>
だからこそお互い助け合う・みんなが助け合う姿勢が大事である。
第3部(16時00分~17時05分) We can inspire action, take action.
一緒に行動しよう
⑬We can inspire action, take action. 一緒に行動しよう
野田哲生(UICC日本委員会委員長/がん研究会がん研究所所長) 座長
ゲノム⇒個別化医療。
しかし自分と同じ人がいるのか?いないのか判らないから、個別化医療の入り口に入って行くのは結構怖い。
薬の開発は日本だけとは限らない。
それぞれが強い気持ちを持って、ちょっとだけ世界目線で考えてみよう。
⑭We can create healthy cities. 健康的な街を作ろう
服部幸應(服部学園理事長)
食育推進計画をしている。
1965~1985年が日本人にとって一番理想的な食事をしている。
※それ以前は炭水化物が主流。
それ以後は高たんぱく・高脂肪食。
(バター・牛乳・お肉等)
「健康学」はヨーロッパのエビデンスに基づいたものが多いが、果たして日本人にも適するかは疑問である⇒日本人の生活のベースとなっている食生活を見直す必要がある。
⑮I can take control of my cancer journey わたしはがんと生きていくことができる
生稲晃子(女優)
二度の再発、5回の手術。
がんになった当初は何も考える余裕が無く、二度目の再発後は最悪の事も考えた。
辛い時期、必要としてくれている自分の居場所があった事が救い。
がんに立ち向かう強い気持ちを家族&取り巻く人々から貰った。
主治医、会社、産業医・カウンセラーのトライアングル型支援を推進。
これからは支える側として患者の支援をしたい⇒支え合う事が更に世界と繋がれば良いなと思う。
⑯We can join forces to make a difference. 力を合わせれば変えられる
野崎慎仁郎(WHO神戸 上級顧問官)
UHCの実現は人間の権利である。
UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)は誰もが経済的な困難を伴うことなく、保健医療サービスを享受することを目指すもの。
日本の優れた保険医療制度を踏まえ、国際社会とともにUHCの推進に取り組んでいる。
⑰We can make the case for investing in cancer control. がん対策に投資を行おう
赤座英之(東京大学大学院情報学環・学際情報学府特任教授)
がんは投資の対象となる⇒見返りはお金ではなく人。
全ての人達が破たんをきたさない様に均等な治療を受けられる為に投資する。
オプジーボが保険適用で医療財政が破たんするのでは?と懸念され、年齢制限しようか?効果が見込まれない人は対象外にしようか?という意見が出て失望した。
企業が投資してがん治療に役立てる。
⑱We can shape policy change. 医療政策に声をあげよう
武見敬三(参議院議員)
①アジア健康構想
新しい産業基盤を作る事になる。
日本とアジア全体で考えて行こう。
②ゲノム医療
がん情報の集積。
問題意識が広がらないと政策に繋がらない。
日本のみならずアジアの人の健康も考える。
高齢化は日本だけではなく国際的な問題。
日本の保険医療制度は優秀で世界のモデルになっている。
⑲We can challenge perceptions. 意識を変えよう!~まとめ~
・世界共通でものを考える。
・次のジェネーションへの連携を考える。
より健康的に!
がんになってもより効果的な治療を!
・日本はアジアに貢献できる。
・ゲノム医療の研究はアメリカが圧倒的。
ゲノム医療を主体的に「日本発」を目指して欲しい。
しかし…
◎受動喫煙対策の大幅な後退。
◎子宮頸がんワクチンの問題。
こういう目前の足元の問題も大切である事をないがしろにしてはならない。
・年一度、一緒にがんを考える時を持とう!
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この市民公開講座。
3部構成で各部1時間。
1人5分×6人で30分。残りの30分でディスカッション。
時間がキッチリ守られてました。
演題は事前に主催側から指定されたもの。
実際の講演内容と若干ズレがあったけど、医療者・罹患者・患者会代表・会社人事担当者・厚労省の役人・政治家と幅広く、私的に登壇者は全てお初の人ばかり。
様々な分野からの提案や現状の報告を色々と聞けて、なかなか面白かったですよ
がんと就労は実際のところ、企業の受け入れ態勢はまだまだじゃないのかな。
会社や同僚に話していない、というか話せない人も多いし、どこまで話すのか?また話さないという選択肢もあると思います。
それとアジアにおける日本の立ち位置。
医療が遅れている国に対しての支援・貢献。
日本だけでなくアジア全体でデータ集積をしていく。
アジアの国々と協力してケースモデルを積み重ね、エビデンスを作っていく。
普段は世界に向けて…なんて考える事がないだけに、こういう機会に参加できて有意義でした
でも何より難しい事は抜きに、前向きな温かい気持ちになれる場だった気がします。
「高揚感」があったというかね。
ちょっと新鮮な体験でした