こんばんは
ローズウッドです。
10月19日(水)マンマチアーのセミナーに行ってきました。
講師はがん研有明病院形成外科医で乳腺外科医でもある松本綾希子先生。
乳腺外科と形成外科の違い
【乳腺外科】
・がんを治す治療。
(しっかりがんを取り切る)
・症状を緩和させる治療。
【形成外科】
・患者が満足する治療。
・生活の不便を減らす治療。
乳房再建の基礎
<がん研有明病院データより>
・乳房再建数⇒年間850件。
・インプラント保険適用以降、全摘のうち6割が再建している。
自家組織での再建
お腹・背中、最近では腰やおしり(臀部)の皮膚・脂肪組織を移植して再建する事。
【長所】
・柔らかい。
・温かい。
・揺れて動きがある。
・体重の増減と形が連動する。
・一生もの。
【短所】
・形成医の技術が重要。
(手術の難易度が高い)
・長時間手術の身体への負担。
・術後の安静期間が長い。(2~3日)
・稀に「皮弁壊死」が起こる。
・質感が違う皮膚同士の為、ケロイドを発症する場合がある。
・お腹から取った場合、長い傷跡が残る。
【自家組織に向いている人】
・自分の為に時間が取れる。
・ある程度、皮下脂肪がある。
・再建にとことんこだわりたい。
人工物での再建
(一般的に)エキスパンダーを入れ、その後インプラントに入れ替えして再建する事。
【長所】
・短時間手術、短期間入院。
・身体の負担が少ない。
・約1週間で日常生活可能。
・皮膚感覚は徐々に戻る。
【短所】
・やや硬く、動きが悪い。
・被膜拘縮が起こる場合がある。
・人工物特有の合併症(感染、稀に露出)
・一生ものではない。
<がん研有明病院での10年経過破損率は5%>
・体重変化に連動しない。
・デコルテの凹みは埋まらない。
・腕の運動をするとつられて動く。
【インプラントに向いている人】
・長時間の手術&入院がイヤである。
・人工物が許容できる。
(=異物が入っていると思うだけでイヤな人には向いていない)
脂肪注入<保険適用外>
【長所】
・インプラントの不足部分が補える。
・局所麻酔でも可能である。
【短所】
・保険適用外の為、高額である。(自費)
・生着しない場合もある。
⇒複数回行う場合もある。
乳房再建の時期
①乳房再建と同時かどうか?(1次、2次)
【1次】
・乳房の喪失感ない。
・合併症がやや多い。
・取り残しがあった場合はどうするか?
(主治医とよく相談する事)
【2次】
・乳房がない時期がある。
・合併症は少ない。
②エキスパンダーを使うかどうか?(使わない:1期、使う:2期)
【使わない】
・自家組織は必須ではない。
・手術が1回で済む。
・サイズが小さくインプラント希望。
【使う】
・仕上がりが綺麗になり易い。
・手術が2回になる。
例)
*乳房切除と同時にエキスパンダー。
⇒後日インプラント:1次2期。
*乳房切除から時間をおく。
⇒後日自家組織で再建またはエキスパンダーを用いず直接、インプラント:2次1期。
自分に合った再建法とは?
・自分の体型、乳房の形。
・がんのできた位置と切除範囲。
・生活スタイル。
・担当医の得意な方法。
*できあがりに満足するかどうかはそれぞれの価値観によって違う。
・服を脱いでも気づかれない感じにしたい。
・タンクトップ、深いVネックが着れる。
・デコルテ、脇の隠れた服なら着れる。
※服を着ている時間が長い為、服を着た際の見た目も大事かもしれない。
*見た目をどこまで気にするかによって違う。
トラブルの時は?(自家組織)
・手術中、術後1年に多い。(皮弁壊死・腹壁ヘルニアなど)
※腹壁ヘルニアは手術による治療が必要。
・傷跡が目立ち易い為、後日修正が必要な場合もある。
・落ち着いてしまえばメンテナンス不要。
トラブルの時は?(インプラント)
・人工物が受け入れられない体質の人。
・長期間経ってからトラブルになる可能性。(感染・露出・破損)
・体型変化とともに形が合わなくなる。
⇒脂肪注入、修正&サイズ交換を考える。
・破損すると柔らかくなる為、自分で気づかない場合が多い。
術後ケアは?
・乳房切除後の皮膚は汗や油を分泌しない。
⇒スキンケアが大切。(ヒルドイド・ワセリン等、何でも良い)
・人工物は揺れない&寄らない。
⇒健側をしっかり支えつつ、患側にもフィットする下着が必要。
・インプラントは破損する可能性がある。
⇒1年に1回はエコー検査を受ける。
温存VS全摘再建
・乳房の大きさ、切除範囲、皮下脂肪の厚さで決まる。
・温存可能なものは温存を。
・但し遺伝性乳がんの場合はよく検討する必要あり。
リンパ浮腫の治療
【複合的治療(今年から保険承認)】
・スキンケア、リンパドレナージ。
・弾性包帯、弾性着衣。
・リンパのセラピスト(少ないが)に相談。
⇒早い段階でケアを始めた方が良い。
【手術治療(高額だが保険効く)】
・リンパ管静脈吻合。
・リンパ節移植。
⇒「そけい部」からリンパ節移植。下肢に浮腫が起こらない様に注意して行う。
*どれをやったらどれくらい回復するかは個人差がある。
【議論】
・左右対照にこだわらない人も多いのではないか?
⇒その人によって求めるものが違う。
・綺麗な乳房を作るのがゴールではない。
⇒生活スタイルを一番重視する事が大切。
・「再建有りき」が前提になっているが「再建なし」も有りではないか?
・乳がんと知ってショックなのに、短期間で再建の事まで判断していくのは難しいよね?
・人目を気にせず温泉に入りたい。
【ビックリ話】
がん研有明病院では手術時に採取した肋骨の軟骨を芯にして乳頭を再建。
乳頭に軟骨を入れると高さが出て、しっかりとした乳頭ができるらしい。
【感想】
私自身は「温存手術」です。
ただ再建は日々進歩していて選択肢があり、自家組織でするかインプラントでするかの迷いを耳にする事もあったので、興味深く聴講してきました。
再建している人、再建を検討している真っ只中の人にとっては周知のごく基本的内容かと思いますが、私の中では長所&短所が整理できて、とても勉強になりました。
印象に残った事は
・乳腺外科医の取り方で再建の出来上がりが変わる。
⇒「再建」の事をよくわかっている乳腺外科医がベスト。
・自分に合った再建法とは「感覚」の問題でもある。
⇒違和感なく手術した事を忘れているか?
・先生の熱意や考え方の個人差が大きい。
⇒自分の意見や希望を事前によく伝える事が必要である。
・「自分の生活スタイルに合った満足度」が最優先。
・顔のお手入れと同様に乳房の「保湿」の手入れを心がける。
⇒常に手術した箇所を気にする事が大切。
・残せる場合でも「全摘して再建」という流れから「温存できるなら温存で」という流れがでてきた。
自分が再建するなら自家組織とインプラントのどちらを選択するか、考えてみました。
画像も拝見させていただきましたが、どちらを選択しても綺麗に仕上がっているものと少し違和感のあるものがあって、「正直やってみないとわからない」というのが率直な感想です。
自家組織の場合、傷跡が残り易い体質の為、胸や背中・太ももなどの乳房以外の傷跡がすごく残ってしまうのでは…という不安があり、インプラントでは「人工物が体質的に合わない人がいる」という事が事前にある程度、予測つくのかな…という不安があり。
「破損」もちょっと心配です。
また乳頭・乳輪を残せなかった場合の再建方法の成功例と失敗例を拝見して、たくさんの選択肢の中でどれが自分にとって一番ベストなのか、果たしてその時に決断できるのかなと感じました。
う~ん、難しいな。
【嬉しいおみやげ】
病理の専門医・黒住先生が書かれている
「乳がんの病理」の冊子。
改訂第2版をいただきました。
出来立てホヤホヤだそうです。
何度か聴講していますが、黒住先生は尊敬する先生のおひとり。
わかり易く基本的な事がQ&Aの形式でコンパクトに書かれているので、改めて復習するのにとても参考になる素晴らしい冊子です。
松本先生は新婚さんで、お若く可愛らしい女医さんでした。
これから更に経験を積まれ、より素晴らしい先生になられるかと思いますが、松本先生の様に若くて実力のある形成外科医・乳腺外科医がたくさん誕生される事を切に願います