積読山(読まずに積み上げられている本の山)の中から、

『医学生』 南木佳士 を読んでみました。

 

 

舟越桂さんの 肖像画の装丁が印象的。

 

作者の南木(なぎ)氏は、

第100回芥川賞受賞。

長野県の総合病院の内科医である。

 

創設されたばかりの秋田大学医学部に

通う学生の青春物語。(←わたし大好き!)

青臭くって、失敗続きで、それでもなんとか日々

過ごしている20代の(あ、ひとり30代が居ます)の

学生たち。

 

4人の若者の物語は、私にはなにか恩田陸さんの

『蜜蜂と遠雷』に共通するものがあるような気がしました。

女の子が一人いること。メンバーの一人は妻子ありの

社会人経験者であることなどが、その原因でしょうか。

彼らの目指すものが、医学と音楽という違う世界なのに。

 

4人の青年のだれかということではなく、

精神を病んでしまう内科のお医者様なども含めて

登場人物すべてが、

南木氏の物語のようである。

南木氏ご自身も秋田大学医学部ご卒業の医師であるし、

一時期、心の病から作家としての活動をほとんど

していらっしゃらなかったようである。

「『医学生』は私の物語である。」とあとがきの中でも

述べていらっしゃる。

 

雪深い東北の しかもできて日が浅い 大学の医学部に

(若干不本意ながら)進学してしまった彼ら。

 

最終的には、卒業して15年後の彼らのことまで、

書かれていて、なんだかとっても良かった!と

思えました。登場人物それぞれ、本人たちには、

”こんなはずじゃなかった”の部分があるかもしれないけれど、

第三者としてみると、それぞれ、よい年の重ね方なのでは?

と思えます。

 

自分を振り返っても、18歳の時は何をしたいのか、

何になりたいのかすら、まったくわかっていなかった。

そんな自分と比べると、医者という目標を持っている主人公たちは、

すごい!素敵だな!と思いました。

 

解剖実習の場面とか、病院での実習とか

お医者様の卵たちは当然”死”を近くで見ることになる。

それが、逆に”生きること”を考えることになる。

 

この本と同時進行で

『動物学者が死ぬほど向き合った「死」の話』

(J=ハワード著・フィルムアート社)

という本を読み始めたのですが、こちらも

”死”について考えれば考えるほど”生命”の

ことを深く理解するようになるという内容の・・・・ようです。

 

ちょっとお出かけ控えなければ、の今日この頃なので、

日ごろあまりできない読書でもしましょうか。