2024.5.16(木)


この日は中絶後の一週間検診だった。


正直なところ行きたくない。

朝から気持ちが苦しい、重たい。

夜中も変な夢をみている。


妊婦さんや新生児には会いたくない。


でも行かなきゃ…。


この日に退院時に間に合わなかった

『臍の緒』を受け取ることになっていた。



重い腰をあげ、

午前の受付時間ギリギリに行った。

幸いなことに、患者さんが少なくてホッとする。


自分的に身体は元気だった。

食欲もあるし、身体は軽く感じる。

悪露はあるけど、腹痛はない。

順調な回復なんだな、と勝手に思ってた。



医師の内診が始まる。


『子宮の中にまだ遺残物があるね。

 収縮剤を追加するから飲んでみて、

 また3週間後診せて。

 自然に出てくることもあるから。

 いづれにせよ、今手術するのは早すぎるからね。

 3週間後に診せてもらって

 まだ残ってたら再手術しましょう』


と言われた。


『胎盤遺残』


とのことだった。


体外受精や高齢出産だと

割とあることだということは

後で自分で調べてわかるのだが、

順調だと勝手に思ってたから

ショックだった…。


自然に出てくることもあり得るとのことだったので、そうなってほしい!


再手術なんて本当にもう嫌だ…。



身体だけは順調に回復してると

思い込んでいたのでショックが大きかった。

急に大量出血する場合もあるらしく、

その場合はすぐに連絡してと言われた。

大量出血という言葉も大きな不安に感じた…。


診察が終わり産院を出た。



外に出たついでに、

少し買い物をしようと思った

(この時は1人で行動出来る

 精神的に余裕があったみたいだ)。

赤ちゃんにお供えする用のお菓子など

買いたかった。


でも行ってから後悔した。


たまたまタイミングで、


『ママ、5歳くらいの男の子、ベビーカーに女の子の小さい赤ちゃん』+『おばあちゃん』


が買い物をしている姿を見てしまう。



思わず目はそらしたが、

視覚に入ってしまったものはなかなか

頭から消えてくれない。


『私も10月以降にああなる予定だった』


と、いう思いが溢れてくる。


孫をすごく楽しみにしていた

実母にも悲しい思いをさせてしまったことも

心苦しかった。



買い物をさっさと済ませて、

重い足取りで帰宅した。


頭ではわかっている。

気持ちがついていかない…。


『みんな大変なのを言わないだけで

 きちんと生きている』


『私が幸せそうな一面を見ただけであって、

 今日見たママが本当に幸せかなんてわからない』


『SNSのキラキラした世界だって、

 生活のほんの一部を切り取っただけだ』



私だって他人から見たら、

きっと普通の人に見えている。

1週間前に中絶をした人にはとても見えないだろう。


でも、その日は苦しかった。

ちょうど1週間前の木曜日に

赤ちゃんが産まれてきてくれたからだろうか…。


今ある幸せが当たり前じゃないことに

気がつかせてくれたあたしの赤ちゃん…。



ないものねだりは、やめよう…。

タラレバは、やめよう…。


と、自分に言い聞かせた。