2024.5.9(木)


15:10

医師の診察と3回目の陣痛促進剤の挿入。

やはり痛い。

医師の指が1日に何回も出入りするのが

もうただただ苦痛だった。

診察のため一時退室していた夫が戻ってきたので泣きごとを言い、慰めてもらう。



そして

そろそろ私は焦ってきた。

自分の中ではそろそろ産まれているような

気がしていたから。

もしかして今日は産まれない感じ?

3時間後の18時にも陣痛促進剤いれるのかな?

でもそこから陣痛が始まって産まれたら夫は長男の保育園のお迎えでもうここにはいない。

すぐに赤ちゃんには会えない…。

ってか、何時までなら産めるんだろう?

それともまた明日仕切り直し?


わからないことだらけで、

メンタルも身体も自分が耐えられるかどうか

不安になった。




16:30すぎ

(ここから出産までは正確な時間は覚えてない部分あり)


陣痛的なお腹の痛みがくる。

腰も痛くなってきた。

夫に腰をさすってもらう。

痛みが引く、また痛くなる…の繰り返しだ。

結構な時間、痛みに耐えたと思う。

ちょうど助産師さんがそばにいるときに、

耐えられないくらいの痛みの波とともに

何かが出る感じがした…


『なにかでる(赤ちゃん?)…』と言った瞬間、

バジャーっと破水しました。

破水のことはすっかり忘れていたけど、

破水しなきゃ産まれないか…と冷静に思った。


そして

破水の後はまた何事もなかったかのように

お腹の痛みが全く無くなってしまった。

破水によりお腹の圧が抜けたから

お腹自体は楽になったらしい。


でも、破水したってことは、


『もう赤ちゃんは…。』


とぼんやり思った。



しばらく腹痛もなく時間が過ぎていく。


夫も長男を保育園に迎えにいく時間も

気にしている。


勤務時間の交代で別の助産師さんも

挨拶にきてくれるような時間になっていた。

若めの助産師さん。

この後、彼女にすごく気持ちを救われることになる。


そんななかトイレに行きたくなり

助産師さんを呼ぶと、

子宮口を確認したあとに


『導尿カテーテルにしよう。

  これでお産が進むかもしれない』


と言われる。

もう私に有無を言わさない感が強くあった。

カテーテルを入れてもらう。これも痛い。

というか、

尿がきちんとでているかもわからなかった。

痛いということしかわからなかった。



そして

その後、急激にお腹が痛くなり

陣痛が再度くる。

本当に急だった。

助産師さん達もバタバタし始めた。

痛すぎて呼吸が早くなった。

ゆっくり呼吸をするように

助産師さんから言われる。

ギュッと手を握りしめてくれた。



夫の立ち会いについては夫自身で決めていいよ、

なんて言っておきながら、

お腹の痛みと不安から、夫の手を離せない…。

夫から

『一緒にいてほしい?』

と聞かれたので、

『お願いっ』と泣きながら答えた。


そこからはあっという間だった。

『痛い!』とか『もう出そう!』『出る!』

とか、叫ぶまではいかずとも、声が出た。。


あまり覚えてはいないが

やっと医師が到着して

膣に何か器具をいれた気がした。

カチャカチャ金属音が鳴り、痛みが増した。

夫と助産師さんの手をギューっと握りしめた。


助産師さんに

『軽くチカラいれて、いきんでいいよ』

と、言われて、やっといきめた。


そうすると、

スルンと身体から赤ちゃんが出た感覚があった。。

お腹の痛みもそこでスッと消えた。

18:34のことだった。


助産師さんが産まれたばかりの

まだ暖かい赤ちゃんを胸の上に乗せてくれた。


泣くこともできない、

小さい小さい、あたしの赤ちゃん、

涙がとめどなく溢れて出てきた。

もう嗚咽に近かった。

『ごめんね』と何度も何度も謝った。


夫は私がまだお腹が痛くて泣いている

と思っていたようだが、違う、違うんだよ…。

産まれてきてた赤ちゃんは本当に可愛かった。

心の底からそう思った。

そんな可愛い赤ちゃんを自分達の決断によって

命を奪ってしまったのだ。

本当に『ごめんね』と謝るしか出来なかった。


しばらくして、自分も落ち着いた頃、

赤ちゃんは小さいお布団に寝かせてもらった。

産院の方の手作りであろう

小さいお布団をかけてくれた。

かわいい布で作ってあり、2種類あった。

私達に柄を選ばせてくれた。

(最終的には、もう1種類もプレゼントしてくれたので敷布団にした。その時に、折り紙で折ったかわいいピンクのお花と星も一緒に頂いた。)



私は胎盤を出す処置があった。

医師から

力入れて少しいきんでみてと言われた。

そのまま痛みもなくすぐに出たようで、

『キレイに出ました』

と言われた。

胎盤を出す処置も痛いという

事前情報を得ていたため恐怖だったが、

これについては回避出来た!と安堵した。

が、これもまたフラグである。


その後は

医師、助産師さん達も席を外してくれて

親子3人だけの時間が取れた。


私からは夫に、

『立ち会って、最後までそばにいてくれて

 ありがとう』

と伝えた。


夫からは

『産んでくれてありがとう』

と言われた。


あまり感情の出ない夫だが、涙声だった。


そして夫がポツリと。


『実は破水した後に赤ちゃんにお願いを

 してたんだ。

 遅くなるとパパはお兄ちゃんのとこにお迎え

 行かなきゃ行けない。

 会いたいから早く出ておいで。

 パパも赤ちゃんに会いたいから

   早く出ておいでって。』


確かに破水後の陣痛が落ちついている間、

私のお腹に手を当てたり顔をくっつけていたが、

そんなお願いしてたんだ…。

立ち会って赤ちゃんに会うが自信ないと言ってた人が、、、。

きちんと赤ちゃんに会いたいと思ってくれたんだ…と、夫の赤ちゃんへの愛情を感じられた。


赤ちゃんにもその気持ちはちゃんと届いていて

パパにすぐに会えるように、出てきてくれたんだ

と思う。




19:00頃

夫はそろそろ長男を迎えにいく時間のリミットでもあったので退室。

その後は

私は赤ちゃんと2人きりでLDRのベッドで

2時間近く過ごした。

すぐ隣りに赤ちゃんがいる。

『かわいい』と素直に思えた。


NIPT陽性後に、

赤ちゃんのことを怖くなってしまった自分を責めた。

産まれてきた赤ちゃんは

染色体異常があるようにはとても見えなかった。

でも、やはり浮腫んでいたとは思う。

でも顔は口唇口蓋裂もなくキレイなお顔だった。



途中、

朝から一緒にいてくれた

助産師さんが退勤前に挨拶にきてくれた。


『1日がかりのお産、お疲れさま。大変だったね』


そして


『赤ちゃん足から産まれるって言ってたけど、

 最後きちんと頭から出てきてくれたんだよ。

 きっとママを苦しませたくないって、

 お腹の中で途中でくるんと回ってくれたみたい。

 すごい優しくて、いい子だね』


と、教えてくれた。


また涙が溢れ出す…。

あたしは自分のことしか考えていなかったことに

また後悔する。

お腹の中で赤ちゃん自身が苦しかったはずなのに…。

ママのことを考えてくれたんだね…。

本当に優しい子だ…。

ありがとう…。



20:00すぎ

夕食も準備してくれていたが、

あまり食欲も無く食べることはなかった。


21:00

産後2時間くらい過ち

身体も動かせるようになり、トイレにいき、

点滴も抜いてもらった。

気持ち的には産後ハイなのか、

出産をやりきった感なのか、

女性ホルモンの影響なのかよくわからないが、

妙にハイテンションだった。


助産師さんがバースプランについて

どうするか確認してくれた。

私の身体が大丈夫であれば今からでも出来るし、

明日でもいいよ、と言ってくれた。


母子手帳の記入のために

体重と身長を測ってきてくれた。


身長21cm、体重200gの小さな女の子。


沐浴もすぐに出来るとのことだったので

お言葉に甘えた。

キレイにしてあげたかった。

助産師さんはすごく慣れていて、

生きている子と同じように扱ってくれた。

『あったかいね〜。お湯、気持ちいいよね〜

 ママが洗ってくれてるよ〜。いいねぇ。』

と、優しく声をかけてあげながら

沐浴を一緒にしてくれた。


沐浴後は手形と足形をとった。

スタンプ台もたくさんの色を出してくれて

その中からピンクを選んだ。

用紙も個室に置いてきてしまったため、

産院のものから選ばせてもらった。

小さな手と足。

なかなか上手くいかなかったが

試行錯誤しながら諦めないで、

キレイに手形足形をとってくれた。


身体がきれいになったので、

用意していたかわいいお洋服を着せることにした。

『可愛いお洋服だね。

 くまちゃん柄、似合うよ〜。』

と言いながら、一緒に着せてくれた。


母乳については

マッサージしてくれて

数滴しか出なかったが、

それをガーゼに含ませてくれた。

抱っこをして

赤ちゃんの口元へチョンチョンと

ガーゼを当ててあげた。

『ママのおっぱい、おいしいね。

 おっぱいもらえて幸せだね。』

と、声をかけてくれた。


今の時点で可能な、

私の希望したバースプランは全部してくれた。

全てにおいて

生きている赤ちゃんと同じように扱ってくれた。

この助産師さんの対応、特に声掛けなど、

全てにおいて、あの時の私は心がとても救われた。

そして今もとても感謝している。



個室に戻ることになり、

赤ちゃんをどうするか尋ねられた。

預かることも出来るし、

一緒に過ごすこともできるという。

少し悩んだ…。

でも一緒にいられる時間は限られているし

後悔はしたくない。

同室で過ごしたい旨を伝えた。

『ママと一緒に入れるね、うれしいね。』

と、ここでも声掛けをしてくれた。

そして

朝までもつように赤ちゃんの小さいお布団に

保冷材もしっかりセットしてくれた。


22:00すぎ

個室に戻ってきた。

スマホを見ると夫から連絡がきていた。

バースプランを実行している間は

全くスマホをみていなかった。


内容は

『長男、熱がある。』

とのこと。

解熱剤の場所などを書いて返信したが

既読にはなったものの返事はこなかった。

長男が泣き疲れて眠ってしまい

夫も離れられなくて一緒に寝たのだろうと思った。


長男が心配だった。

今まであまり熱を出すことがない子だった。

長男も私がいないことでの不安やストレス、

保育園のお迎えが連日遅くなることなど、

すべてが不安だったんだろう…。

フォロー仕切れていない

自分に対して罪悪感を感じ、

長男に対しても申し訳なくなる…。



23:00

疲れているけど

全く眠たくはなかった。

ここで赤ちゃんへの手紙を書き直す。

謝罪、感謝、謝罪の繰り返し。

でも、感謝の気持ちを、よりたくさん書いた。

妊娠から今までの幸せな時間をありがとう、と。


手紙を書いていると

助産師さんが子宮収縮剤の薬や入眠剤を

持ってきてくれた。


夕食を全く食べていなかったので、

昨日もらっていて残しておいたお菓子を食べて

薬を飲んだ。


24:00すぎ

その後は入眠剤も飲んだ。

昨夜のように深く寝たいと思った。

赤ちゃんのとなりで一緒に寝る。

だが、なかなか寝付けなかった。

眠りも浅かった。

途中まどろみながら新生児の泣き声がする…。

あたしの赤ちゃんは泣いてはくれない。

悲しみ、苦しさ、幸せ、、、

言葉では表せない、さみしい夜だった…。