近藤四郎著「足の話」を読みました。
 
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本書の著者・近藤四郎氏のことは、Facebookで「はだしランニング」を実践している方の投稿で知りました。

 

本書の巻末をみると、著者の近藤四郎氏は「京都大学霊長類研究所教授」という肩書を持っていて、「はきもの」や「人の進化」に関する著書もある方のようです。本書の発行が1979年とありますから、40年以上前!の書です。秩父市立図書館で借りました。

 

本書のなかで著者は足について非常に深い考察をされ、「足の健康のためには、裸足で歩くのが一番いい」と語っています。裸足ランニングを実践者の方々が好んで読みたくなるのもよくわかりました。

私も非常に面白く読ませてもらいました。最近の新書でこんなに充実した本はないんじゃないか、と思います。

 

 

足指は物をつかむことに優れていた

 

バビンスキー反射とは、足の裏の外縁部をこすると、足の親指が背屈し、他の指は扇状にやや開きながら底屈する現象である。この反射は、脳卒中、脳腫瘍、脊髄損傷などの患者にみられるところから、大脳皮質の運動野や錐体路の障害によるものと考えられているようだ。また、このような病人以外の健康な人では、乳幼児だけにみられる現象である。

 

人類学では、ヒトにみられるバビンスキー反射は、かつて祖先が樹の上にいたとき、足指で物をつかむことにすぐれていたことの名残りではないかという説がある。著者の近藤氏は、バビンスキー位と裸足の生活のあいだの関連を信じたいと考えている。

 

 特に日本人は、白色人種に比べて足指で物をつかむ能力に優れているといわれる。現に、足指で筆を挟んで字を書ける人がいる。

一方で、第Ⅴ趾の骨が二個しかない人の割合が日本人は75%であるのに対し、英国人は42%。物をつかむ足として出発した足が、体重を支えて歩く役割に変わったから、足のⅤ趾の骨が三個から二個に変わってもうなずけるが、なぜ日本人に特異的に高率なのかはわからない。

 

著者は使い方の違いによって、進化の特殊化が起こっている可能性を示唆している。

 

 

【私の感想】

私たちの祖先は、足指の動きをもっと活用した生活をしていたと想像できます。その名残が私たちの体にも備わっていると、多くの研究から示唆されます。著者の考えにそって思いを馳せると、原始から残る私たちの足に未開の能力の可能性を感じてきます。

さらには日本人の身体的特徴として、足指を良く使えるという特性があるようです。それなら、私たち日本人こそ、足指をしっかり機能させるべきだと思いました。

 

日本人の短頭化現象と下肢長の増大

 

日本人の身長は著しく伸びてきている。足が長くなりすんなりしてきた。日本人の顔が小さくなり、脚が長くなっていることは、データにより明らかである。

 

日本人は本来、蒙古人種に属し、その体形は胴長短脚を特徴とする。腕も短く脚も短いということは、寒気に暴露しやすい四肢が短いということ。白色人種と比べて四肢の表面積が小さい蒙古人種系の体型は、寒さに適応した体型と考えられている。自然淘汰が厳しかった時代においては、寒い地域で四肢が短いことは、生き残るために有利な形質であった。

 

ほっそりした長い脚は見た目が良い。見栄えが良い人を配偶者に選ぶ方向に進むと、ヒトの進化によい結果をもたらすか疑問である。下肢長の増大は上昇の波に乗っているが、この波は下降の波に移行して、強い脚力をもった次代の人の出現がなければならぬ。人間は基本的に立って歩く動物だからである。

 

【私の感想】

著者は端的に言って、結婚相手を見た目で選ばず、脚の強さで選べ、と言っています。日本人の足の短さ、寒さへの強さ、脚力の強さを守るべき。私たちは、自分の持つ身体的特性に誇りをもって、その特性に合った脚力の鍛え方をしよう。私はそのように読み取りました。私たち日本人が持ってきたかつての生活様式には、はだしでの労働であったり、和式便所であったりしました。かつての日本人の足の使い方にも思いが巡ってきました。

 

和風履物の長所

 

下駄や草履などの和風履物の長所として、鼻緒を利用していることが挙げられよう。足指が前鼻緒を締め付け、また足が被覆されていないので、足指が自由に動かせる。つまり足指の発達によい。

 

足指の機能を高めること以外には、鼻緒で簡便に足を台部に固定して、足指および足の甲を解放していることにあるだろう。素足で履くわけだから、湿気が高いときなど、気分爽快になる。下駄や草履などは、温暖で湿度が高い我が国の気候になじむものであった。その木や藁などの素足への感触は、また人々が愛好してきた理由のひとつであろう。

 

下駄は台材が木材であるので、足指の関節があたる台部が曲がらない。これが下駄の欠点で、歩くときは足と台部が遊離する格好になる。

 

我が国在来の重要な履物として、足半(あしなか)がある。足半は、読んで字のごとく、台部が足の長さの半分ぐらいの一種の草履である。足半を履くと、足指が地面にはみ出して地面をつかむことができる。藁でできているので滑りにくく、さらには台部が短いので泥道を歩いても、泥はねをおこさない。早くから武士に重宝され、戦場までは草鞋で行き、戦闘になるまえに足半に履き替えていたことも知られている。

 

【私の感想】

日本人が愛用してきた、草履、下駄、足半の特徴がわかり、納得しました。足半は、跳躍を伴うような激しい動きによい。草鞋は長く歩くときによい。下駄は快適さや木の感触を楽しむのによい。と、いうように私は理解しました。いずれも革靴などとくらべて、足の皮膚感覚や動きを感じる受容器からたくさんの情報が、中枢へフィードバックされる感じがします。

その究極は、やはり裸足で歩くことだと、あらためて思いました。

 

近所への下駄散歩にて
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ありがとうございました。