【捜査の端緒とは何か】

 

 捜査は、捜査機関が犯罪の嫌疑を抱いたときに、開始されます。このような捜査機関に捜査活動を行わせるきっかけとなる事情を捜査の端緒といいます。

 

 刑訴法は、捜査の端緒として、告訴・告発・請求・自首・検視を挙げていますが、捜査の端緒は、いやしくも犯罪に関係ありと認められる事由がある限り、広く社会の諸事情から得ることが認められています。職務質問は勿論のこと、新聞や雑誌の記事や投書等もあげられます。

 

【告訴(刑訴法230条)】

 

 告訴とは、犯罪の被害者その他一定の者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。告訴は、犯人の処罰を求める意思表示であるから、単なる被害届やてんまつ書の提出があっても、それは告訴とは違います。

 

 告訴と被害届の提出とでは、警察での受理後の対応が異なります。告訴状を受理したら、警察は速やかな捜査の開始と、事件書類や証拠物を検察官へ送付する義義務が生じます。

 

 親告罪というのは、告訴がなければ公訴できない罪をいうわけですが、告訴自体は非親告罪についてもできることはいうまでもありません。それでは、犯罪、たとえば非親告罪である窃盗の被害にあったものは警察に対して常に告訴状を提出することができ、警察は受理しなければならないのか。被害届の提出なら、まだしも告訴の申出については、警察実務上、ハードルが高いようですね。犯罪の特定が不十分であるとか証拠が明らかでないなどという理由で警察は拒むことができます。

 

 ※性犯罪について、かつては被害者のプライバシー保護などの観点から親告罪とされていましたが、法改正によって非親告罪になった犯罪があります。

 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪~2017年の法改正で旧強姦罪や旧強制わいせつ罪が非親告罪化され、2023年の法改正で現在の罪名に再編されてからも引き続き非親告罪となっています。

 ストーカー規制法違反~2016年の法改正により、告訴が不要となりました。

 なお、リベンジポルノ防止法違反は非親告罪です。

 

 告訴権者は、原則として被害者です。被害者の法定代理人も独立して告訴をすることができます(法231条1項)。被害者であれば法人もできます。被害者の相続人も被害者の明示した意思に反しない限り、告訴ができます(231条2項)。

 

 親告罪の告訴期間は、犯人を知ったときから6か月以内です(法235条)。

 

 告訴は、公訴提起まで取消すことができるが、いったん告訴を取り消した場合には、再度の告訴はできません(法237条1項、2項)。これらは、親告罪における告訴のみにかかるもので、非親告罪の告訴には当てはまらないことには注意が必要です。

 

 告訴又はその取消しは、告訴権者本人だけでなく、代理人によってもすることができます(法定代理人ではない)。

 

 告訴は、検察官又は司法警察員に対してしなければなりません(法241条2項)。口頭による告訴も可能ですが、受理する側は告訴調書を作らなければなりません(法241条2項)。

 

【告発(刑訴法239条)】

 

 告発とは、犯人又は告訴権者以外の第三者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示です。告訴の場合と同様、単なる犯罪事実の申告やてん末書の提出があっても、告発とは認められません。

 

 告発は、一般に捜査の端緒になるにすぎないが、一定の犯罪では訴訟条件になることもあります。訴訟条件とされる告発については、告訴の場合と異なり、告発期間の制限がないことには注意が必要です。

 

 一個の犯罪事実の一部に対する告発は、その全部について効力を生じます。

 

【請  求】

 

 請求とは、刑法やその他の法律で指定された特定の国家機関や公的機関が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告してその訴追を求める意思表示です。親告罪における告訴と同一性質のものです。

 

 ・告訴・告発との違い 

  告訴:犯罪の「被害者」などが行う。

  告発:被害者以外の「第三者」なら誰でも行える。

  請求:「特定の政府機関や委員会」だけが行える。

 

 ・具体的な例

   外国国章損壊罪(刑法92条):外国政府の「請求」がないと起訴できません。

   独占禁止法違反:公正取引委員会の「告発」が必要。 


 

【自首(刑訴法245条)】

 

 自首とは、犯人が捜査機関に対し、自己の犯罪事実を申告してその処分に委ねる意思表示です。罪を犯した者が「捜査機関に発覚する前」に申告することを要します。

 

 「捜査機関に発覚する前」とは、犯罪事実は分かっていても犯人がだれであるか分かっていない場合も含むが、犯罪事実及び犯人がだれであるか分かっていても、犯人の所在だけが分からない場合は含まれないとされます。

 

 【検視(刑訴法229条)】

 

 検視とは、人の死亡が犯罪に起因するものかどうかを判断するため、五官の作用により死体の状況を見分する処分をいいます。

 

 検視は、犯罪の有無を発見するために行われる捜査前の処分であって、捜査そのものではないから検証とは異なります。したがって、検視を行なうのに令状は必要ないということになります。

 

 司法検視と行政検視

  本文で検視というのは司法検視を意味します。司法検視とは犯罪による死亡の可能性が否定できない場合に行われる刑事手続きです。それに対して、 行政検視とは明らかに事件性(犯罪の疑い)がない場合に行われる行政手続きです。自宅での孤独死や、行き倒れ、自殺など、事件性はなくとも「死因がはっきりしない遺体」の身元や死因を明らかにするために行われます。さらに詳しく調べる必要がある場合は、監察医らによって行政解剖などが実施されます。

 

 検視の対象

 検視の対象は、変死者(いわゆる自然死ではなく不自然死。犯罪による死亡ではないかという疑いのある死体をいう)、変死の疑いのある死体ですが、この両者を総合して「変死体」といいます。

 

 検視の主宰者

 検察官は、警察官から変死体があるという通知を受けたときは、犯罪に起因するかどうかについての疑いの有無を判断し、その疑いのないものについては行政検視に委ね、その疑いのあるものについては自ら現場に臨んで検視をしなければならない(229条1項)。いわゆる代行検視として司法警察員又は検察事務官に命じて検視させることもできる(229条2項)。

 

 

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