最初に話したように、民事訴訟における管轄は、色々な視点から分類できるもので、まず裁判所の機能に着目して分類するものとして、職分管轄(含む審級管轄)と事物、土地管轄があった。そして、管轄の定まる根拠が法律に規定されているものとそれ以外に分類することもできます。これは、法定管轄と指定、合意管轄であり、更に法定管轄の性質による分類として、他の管轄の発生を排除する専属管轄と競合する任意管轄に分けることができます。
ここで敷衍するに、指定管轄とは、管轄裁判所が事実上法律上裁判を行うことができなくなった場合に、両者共通の直近上級裁判所が、管轄裁判所を決定する管轄です(10条)。任意管轄とは、当事者が裁判所を選択できる管轄です。
また、専属管轄というのは、公益的な要請から、特定の事件を専門的に扱う裁判所のみが管轄する裁判管轄であり、その例としては特許権や実用新案権、著作権等の事件は東京地裁と大阪地裁の知財専門部というところだけが管轄権を有するというものです。任意管轄とは、主として当事者の便宜や公平性を考慮して定められている裁判管轄であり、土地管轄や事物管轄が任意管轄の例として挙げられるますね。契約書に定める合意管轄条項は、任意管轄の変更に関する条項ということになります。
【合意管轄】
合意管轄とは、当事者の合意で管轄を定める場合であり、大きな契約では大抵契約書の末尾に「第一審の管轄権は〇〇地方裁判所のみにある。」と記載されていることが多いですね。
合意管轄が成立するための要件(11条)
①第一審の土地管轄又は事物管轄の合意であること
控訴審、上告審を合意で変えることができません。
②一定の法律関係に基づく訴えに関するものであること
ある程度の特定が必要であるということです。「甲乙間の将来にわたるすべての訴訟について」では駄目で、「甲乙間のA土地の賃貸借契約に基づくすべての訴訟」ならば有効となります。
③合意が書面でなされたこと
電磁的記録によってなされたときは、書面によってなされたものとみなされます。
④専属管轄の定めがないこと
(注意点)
・合意管轄は、第一審の事物管轄について合意で決められるのだから、地裁の事件を簡裁に、簡裁の事件を地裁へと定めることもできます。簡裁の事件を地裁へというのは分かるのですが、地裁の事件を簡裁へというのがよく分かりませんでした。簡裁は訴額140万円を超える事件を扱うことになってしまうわけですが、実際は地裁の方で簡裁によることは不相当であるとして却下すればそれまでです。
・管轄の合意は、私法上の契約とは別個の訴訟契約であり、私法上の契約が解除されても、消滅はしません。
・合意の時期については制限がありませんが、訴訟が管轄裁判所に係属した場合は、移送(17条)を申し立てる前提として意味があるにすぎません。
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