トウモロコシは毎年作っているが商品としてお届けしようとするとこれが結構難しい。

トウモロコシは4月に入るとすぐに種まきをしてハウスで育苗をして4月後半くらいに20センチ位で畑に定植する。

気温が低いとなかなか大きくならないし定植直後は生長が足踏みして一向に大きくならないが、ある時点からいきなり大きくなるのが特徴である。とにかく堆肥をたくさん喰うのでたくさん堆肥をあげて体が大きくなるようにする。

トウモロコシを作るのに大変な時期はフサフサの雌しべが出て実が大きくなり始めた頃からである。トウモロコシはとにかく害虫が入りやすく、アワノメイガという蛾の幼虫が実が大きく育つ頃から中に侵入して実を喰い荒らすのが被害の大半を占めるくらいである。

トウモロコシというとお盆のころに田舎に帰って食べるものというイメージが有るが、そんな時期に作るのは無農薬ではほぼ無理で大半がアワノメイガの餌食になってしまう。

だから寒さが去った4月に出来るだけ早く種を蒔いて害虫からの先行逃げ切りでなんとか収穫を狙うのである。いま育てているトウモロコシは2回分あるが2回目の分はきちんと収穫できるかさえ分からない。これも運次第であって場合によっては害虫によって全滅という事も少なくない。

トウモロコシはとにかく甘くてお美味しい。こんなにおいしいものを屋外に放っておいて無事なはずがない。だからカラスやハクビシン、イノシシなど害獣ブラザースの被害からあらゆる手段でトウモロコシを守らないとならない。

カラスは飛んでくるので周囲に糸を張って近寄れないようにする。カラスの侵入を許すと育ちかけの実があっという間に突つつかれて駄目になってしまう。イノシシに関しては周囲に電柵を張って防ぐしかないが、これもハクビシンと同様で防げるとは限らない。

去年は2回目のトウモロコシがすごく良く出来ていたがトウモロコシが大きくなる前からハクビシンの被害が出始めて防ぎようが無く、このままハクビシンに喰われるくらいならと泣く泣く全部刈り取って捨てた。

とてもいい出来だったのでかなり残念だった。

イノシシもハクビシンも基本的には防げないので両者が出ない場所に作るしかなく、それでもやられ始めたら諦めるのが普通だ。電柵も有るが万能ではなく敷設に手間がかかる割に効果も薄いのであまり使う前提にはしたくない。

そして実はもっとも手強いものがカメムシ被害である。カメムシはトウモロコシの実が大きく成りはじめる頃に出はじめて、皮の外から実に口の管を差し込んで中の汁を吸ってしまう。吸われた実は凹んでしまってダメになってしまうし、大発生したカメムシによってほぼ全ての実が吸い尽くされることも有る。去年の1回目のトウモロコシはそれでほとんどがダメになってしまった。

アワノメイガも同じだがカメムシ被害を防ぐ人は農薬を使うしかない。実際にアワノメイガに関してはとても有効な農薬が有るので被害は防げるようだ。世間一般に出回っている旬のトウモロコシは100%農薬によって害虫被害を防いでおり、表面がつるつるきれいなトウモロコシは農薬のお陰である。無農薬でトウモロコシをきれいに作ろうとする事は世間知らずで愚か者の酔狂な行為であり、実際にやってみると如何に無駄な行為であることを実感する。

カメムシやアワノメイガは防虫ネットで物理的に実に触れられないようにすることも考えられるが、高さが2m以上になるトウモロコシを防虫ネットで覆うのは難しく、ハウスのような背の堅い構造物を防虫ネットで覆うしかなく、トウモロコシのみにそのような手間のかかる手段を使用するのは考えにくく、やっている人をまず見た事が無い。

カメムシはいつのまにか被害に有っている事が多く、先週は大丈夫でも今週は壊滅しているという事が多々ある。だからカラスやハクビシン、イノシシの被害と同様に、被害を受ける前に収穫してしまうというのが一番の被害の回避策であり、おいしいトウモロコシが奴らに見つかってしまう前に収穫してしまうというゲリラ的な栽培が結構有効なのである。

遅くまで放っておいても被害が無いとしたらそれは相当なラッキーな事であり、これは神に感謝しないとならない。

今週お届けしたトウモロコシも本来はもう少し待って太ってから収穫したかったが、特にカメムシに関しては被害が出はじめたらもう終わりなので、少し早くてサイズも小さいのだが待ちきれないで収穫してしまったのである。

収穫したものを食べてみるとやはり少し早くて小さい気もするが十分美味しいトウモロコシであった。茹でたてよりも冷蔵庫で冷やしてからの方が甘みが出るようだ。

ただ、願わくばもう少し大きくなってから収穫した方が美味しいのだろうが、それでカメムシ被害に有ってしまったら後悔してもし切れない。去年はカメムシにひどい被害を受けたし、今年も色々な面でカメムシ被害が広がっている事から用心してもし過ぎなことは無い。

トウモロコシは1回目の分があと半分残っているのでまだ出荷できるが来週まで大丈夫という保証はない。

それから2回目のトウモロコシが既に実をつけつつあるがそちらの方は更にカメムシや害獣の被害を受けやすくなる。

アワノメイガの被害を極力少なくしようと早く作った今回のトウモロコシも実は3分の1くらいは被害が有ってこれは出荷できないのだが、これは自分で全部きちんと食べるのでまあ良しとする。

とにかくトウモロコシという野菜はどこでも見かけるありふれた食べ物であるが、実は無農薬できれいに作ろうとすると、とても大変だという事が身に染みて実感できる。

スーパーに売っているトウモロコシを見たら先の方の実がやや潰れたようになっている商品を見かけた。これは紛れもなくカメムシの被害を受けたものだと思うが、農薬を使っていても防ぎきれない場合も有るのだと思った。

茹でてホクホクとおいしいトウモロコシが無防備に屋外に置いてあって、たまたま腹を減らした押さえどころが無く常識のない人がそれを見つけたらどうするだろうか。

一も二も無く、すぐにかぶりつくのではないか。

これがカメムシなどの害虫やイノシシなどの害獣だったらどうなるだろうか。当然話して通じる相手ではない。

無農薬でトウモロコシを畑に作るとはそういう事だろう。