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鈴木内科クリニック院長ブログ

~食事で健康になれるはず~

海外では今まで全粒穀物から食物繊維をとることが重要という表現がされていましたが、ここ数年前からは大麦に焦点をしぼってきた論文がかなり増えてきています。

 

その中で、やはり大麦のグリセミック指数がすべての穀物の中で一番優れていることや、βグルカンの効果が特に強調されており、糖尿病患者に一番推奨されるべき穀物としての評価を確定させようとしつつある感じがします。

 

二型だけではなく、一型糖尿病患者に大麦と従来の糖尿病食を食べる群に分けて、インスリンの必要量や血糖コントロールの状態などを調べる比較的長期の試験なども去年から行われていて現在進行中のようであり、来年には結果が出るようです。

 

近い将来、糖尿病の食事療法のセンターピンは大麦だといわれるようになるのではないかと思っています。

糖尿病の患者さんたちにオートミールや麦飯をすすめ、一か月後の結果が出てきています。

 

ある程度予想はしていましたが、糖質制限をすすめた時とは違いほぼ全例でA1cが改善するようなことはおきていません。A1cだけで言えばやや悪化した人のほうが多く、横ばいの人、少し改善した人もいて結果はまだバラバラです。

 

まだまだ、例えば朝食でとっていないとか、大麦の割合が少なすぎたり、わかってもらったと思っていても、間違ったやり方をしていたりするので、まだ評価できません。

 

糖質制限をしたことがあって、糖質制限はつづかなかったものの、無意識でも糖質はそれなりに控えて血糖をコントロールしてきた人は、GLP-1の分泌能が落ちている状態で、糖質量を積極的に増やせばA1cの短期的な悪化は仕方ない部分があるとは思っていました。腸内細菌の変化には最低でも2,3週間はかかります。

 

それでも、空腹時血糖が今までになく下がった人などが出てきていて、改善の兆しはあります。また、かなり糖質量を増やしているのに、横ばいの人も意味があると思います。何より、患者さん自体がしっかり糖質をとれることでの腹持ちの良さや、満足感を体感できているので、あまり不安は感じていません。

 

アルバイト先での外来で今まで食事に関してあまり節制もしていなかった糖尿病の患者さんについては、麦飯導入でA1cは下がっています。

 

どれぐらいの経過でA1cが改善していくのか、まだ未知の部分はありますが、経過はいづれにしろ報告しますので、積極的な糖質摂取に不安を覚える糖尿病の方はそれを見極めたうえで判断されてもよいと思います。

 

何にも考えずに薬だけ飲んでた糖尿病の人は、麦飯で悪化することもなく普通にA1cの数値がよくなってる。それなりに節制して来た場合に、最初は数値的には悪化しやすい。ここをどれくらいで乗り越えられるかをはっきりさせることができるかどうかがポイントになるはず。

 

食後の血糖値のスパイク、インスリンの過剰分泌や食後の眠気、そしてそのあとの急激な血糖低下による空腹感からの間食、中毒性のある頻回摂取などによる体重増加など、糖質制限では糖質の過剰を問題にしました。炭水化物の摂取を控えることは、一時的には功を奏します。

炭水化物=糖質+食物繊維


しかし本質は糖質の過剰ではなく食物繊維の不足によるインクレチン効果の低下であって、その証拠に十分な食物繊維と同時に糖質をとれば、最初に述べたすべての症状はおきません。これは麦ごはんを水溶性食物繊維豊富なおかずとともに食べてみればすぐに理解できることです。糖質量は関係ありません。

糖質制限とは糖質量を問題にして、炭水化物を控える食事法です。結果的に食物繊維の摂取量を減らしてしまったため、徐々にその弊害が出てきてしまいます。一番は食物繊維を利用する有用な腸内細菌叢を減らしてしまうことによっておきてきます。特に日本人は炭水化物の中の食物繊維をうまく利用することで、少ないインスリン分泌能で効率的に糖質をエネルギー源として利用してきたのでなおさらです。

糖質の過剰ではなく、食物繊維の不足だった。この裏表の関係は、インスリンとグルカゴンにも当てはまりました。血糖値が上がってしまうのはインスリンが分泌されていても利きが悪いのではなく、グルカゴンが抑制されていなかったためです。ここにおいても、問題は糖質過剰でなく、食物繊維の不足によるGLP-1分泌不足の方だったわけです。