たとえ姉が高熱を発し、

自ら実家での隔離生活を選択していたとしても、

司令官は姉です。





母存命の頃ですが、

“入院中の姉”からの頼みに“五体満足で駆けつけた店主”に向かい、

それはもう些細なというか、

自分で考えろよ、

手配しろよ、

と思う建物の不具合につき、

ぐちった上で、

「だいじょうぶ

 お姉ちゃんが退院したら

 やってもらうから」と

母は言ったものです。

こっちはそれどころじゃなかったので、

どっちみち放置でしたが、

退院した姉がその対処をしたのは言うまでもありません。

もちろん母は病院には現れませんでした。

元気に友人たちと旅行していましたが、

祖母の介護には一度も病院を訪れなかった母です。

当然といえば当然のことです。

七十代の頃だったと思います。

父が癌で入院したとき、

母は開口一番「これからはあんたが私の面倒見るんだ」と言ったとか。

母は還暦ちょうどくらいでした。

姉妹ともにそのときの母の年齢を越えましてからは、

姉はよくそのことを口にします。

未だ人生現役真っ只中で、

背に負う責任は変わらず重い姉妹ですから、

いったいどうして、

どうやったら、

ああもフツーに言いきれちゃうかなー、

それが母だと知ってはいても、

口にしたくなるのだと思います。


実家を存続させるにつき、

母はいかなる努力もしませんでしたが、

絶対仏壇とお墓を守るんだからね!

だけは繰り返して世を去り、

姉はそのために尽力しています。


店主と最後は一緒に暮らしたいというのも、

甥に実家で暮らしてほしいというのも、

子ども時代のままに残る実家を捨てがたい思いも本当でしょうが、

それこそ小学生の頃から“守り人”だった姉には、

母の執着もまた叶えてやらねばならぬ義務です。


とりあえず、

「院号大姉じゃなかったら化けて出る!」は

叶えるに難くない願いですから叶えましたが、

実家存続については、

それは難しすぎる宿題です。



もう三回は記事にした気がする、

三原順さんの『ロング・アゴー』。





読んだのは遥かに昔、

昭和57年『花とゆめ』掲載で、

店主24歳のことですが、

読んだそのときから胸に刺さっています。




守られようとする者は
いつ迄も守られ…
気遣おうとする者は
いつ迄も気遣い…
戦おうとする者は
いつ迄も相手に不足する事なく…

誰が温室の花を荒野へ置き去り
そこで咲けというだろう?
誰が野の花の為、
そこに温室を建てようとするだろう?
アニタが言った
「野の花はその分最初から強いので…」

それだけで…誰もが納得するのだろうか?

それなら誰があの世に…
地獄と天国とを求めたのか?
余程の事がない限り
この世では
見事な逆転劇などにはお目にかかれないという事か?

オレはまだ見た事がない!
役割通りに生きている人達しか
どうしても思い出せない!!

それは多分…
種子の時から
与えられる土地が決まってしまっている様に
鳥が玉子からかえる以前から
鳥である事を定められているように

鳥が鳥である様に


姉のことを言われた気がしました。





ジャックに「ジャック!!」と呼び掛け、

「どうした?ドナルド」と返され、

もう慰めを要しないジャックを見つめるロナルドは、

店主が経験してきた幾つもの場面に重なります。


そして、

「鳥が鳥であるように」という言葉は残りました。

姉について思うとき、

せめて仕事では姉のようでありたいと願う自身について思うとき、

慰めるように心の引出から顔を覗かせます。






ここ数日は

羽生選手に思うことが続きました。

スケーターの皆様を思うとき、

やはり「鳥が鳥であるように」は浮かびます。


現役としては、

ベテランと言われる年齢になられたとはいえ、

まだ27歳。

お若い羽生選手に、

こんなことを思うのは非情なようですが、

「フィギュアスケートをリードしていく存在」という役割が、

動かしようもなく定められているように思います。





何より、

どうしようもなく人心を引き付ける存在となられました。

その現役人生の終わり方も、

また、

「羽生結弦」であることを求められる。




鳥が鳥であるように

どんなに打ちひしがれて見えるときも

FLY YUZU!!

翼はその背にある。



姉は

今のところ

大事なく落ち着いているようです。

そうすると現金にも

また自身の思いに戻っていく末っ子です。



誰もが

その有り様のままに

人生を生きています。


そうであれば、

店主が思いますところの

もっとも「羽生結弦」が「羽生結弦」たる所以、

自らの選択を負って真っ直ぐに進む姿勢、

それさえ貫けたなら、

何も気遣う必要がなくなるのではないか。


納得のいく選択。

それが得られたなら、

迷いなく進んでいける方と思っています。



とりあえず、

自分も愚痴は控えめにし、

また日常を頑張らねば。



画像はお借りしました。

ありがとうございます。