薄汚れた外壁を
吐きかけられた吐瀉物が
打ち付ける雨に流れ落ちる。

雨に濡れそぼつ細身の体が
路地裏の真ん中に
真上にかかった満月の光を集めてゆらりと立っていた。

制服らしき半袖の白いワイシャツ、
黒のパンツ。
うつむく頬に後れ毛が張り付き、
眸は垂れた前髪の陰に隠れている。
無駄な力の抜けたしなやかな体は、
抜き身の刀を思わせた。

足元に蠢く者共の間を
ほのかに明るむ路地へと無雑作に歩き出す姿に、
急いで飛びつく男がいた。
くたびれた背広は泥に汚れ、
肩の辺りがほつれている。
目は青タンに膨れ上がる最中だ。