この小品は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。




大人がみな忙しい昼下がり、
洋館にぽつんと仔猫が眠る。



 お母さんはどこ?
 今日はお買い物だよ
 待っておいで

 たけちゃんはどこ?
 練習だよ
 終わったら戻るよ

 トムさんはどこ?
 訓練がある。
 ちゃんと部屋にいるんだぞ


 海斗は?
 海斗はね………ここにいるよね


小さな手は胸にある。
何を握ってる?
いい子だね
見せてごらん。
お前は
どこもかしこも
可愛らしく作り上げられた砂糖菓子のようだ。




すっと窓に影が差し
レースのカーテンが揺れた。
仔猫は寝息を立てる。


執務室の椅子は
空っぽだ。


お母さんは留守だ。
だから洋館は二人きりだ。



青い部屋の小さなベッドに
狼はそっと忍び入る。

ねぼけたままの仔猫は
くん!と
お鼻をうごめかす。

 ほら
 わかるな

小さな手から
ポトリと落ちる。
キラキラ翠の光が落ちる。


仔猫がすっぽり狼に包まれる。
小さな頭を狼に抱かれ、
仔猫は半ば夢の中で尋ねる。

 海斗?
 お仕事は?


仔猫の毛皮はするりと剥かれた。
狼は味見する。
前肢は砂糖菓子の肌を撫で上げ、
舌は翠をはさむ二つのピンクのとんがりを
ぺろりと舐める。




 
 これも仕事だぞ
 お前を一人にできないだろ?
 さあ
 何をしてほしい?


画像はお借りしました。
ありがとうございます。
 




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