この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。




篭に用意された
深紅の襦袢に純白の襦袢。
それが選ぶ始まりだった。



「いい子だ。」

脱衣場にも用意されている竹の寝椅子に下ろした瑞月は
うっとりと半眼を閉じ
睫毛が頬に影を落としていた。
トランス状態に入ったらしい。
この夏、
それはしばしばあることだった。


セツが慎ましく差し出す手拭いを無言で受け取り、
海斗は己の裸身を拭う。
その手拭いを戻すも無言。
そこに人あるとも見えぬ振る舞いは
その猛々しいまでに逞しい裸身に似つかわしい。



孤高の王の長身を鎧う筋肉の隆起が
ゆるやかに波打つのを
セツは惚れ惚れと眺めた。
機能美を極めた優美な肉体は
一個の研ぎ澄まされた武器であった。
そして、
王は焦れていた。



恭しく捧げ持たれた黒の単衣を無造作に羽織り、
続いて手渡された帯をぎゅっと締めると、
その手を伸ばす。





躊躇いがなさすぎる。
セツの目が僅かに細められた。



真紅の薄物がひるがえった。
取り上げた深紅の襦袢が
少年の胸から腹へと流される。
そのまま抱き起こそうとして鬼は止まる。




神の赤………。


黒き鬼が
赤き血を流す白き肌を見つめ言葉をなくすと、
小さな頭がゆらりと傾いた。
鬼の袖に頭は預けられ
その眸は閉じられた。


口許に浮かぶ笑みは
法悦を浮かべて凄艶。


巫は神の器。
そんな言葉がセツの脳裏を掠めた。
自らを貫く神を待つばかりの贄の白い裸身は、
今、
神ならぬ鬼に捧げられた。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。





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