海斗と瑞月が
ドアを抜ける前に
彼らが望むものの広がりを店主自身が妨げないように
書いて備えておきたく思います。




 生き始めてしまった人物たちが
 生きるために選択していかざるを得ず
 作者もまた悩み続けたのではと
 店主が感じてしまう物語のお話です。



本当はどうだったのか分かりません。
作者は既に亡くなられているからです。



三原順さん。
少女漫画家でいらっしゃいました。
昭和27年に生まれ、平成7年に病没されました。
42歳でした。
三原順さんの代表作「はみだしっ子」シリーズに思うお話です。





 「はみだしっ子」は、
 まだ語り尽くされていない。



そう感じながら
では
次は?
というと思い付きません。
ただ彼らはまだ生きていると感じてしまいます。






書き出した頃、
三原さんは
世の中に問いかけたいな
思うことを
四人の少年たちに託して書いておられたように思います。



その一つ一つに共感いたしました。
語り尽くせぬほどです。



物語が
もしかしたら
三原さんの手すら離れ
グレアムの心の叫び「ぼくは生きられない!」に
どうしたら生きられるだろうと煩悶する三原さんと
ぼくにはこれしか選べないと死に傾倒していくグレアムとの葛藤に
一回一回が進んでいくようになったのではないか。



そう思う回があります。
「山の上に吹く風は」
この回以降、
四人は数年ほどの離れ離れを経て
年長の二人は14歳ほどになります。







格好いい年長の二人、
グレアムとアンジー。

可愛い年下の二人、
サーニンとマックス。




初期、
「山の上に吹く風は」以前、
小さな彼らは
それは魅力的でそれぞれの存在感があり、
“次は
 どんな人間に出会うのだろう。
 彼らはどう答えを出すだろう”
番外編を楽しみながら本編が待ち遠しかったものです。







彼ら四人を巻き込み突き動かす柱は
最初はありませんでした。
長期連載になるとは考えていなかったのかな
などと考える店主です。

物語自身がうねりを持ったのが、
山の上に吹く風は 
でした。







人が死にました。



とても とても苦しい回でした。
店主は この回は苦しくて読み返すことはしていません。
人が次々に亡くなりました。

山へ向かう観光バスの運転手さん
悪天候の中、彼に無理に山へバスを走らせた銀行強盗
一人雪の中に消えた年老いた売れない歌手
…………遭難したはみだしっ子たちは無力でした。


様々に苦しかったです。



そして、
ピストルは弾を発射した。



マックスは夢だと思います。
サーニンはみんなを助けるんだ!
スキーで麓に向かっていました。



年長の二人が
その秘密を負いました。






人の死。


それを抱えて生きる。



グレアムは心を病み、
サーニンとマックスは行方知れずとなり、
アンジーはシドニーという三原さんが配した“大人”の助けを借りて
グレアムに寄り添って2年ほどが流れます。



シドニーは
物語から消えていきます。
おそらくグレアムを助ける役目が果たせない人物だったからかと思います。





オフィーリアは、
アンジーの心を支える温かさがありました。

が、
秘密を共有はできません。
ただグレアムとアンジーが年下の二人を案じていること、
探していることは分かります。



物語は
四人がまた共に過ごすようになる
というハッピーエンドに向かいます。







ですが、
それでは終わらない。
それは決着の付かない重荷です。



グレアムとアンジーは
それがなかったこととして生きることはできません。
アンジーは年下の二人を守る!グレアムの心を守る!!
を自分の使命として落とし所を得たように思います。



グレアムは
そうはできないことを
アンジーは知っていました。
だからアンジーはできたのかもしれない。
そう感じます。



強力な人物が登場しました。
四人を養子にしたジャックです。
ああ これで幸せになれる!!
そう思いました。





グレアムも一緒に
子どもになっていられる。


そんな幸せな番外編に心温まりました。



でも、




雪山の出来事は
秘密です。






アンジーが代わって言うこともできない。
折しもグレアム自身が重傷を負わされた裁判の中で
グレアムは自問自答します。
あれが殺人か!?
グレアムを刺した少年の弁護人なら
堂々と語るだろうと想像がつくからです。


グレアムは
法律上でどうであるかなどでは納得できません。
裁判も法律も馬鹿馬鹿しい。
弁護人の裏をかくグレアムの作戦は、
まさに法律なんぞ知ったことか!?
でした。






雪山で死んだ男には妹さんがいました。
グレアムは
彼女の手にかかって死にたかった。



そして、
ミス・フェル・ブラウンは
応じませんでした。


 あなたは
 誰かにそんな風に愛されたいの?
 私は
 それほど慈悲深くも
 愛情深くもないの


最終巻が見付からず
台詞が定かではないのですが、
彼女のそんな答えを覚えています。


 もう静かに
 何もなかったことにしていくしかない


虚脱したグレアムを追ってきてくれた
グレアムのバイト先の女性ダナ。
彼女がグレアムを抱いて
グレアムは温かいと言い笑顔になります。


体を重ねるという慰め


そこで今度こそと思うのですが、
グレアムは口を閉ざしました。 
もう金輪際
自分は人と関わりをもつまいというように。


最終巻が見つからない今、
その最後が記憶の中で曖昧です。
ただ
ジャック以上の救い手は考えられない。
 
そこに向かって
事態は動いたかな???
…………感じさせるグレアムの言葉で
終わったように思います。



グレアムが幸せになる。
その確証はなく、
もうマックスにも微笑まず
リーダーとして生きることを放棄したグレアムの
次のあり方は分からなかった。


そう感じます。
   


何回も
今度こそと感じた救いは
グレアムの中から沸き上がる疑問に
覆されていきました。



人は 
負った重荷と
どう向き合うのか

人の死には
何が相応しいのか   


もしかしたら、
四人が再会したとき、
ジャックが親となったとき、
ダナが温めてくれたとき、
毎回
三原さんは考えたのではないかと思うのです。


今度こそ 
今度こそと。


人物は思うようになりません。




えっと
はみだしっ子と比べるなど
おこがましい。

ただ
人物は思うようにならない。
そこに
黒猫の先も選択のしようがない展開もあるかなー
いや既に
“宿にて”からこっち流されっぱなしなんですが、
ほんと
どう切り抜けたら幸せへと進めるんだか
…………とんでもない話になったらごめんなさい
今の内に書いときたくて
お話をお借りしました。


はみだしっ子の物語の展開。
実際のところはどうだったのか分かりません。
ただシドニーたちのフェイドアウトとか
ジャックの造形とかに
何だか三原さんの“頼むからグレアム生きてちょうだい”の
必死のプロデューサー感覚を感じるのです。


プロデューサーが願っても
どうにもならんのが役者さん。
ほんと勝手に共感しています。


じゃ、
明日、いや今日じゃんか
今日は男子フリーの上に
仕事もあり
お医者さんもあり
とどめに長野移動もあるかもなんで
明後日からですが、
寸劇がとんでもない流れになっても許してやってください。


画像は三原順さんの「はみだしっ子」シリーズから
お借りしました。
ありがとうございます。



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