この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





耳朶を甘く唇がはさむ。
そして、
その唇は吐息をもらす。


 こんなにも
 求める

その唇は求める。


その吐息を
もう一方の唇が求める。
重なり合って舌が絡む。


はっ……んっ


せき上げるように
息を吸う間も惜しい。



その腕は回される。
深く回された肘はゆったりと波打つ背筋に
ぴたりと寄せられ、
二の腕は湿った肌を擦り合わせて軋む。


その指先は
律動を刻む背を引き寄せて
甘い爪痕を残す。


より深く
ただ繋がろうと
溢れる情はもどかしく求める。




唇が離れる。

つつーーっと
半ば開いたわななく朱唇に
情を滴らせ
白き顔はがっくりと反る。



胸が離れる。


白き花弁が咲き初むるように
ゆっくりと開き始めた。




逞しい胸板から
くくっ
身を反らせていく白い胸に
色づいた桜色が
ピクンと上を向いてそそり立つ。




細腰を抱く腕に抱えられて垂れ桜は
見事な花枝を垂らして
法悦に酔うようだ。



吐息と共に
細腰は
ぐっと寄せられる。




耐え兼ねて上がる吐息に
花枝は揺れる。


桜よ
垂れ桜よ
そは天を指して伸び
極まりて雪崩れ落ちる。



色づくその突起に唇が下りる。
甘噛みに
息を詰まらせて
花はしなしなと揺れる。






花弁は返される。


返されて
その背を辿る舌に震える。
甘やかな声が洩れ、
それは間断なき調べへと繋がる。



舌は描く
丸い小さな肩が描かれて
生まれる。


生まれて……溶ける。
辿られた舌に甘く溶ける。



舌は教える
触れられて発火する熱さを教える。
燃え上がる白い炎が
うなじから背を走り抜け
繋がる内奥は日を包んで震える。



その震えが愛しくて
日は月に口付ける。



 求める
 こんなにも求める



一つであるから求める
分かたれてあるから求める
唇を洩れる吐息までを求める



日ありて月輝く
月ありて日輝く
互いに互いしか埋めるものなき美しき天渡るものは、
恋うて恋うてありながら逢瀬は叶わぬ。




その逢瀬に選ばれし天の器は
互いを得て悦びに満ちる。
満ちて溢れる情はしとどに濡らす。



天に叶う器よ



その命輝かせ、
睦み合いて、
光を抱けよ



分かたれてありて
触れ合う悦びは世を満たす。



花弁は
ふたたび返される
交わす唇
繋がりし身をそのままに
しなやかな下肢は肩にかけられ
月は内奥を貫く日に震える。




出会えた
出会えた
この人に出会えた



 海斗…………。

 瑞月…………。


その人なればこそ
魂は一つになりて天の意を受け
地の気を集める。



翠にかがよう光の繭は
その内から白光を放ち始める。



光の宮に
天を指して柱が打ち立てられた。
どこまでも昇っていく。
日に抱かれ月は輝く。



巨木の梢に
ふうわりと光は浮かんだ。



巫が
静かに立ち上がる。
一糸も纏わぬ裸身の美しさよ。
静謐な中に清浄の気は満ちる。




長は控える。
一糸も纏わぬ裸身の威よ。
静謐な中に力は深き翠の水を湛えて静まる。



それぞれにある勾玉は
光を交わす。
胸にありて互いを繋ぐ翠の輝きよ




すっと巫は双腕を天へ差し上げた。



白き装束は清浄を表して
その身を包む。
長々と裾を引く赤に日の守りを得て
巫は天を振り仰ぐ。




後見の座に長はある。
白一色の装束に
その巫の清浄を共にして。






いやーーーー
ひーさーかーたーのーーーーー



かっ

舞台は煌々と輝いた。
新緑を現して
ホリゾントは緑の濃淡に彩られる。



ひさかたの光満ちる
ひさかたの天は広がる


言の葉は魂をもち
楽の調べは舞いに祈りとなる。



翻る袖が
客席の視線を引き付ける。


シャン!


ぴたり
巫は型をとった。



 新緑よ
 命輝かせ
 この地に満ちよ


舞いは始まった。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。

☆あまりの盛り上がりに
 章を切り替えます。
 なんか
 ふーんと
 そ、そうなんか
 とたじろいでます。


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