この小品は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







キキキキキキッ
ブレーキ音が軋みを上げる。


後部座席の俺は
両腕に伊東を抱いて
バランスをとる。


「大丈夫ですか?!」

「構わない!
 急げ!」




伊東は俺が預かる。
揺らすことはない。
スピードだけを考えろ。
そう命じた。


 伊東
 頑張れよ





何かがおかしい。
それは
伊東にしかわからない。
俺は急いでいた。





抜け道を疾走する黒い風は、
この街を斜めに突っ切って、
裏道から飛び出した。


目の前は病院。
測ったように歩行者用の信号は青だった。
驚くご老人に運転手は一礼し、
駐車場入り口に滑り込んでいく。
使える奴だ。







キキーーッ‥‥!

止まった車の向こうに
ストレッチゃーが待機していた。





「伊東
 ついたぞ。」

運転席から飛び出した警護が開けたドアを
伊東を抱いて降りる。





「鷲羽様ですね。」

看護士は年配の女性、
ベテランとわかる
きびきびした動きだ。



「お願いします。」

伊東を乗せるや
バンドで固定していく。


「鷲羽さん
 患者はお預かりします。
 部屋は五階
 556。

 上でお待ちします。」

看護士はキリッと
俺に言い渡し
運転手に頷く。



運転手は
エレベーターに飛び乗り、
「上で。」と
俺に頭を下げる。
ドアは閉められた。






駐車場に
俺は一人残された。
“お預かりします”か。
“上”にいく前にすべきことは何だろう。




‥‥‥‥病室か。




俺は
一人でエレベーターに乗った。



売店の表示は二階だった。
降りる。

矢印のまま進むと
横長なコンビニのようなコーナーに出た。




“入院グッズ案内”
入り口には
チラシがある。



時間がない。
指示通りにいこう。



「可哀想に。
 入院だなんて。」

「さびしいわ。
 せめて可愛いもので揃えてあげたい。」


若い夫婦は
品物を選び出した。

‥‥青か。
男の子だな。
ちょうどいい。



俺は夫婦の後に従う。



ミッキーにドナルド。
青ばかりになった。
何か‥‥‥‥。


「プーよ!
 優しい顔よね。」


本当だ。
プーのタオルを取り、
夫婦を残してレジに向かう。
パジャマに下着は
入院Lセットを並びしなに取った。



「お願いします。」


急ごう。
伊東が心配だ。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。

⭐闇の指先寸前
 売店の海斗
 ここ抜かせない。
 すみません。




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