この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





俺はこいつのものだ
2015-12-03 07:20:49
テーマ:クロネコ物語




ソファに抱き下ろされると、
真っ直ぐな長い黒髪が
肩に流れる。

くっきりとした目鼻立ち。




虎姫が
サガさんのお姫様抱っこで
登場した。



サガさんが一階まで降りる僅か2分弱に、

ヒールが取れて
ぐきっ、てなって
足をくじいて
手当てが必要になった……らしい。




『送ることはできない。
   手当てしたら
   タクシーを呼んでやる。』


医療キットを開けながら
サガさんが言い聞かせる。



《うん。
   ごめんね、
  迷惑かけて。》

殊勝に応える。


《あ、
   君もゴメンね。
   食事してたんだ。》

き、君か。
強気な虎姫だこと。




「…………。」

仔猫は黙って食器を片付ける。



『腫れはない。
   痛むのか?』

サガさんが
訊ねる。



《ぜんぜん。
   カイト兄さんに
   抱っこされたかっただけ。》

あっけらんと姫は応える。




『わざとか?』

眉をひそめて
サガさんが問い質す。



《ヒールはホント。
   高かったのよ。
   わざわざ折ったりしません。

   騙してごめんなさい。》

ピシッと姿勢を正して
姫が応じる。




仔猫がそっと居間を出ようとする。



『待て!』

サガさんの声がとぶ。



止まったまま振り向かない仔猫に
さらに声がとぶ。

『戻れ!』




しおしおと
仔猫は戻った。




サガさんは
黙って虎姫の横を指す。



ソファの端っこに
仔猫は座った。 




まあ、綺麗な子たち。
サガさん、幸せね。

『お前たち、年は幾つだ?』

《19です。》

「…………。」

まあ、
萎れちゃって。




まず虎姫に向かう。

『ここは俺一人の家じゃない。
   俺とこいつの家だ。

   ユキ、
   失礼を詫びるなら
   こいつに対してだ。』



はっ、とした虎姫が仔猫に謝る。

《ごめんなさい。》




『食べたのか?』

次は仔猫か。




「ごめんなさい。」

狼は仔猫の髪を撫で
額にキスする。



『食べなきゃだめだ。
体がもたない。』

そうよね。
って虎ちゃんどうすんのよ?!



『お前はもう来るな。
   今はシーズンだ。
   オフでもオフじゃない。

   迷惑だ。』



虎姫が飛び上がる。

《ごめんなさい!

  カイト兄さんが二人暮らしを始めたなら
   訪ねても怒られないと思ったの。
   はしゃいでたの。

   もうバカはしないから。
    怒らないで。》



狼は優しく応じる。

『怒っちゃいない。

   お前にもきついはずだから
   言っている。

   俺はこいつを守っている。
   体も心も守ると決めた。

   お前には見ていられないだろう。
   こいつも不安になる。

   もう来るな。』




虎姫は
しばらく
言われたことが分からなかったみたい。



虎姫の目がゆっくりと仔猫に向く。



仔猫は最初っから
サガさんしか見ていない。


《この子がいるから?》


『そうだ。』

狼は即答だ。



《この子が恋人? 》

『いや』

はい即答。



《じゃ、いいわ。》

『恋人以上だ。』



虎姫がサガさんを睨む。

『お前にはつらいと言っただろう。』

《見ていられるわよ。
  取り返してやるから。》



狼は少し哀しげに虎姫を見詰めた。
そして、
仔猫の手を引き、
立たせた。



狼は仔猫に囁く。

『きついのをするぞ。
  声は我慢しなくていい。
  聞かせてやれ。』



戸惑う仔猫が見上げたところを
狼は捕らえる。



たぶん……立ったまま責められるのは
初めてじゃないかしら。 



その口を塞がれ
深々と舌で愛撫を受け
仔猫は喘ぐ。



僅かな解放といつ果てるともしれぬ支配に
次第に喘ぎにまじる甘い声が
艶かしくなっていく。



綺麗とは思ってたけど
サガさんに抱かれる仔猫は綺麗だ。

夜の闇に隠されて
ここまでとは思わなかった。



膝から崩れる仔猫をしっかりと抱え
サガさんは
虎姫に告げる。



『俺を慕っている。
   体も心も
   支えてやりたい。

   俺はこいつのものだ。』


《でも、
   恋人じゃないのね。》




サガさんは無言だ。

虎姫は立ち上がる。

《帰るわ。
   足はなんともないし。

   カイト兄さん
   私、諦めないから。》



仔猫をソファに寝かせ
サガさんは
虎姫を送る。



ひっそりと横たわる仔猫に
虎姫は声をかける。

《私、負けないから!》



画像はお借りしました。
ありがとうございます。