この小品は純粋な創作です。
実際の人物・団体に関係はありません。




窓は
小さな雪の結晶を
幾つも幾つも凍り付かせている。

冬だ。

暖かな部屋。
暖色に包まれた調度。
遠いアジアの国の綴れ織りが
雪の向こうに
砂漠を越えていく夢を添えている。


雪が降る。
白く舞い降りる妖精たち。
この子と一緒にここに見る雪は
静かな隠れ家を祝福してくれるようだ。



 暖かい
 そして君がいる


このまま
時の終わりまで
降る雪を見つめていたい。



そうだ
この子には
たくさんの物語が詰め込まれている。
その一つ一つを語って過ごそう。


砂漠を揺られていく駱駝
目指す都
ベールに顔を隠す美姫



一人読んできた夢を
二人語れば
二人の前に夢は浮かび上がる。
楽しみだよ。



私は
そっと
待ち受ける。


君を見つめて
待ち受ける。


二人で辿る夢は
どんなに美しいだろう。






掛布は
私の体から君の体へと
緩やかに空気を包み、
その薄暗がりに君の裸体をひそませる。


微かに身を捩るのは
可愛らしい薄い茂みを隠したいからかい?


細い腕が
そっと曲げられ
その指先が頬に触れている。


くっきりと描かれた頬から顎へのラインは
どんな画家の筆も及ばない。
神の御業がこれをお造りになった。


綺麗な睫毛だね。
影を落としている。
その眸はどこまでも深い青だ。


君が目を開くとき、
この部屋は
また
一枚の絵画になるだろう。


降り来る雪が
窓を揺らめく白に彩っている。
くっきり描かれた艶めく白。
それを彩るのは
海を宿す眸とその唇だ。




君は
口づけで
眠りについた。


キスは気に入ったね。


蕩けるように
君は
吐息をつく。


「グレン………。」


そうして
私の名を呼ぶ。
その赤い唇がわななくように震えるんだ。


「お休みアベル。」

私は囁く。



深くなる寝息
優しく絡む細い腕


君はキスが気に入った。





物語を語ろう。
今の私たちが何なのか
君は
いつ気づくかな。


私は恋人だ。

恋人だよ。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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