この小品は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





お仕事は
楽しい。


海斗は格好いいし
ぼくは可愛いんだって。
田中さんが
すごーく褒めてくれる。



で、
撮影はいつも秘密なんだ。


“その方が見たとき
 驚いてもらえるんだよ。” 

田中さんは言う。




ホテルのおじいさんは、
中村さんっていう。
支配人さんなんだって。



中村さんは
いつも
駐車場で待っていてくれる。

“ありがとうございます!”
って
言うと
ニコニコする。


ホテルって
たくさんの人が働いてると
思うんだけど
ぼく、
支配人さんにしか会ったことない。



「ぼくたち、
 秘密のお客さんなんですか?」

エレベーターで
聞いてみた。


「特別なお客様ですよ。
 とびきり綺麗な瑞月さんと
 たいそう男前な総帥は
 他のお客様に見つかると大騒ぎです。
 わかりますか?」


夏なんだけど
ビシッ
と黒の服を着た中村さんが
ニコニコした。


中村さんて
痩せてて背が高い。
えっと鶴みたい。


ぼくは
海斗と中村さんに挟まれると
見上げてばかりいる。


エレベーターのドアが開いた。




「だから、
 この中村が隠して差し上げます。」

中村さんが
ぐっ
と背をそらした。


そして、
“さあ出て”
みたいに
手を伸ばす。
とっても偉い魔法使いみたい。



ぼくは
そっとエレベーターから出てみた。



後ろで
海斗は
魔法使いの中村さんと
お話してる。

隠れ方を教わってるのかな。



ホールを見回してみる。

すごく広いなー。
広いと思ったんだ。
やっぱり広いとこだった。

床や壁は
前と同じ。
同じお部屋に泊まるんだ、ぼくたち。




…………あれ?


サラサラと水の音がする。



秘密だね

秘密だよ


秘密だね

秘密だよ


かくれんぼする?

かくれんぼするよ




ぼくは
お水さんにお返事する。
どこ?



あっ
これだー。



竹の林が
できてるよ。
苔の緑が綺麗な大きな石が
たくさんあって
水が流れてる。



涼しそう。

中はほんとに涼しいから
忘れないように
今は
夏だよって
教えてくれる。




もう暑くて
ぼく汗いっぱいかく。
お母さんは
毎日
ちゃんと下着を出してくれる。

汗をかくから
下着は大切だって
お母さんは言うんだ。



でもね、
今日は
下着着てないんだよ。
お母さんじゃなくて
海斗が着せてくれたの。



ふんわりと頭から被せてくれたシャツは、
ボタンがない。

首の後ろにちょっとだけ開くとこがあって
小さなまあるいボタンで留まってる。


首回りはゆるく広がってて
二つ折りにした襟が
そのまま首回り。
ちょっと
女の子の短いワンピースみたいで
恥ずかしい。




ちょっと
くるんと回ってみる。

すそがひらひらする。


くるくるって回ってみる。

ふわって
まくれあがる。



下着着ないのって
楽しい。



ぎゅっ
される。



お水が

サラサラ

サラサラ

ささやくよ、



ひみつ

ひみつ





抱っこされる   
大きな胸に
すっぽり入っちゃった。

とくん

とくん

心臓がささやくよ、



ひみつ

ひみつ




カチリ

ドアが、開く。


パアッ
お部屋に灯りがともる。



まほうだよ

まほうだよ


さあ
ぼくたち、
もうかくれちゃった。




シュルン
シャツがなくなった。

ストン
お服は落ちた。


最初のお部屋で裸ん坊になった。





次のお部屋に灯りがともる。


「海斗‥‥‥‥内緒のことするの?」


「そうだ
 内緒だぞ。」

海斗は
とてもやさしかった。

内緒は
とても素敵だった。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



人気ブログランキングへ