笙の音色が
リンクを満たす。

天上から差し込む光は
羅陵王の優美な姿を
まざまざと
照らし出す。


華やかな縫い取り
金糸銀糸に
朱の色を纏い
王は天に与えられた美による支配を
その領国にあまねかせる。






仰ぐ顔には
冷たいまでの美貌。

王は
緩やかに
踏み出すや
剣をもち
型に従って剣舞を舞う。


そのステップは
軽やかに
優美な弧を描きながら
まるで空を行くかに滑らかだ。




その所作の一つ一つに
美は宿り
客席に集う観客は
その臣下となる。


我らの王の
なんと
お美しきことか!!


その美に殉じて
足元にひれ伏したい
その思いに
ただ見詰める者共は
客席を埋め尽くす。



優雅に
その袖をひらめかせ
その腕で天を地を抱き取りて
王は舞う。

回るスピード
軸をぶらすことなきままに
めまぐるしく変わるポジション。



臣下は
夢見る。
美しく優美な舞いに
ただ浸ることを。



王は
倦んでいた。


己の美に倦み
己を見る者共の目に飽いて
さらに
冴え冴えと美しい。


天上の美は
地上に並ぶ者なく
天上の思いは
地上にそれを知る者とていない。


舞い上がり
舞い降りて
その腕は広げられる。
もはや
己の美に自らも縛られるもどかしさに
王は
変化を望んだ。







龍笛が鳴り響く。

篳篥がざわめく。

氷上に
ふと止まる羅陵王の姿に
乱世の咆哮が
押し寄せる。



ふっ
王の手が
その花の顔にかかった。


その下に現れし不敵な顔


一転し
その剣舞は
激しくなる。


一閃
一閃
その切っ先にかかり
消え行く命が
浮かぶ。

龍笛は鳴り響き
鼓は
リズムを刻む。






天と地の間を疾走する魂



もはや
そこに
倦む眸はない。



その武勇に
臣下は
また
酔いしれる。



我らの王の
なんと
お強きことか!!


王は
ただ一人ある。

ただ一人ありて
美しい。



人にして人にあらぬ美に
人にして人を超える武勇に
孤独なる魂は
仮面を被る。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。

羽生結弦選手のフリーに
羅陵王の物語を重ね
幻想を描きました。