この小説は純粋な創作です。
実在の人物、団体に関係はありません。





器用だ、こいつ!
瑞月から
次々と衣装を脱がしていく手際良さ!!

思わず
軽口が出た。

「明日から
   お母さんになれそうだな。」

「四年間やってましたからね。」

「ひどーい
   たけちゃん!」

「パジャマ脱がせて
   下着投げてやって
   ボタン留めて
   ネクタイ締めてやってたろ?」

「一人でできたよ!」

「日曜日にね。
   朝、
   遅刻しないで連れてくなら、
   一人でなんか
   させられなかったじゃん。」

あやしながら
尖らせた唇をキュッと拭いてやる高遠。
文句を言いながら
立ったまま 任せっぱなしの瑞月。


こういうとき、
四年間って
なんか
手が出せない。


「おい
   あと10分だぞ。」

「だいじょうぶ。
   総帥じゃないから
   余裕あります。」


………総帥か。
待ってるだけの俺は、
ぼんやり考え始める。

エレベーターの扉が開いたとき、
瑞月は総帥に寄り添っていた。
えっと、
何か違ったんだ。
いつも
見せ付けられてきた風景なんだけどな。



思い付かないまま
真っ白な着替えを眺める。

玉葱みたいに
剥いても剥いても下があった白服は
ようやく終わり近い。

えっと、
終わり近いってことは…………。


わっ
こら高遠!!

俺は
慌てて
目を逸らした。

け、警護として、
見てなきゃ駄目だ。

まさか
後ろは向けない。
で、
でも、
わかってるけど、
フツー気にしてくれないかな。


目の端に瑞月の真っ白な裸。
衣装の白とは
また違う白だ。

違う!
見てなんかいないぞ!



「み、瑞月、
 俺、見てないからな。」

上擦った俺の声。

「さあ、
   自分で着てて。」

落ち着き払った高遠の声。






高遠!
お前、
ああもう、
飲みに連れてって説教したい!!


お前、
だいじょうぶか。
いや
そんなにだいじょうぶでだいじょうぶか?!

四年間が羨ましくなくなってきた。


高遠が器用に脱がせた色々を畳んでいく。
瑞月がのんびり下着をはいたり着たりしていく。

「あ、
 トムさん、
 何か言った?」

ほぼ安全な姿になった瑞月が
俺を振り向く。

下着姿で真っ直ぐ見つめられるのを
安全っていう俺の感覚も
そろそろ危ないかもしれないな。


「いや、
 何でもない。

 急いだ方がいい
 ってことさ。」

笑顔で答えておく。
白Tシャツ一枚を
超ミニスカみたいに着た瑞月。

可愛い。
すごく可愛い。
よかった。
まだまだ健全だ。
ズキンとするほど可愛いや。


「ほら、
 顔を洗うよ。
 お化粧落とそう。」

「さっき
 拭き取ったよ。」

「肌が荒れるよ。
 おいで。」


高遠が
瑞月を洗面所に連れていく。


これはこれで不思議だ。
お、俺も少しずつ近付いてるらしいこの境地は
何だろう。


裸だろうが、
据え膳状態だろうが、
動じることなく自然体でいられる境地だ。


………警護の奥義……かな。
守る
守る
如何なる時でも守る。


そうだな。
俺たちは守らなきゃならないんだ。
全てのことから守る。
とりあえず、
パーティーへの遅刻からも守らなきゃ。



あっ……。
そうだ。
違うところが分かった。

いつもと同じ風景の違和感は
守り人の違いだ。

瑞月が寄り添ってるって
感じたからだ。

なんだか
瑞月が総帥を守ってるみたいだった。


「わぁ
 気持ちいいよ。
 ありがとう
 たけちゃん。」

洗面所から甘い声が聞こえる。

「さあ、
 少し急ぐよ。」

「うん!」


可愛いなぁ。
鉄板の可愛さだ。


瑞月が守る?
無敵の総帥を?

変な感じだ。
でも、
そうだったんだ。



瑞月、
俺の天使、
お前は俺を闇から守ろうと
キスしてくれた。
お前のキスで俺は救われた。


ときどきお前は強くなる。
崩れ落ちそうな心を
お前は救ってくれるんだ。
全然自覚してなかったけどな。

少し自覚したのかな。
自分が支えるってこと。

寄り添うお前は、
とても綺麗だった。





洗面所から二人が戻る。
俺はワイシャツを手に迎えた。

「瑞月、
 これ着て。
 ネクタイは俺が担当だ。

 高遠、
 衣装畳むの続けてくれ。」


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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