黒猫物語 阻止せよ エピローグ
NEW! 2016-09-29 07:23:41
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







闇の中に
吹き過ぎる風が
生暖かい。



嫋嫋と途絶えることなく
風に乗り
洩れ出づる啜り泣き。



や、
や、
いやあああああああっ


闇を裂き
悲鳴が洩れる。



帳の中に
無惨に貪られる
白い贄が
痙攣を繰り返していた。




息を引く音しか
もはや
唇から洩れてこない。




「ほおら、
お前は
こんな仕置きにも
淫らに感じる。」





男は
無慈悲だ。



ああああああああっ



「これはな、
御神木だ。

我らの祭る神が
お前を愛でておられる。


嬉しかろう?」


白い胸に
漆黒に濡れたように輝く勾玉が揺れる。



「この石は
お前だ。

ほら
見てごらん。」



ぽっかりと
空ろに開いた眸が
石を捉え
そして、
見開かれた。



「く、黒…………。」



「これが
本来の姿なのだよ。

お前は
神に愛でられた。」



「は、母者…………。」


「お前の母者はな、
命を召された。

お前を隠そうとするから
神の怒りに触れた。

哀れよの。」



絹を裂く悲鳴が
贄の口いっぱいに溢れた。


「さあ
お前は神のものだ。

音色を調えよう。」


闇は
さらに濃く
帳を
十重二十重に囲んでいく。


あえかな啜り泣きも
狂おしい悲鳴も
ただ
闇の中に閉ざされていった。







……………………


さやさや


さやさや


さやさや


さやさや



風が葉っぱを揺らしてる。




さらさら

さらさら

水の音がする。





眩しい

キラキラしてる。



木漏れ日だー。

僕、

林の中にいるよ。




池?

池が見える。




あれ?

海斗だ!

あそこにいるの、
海斗だよ。



不思議な服。
白い上着、
袖の上が膨らんでる。

因幡の白兎の大国主命みたい。



僕、
隠れてるんだ。



なぜ隠れてるんだろう。



僕、
何しようと
してるんだろう。




近づいてく。

近づいてく。




もう
あと少しだよ。



キャッ

海斗!

海斗の顔が目の前!!


………………海斗?

怖い顔………………してる?





瑞月!!


パチッ……。


僕、
目を開けた。

ベッドに僕はいて、

海斗が覗き込んでた。



優しい


優しい海斗の顔



よかった

海斗は
やっぱり優しい…………。




僕は海斗に抱っこされる。


ほら安心

安心だよ




僕、
夢を見たんだね。

よかった……、
よかった夢で。




綺麗なとこだったけど…………。

な、なんか最初、
すごく怖い夢だった気がするけど…………。

覚えてないや。




ああ
海斗の胸だよ。

僕、
幸せだよ。



画像はお借りしました。
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