黒猫物語 阻止せよ 17
NEW! 2016-09-25 20:12:38
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







保健室って
ベッドある。

でも、
お預けだから
ちゃんと我慢したよ。


たくさん大人のキスもらった。
海斗、
トムさんにキスしたの怒んなかった。


怒ってないけど
お仕置きなんだって。


僕、
キドキする。



もう、
ここ出なくちゃ。

僕、
ワイシャツのボタン、
ちゃんと留めるね。



あ…………。

海斗の手が、
ボタンを
留めてくれる。


海斗の手って、
大きい。

大きいけど
指は細い。


さらっ

細かなことしてみせる。



「海斗って、
どうして
そんなに器用なの?」


僕は聞く。


ボタンを留めた海斗は
真っ正面から
大真面目に言うんだ。


「お前を
啼かせてやるためだ。」


僕、
真っ赤になった。



あっ……そうだ!

「海斗!

伊東さんは?」


優しい指が
頬に触れる。


「見舞いに行こう。

お前が頑張ったんだ。
意識は
もう
戻ってる。」



僕たち、
病院に行くことになった。



かっちゃんは、
お母さんと帰っていた。



マサさん
たけちゃん
トムさんが
水澤先生と一緒に
校長室で
待っててくれた。


「かっちゃん、
心配してたぞ。」

「うん」

たけちゃんが
言ってくれる。



「あ、あ、あの…………
俺、
わかってますから。

えっと……
気にしてませんから。

ただ
すごく嬉しかったです。
すごく感謝してます。」

トムさん、
丁寧語だ。

海斗がいるからかな?


「トムさん、
僕も嬉しかった。
トムさん、
一歩も退かないんだもの。」

僕もありがとうをした。

トムさん、
真っ赤になった。

でも、

海斗が〝ご苦労〟って言ったら、
サーっ

青黒くなった。


だから、

〝海斗、
キスしたの
怒ってないって〟

こそっ

耳打ちしたら、
今度は
カチコチに
固まっちゃった。


変なの
トムさんたら。




「さあ、
瑞月ちゃんの顔を見られたし、
引き揚げるか。」


マサさんが
頭を撫でてくれた。

マサさんは、
5階から動けなかったんだって。


「こちらから中に迎え入れた場合、
本体まで迎え入れてしまいます。

危なかったですね。」

水澤先生は
にっこりした。

先生は
なぜ
色々知ってるのかな。


かっちゃんは
なぜ
あんな歌を知ってるのかな。


「私と渡邉さんは、
不思議な夢を見るんですよ。

その夢で
学んだことがあるんです。」


僕の顔は見えなくても
先生は
何でも分かるんだ。


えっと、

「先生は、
深水って
いうんですね。」

「そのようだね。
渡は
海斗さんと
いつも話してたんだけど、
名前を呼んでくれないから
知らなかったよ。」


先生は
悪戯っぽく笑う。


そっか。

海斗は、
少し、
言葉が足りないんだ。


トムさんにも
怒ってないって
言ったげればいいのに。


「海斗、
ね、
僕とトムさんがキスしたの
怒ってないんだよね。」


僕、
海斗に言ってみた。


グウッ

……え?
トムさん?


トムさんが
変な声出した。


マサさんが
トムさんの肩を叩く。


「鷲羽さん、
怒ってないのは
確かですね?」

マサさんが
優しく
海斗に聞いてる。


「……はい。

確かです。」


海斗?
ん?
……どうしたの?


赤くなった?


「じゃあ、
今夜はこいつをお借りしますよ。

いい酒をもらいましてね。
一人じゃ詰まらねぇ
って
飲み仲間を探してたんです。


おいトム!
お前にゃ勿体無いが、
飲ませてやるぜ。

じゃあ
鷲羽さん
お先に失礼しますぜ。

たける!
瑞月ちゃん!
また新学期な。」


マサさんは
トムさんを引き摺って
出て行っちゃった。

「勝駒っていうんだ。

お前、
そういうの好きだろ?

元気出せ!

俺が見ててやる。

……………………。」



マサさんが
すごく
楽しそうだ。


「瑞月君!」

先生に呼ばれた。

「はい!」


「今日は
大切な学びがありました。

何だか分かりますか?」


「はい!
闇は、
心を攻めてくるから、
自分がちゃんとしてれば、
怖くありません!

トムさんも
たけちゃんも
意地悪されても
変わりませんでした!」


先生が頷いてくれた。
嬉しい!

「瑞月君は、
いつも
周りの人の心に添うことが
できます。

今日のキスは、
闇との戦いのポイントでした。

君は、
西原さんの真心に
応えましたね。

もう一つあります。
分かりますか?」


え?
えっと
えっと

「海斗は
ときどき言葉が足りないです。

意地悪に見えちゃうし、
怖がられちゃいます。

僕、
海斗の分まで頑張ります!!」


先生が
アハハ!
って
笑い出した。


アハッ
アハッ
アハハハハハ…………。


え?
先生?

先生笑いが止まらない…………。

「あ、
瑞月、
お前は……頑張らなくていいよ。」

たけちゃんが
言う。


「なぜ
僕じゃダメなの?」


「西原さんも
みんなも
お前に気苦労かけたくないからさ。

お前は
みんなをフォローすればいいよ。

海斗さんには
咲さんがいる。

咲さんなら
安心だろ?」


「…………うん。」


それは
そうなんだけど、
僕も
心配なんだよね。





「水澤先生、
もう
よろしいですか?

病院に向かいたいと思います。」


海斗が
口を開いた。


だいじょうぶ
やっぱり怒ってないや。


「あ、
すみませんでした。」

先生が
ハァハァしてる。


「瑞月君、

もう一つはね、
〝あなたなんか知らない!〟だ。

誰にでも寄り添える訳じゃない。
絶対譲れないものはある。

よく言ったね。

拒否することを
君は学んだよ。

闇との戦いでは
一番大切なことだ。」


「はい!」


褒められた。
水澤先生に褒められると
すごく嬉しい。

心がポカポカして
自信がつくみたい。



そうだ。
忘れないよ。

僕は
海斗のものだ。


それは、
とても大切なことなんだ。



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