黒猫物語 小景 裸ん坊
NEW! 2016-08-30 09:45:42
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





お味噌汁の匂いがする。

お布団が温かい。

まだ眠いみたい。




でも、

なんか眩しい。


眩しいよ。




あれっ?


空!

空が見える!


雲が動いてる

白い

ふわふわ



すごーい

このお部屋

お空が見える。




お味噌汁の匂い…………。

海斗がご飯作ってる!

行きたいー

行かなきゃ

行かなきゃ



何着るの?

やだ!

服が見つかんない!



僕は

そろそろと

階段を下りていく。



誰もいないから…………いいよね。



階段は

玄関のとこに繋がってる。

パタパタ小走りになる。

なんか恥ずかしい。




リビングに滑り込む。


ふー
って息をつく。



お庭が綺麗。

僕、

お庭に入り込んだみたいな気分。


素敵なリビング。



お花も

お日様も

ニコニコしてる。



さあ
キッチン行かなきゃ






「……すみません。

人選を間違えました。」


「生の切り身じゃ
話にならん。

この際
鮭フレークで構わない。
頼む。」



い、伊東さんだ。


僕、
裸ん坊だよ。


あ、
あ、
あ、
きゃっ…………。


僕は
カーテンにくるまった。




「あ……失礼しました!」

伊東さんが
バタバタ走ってく音がして、
パタン!
ドアが閉まったみたい。


僕、
僕、
出らんない。



カーテンが
そっと引かれ

僕は
一生懸命くるまる。



「出てきてごらん。」


海斗が
呼んでる。


「い、いや!」

恥ずかしいもん



「伊東が
戻ってくる。

さあ」



やだやだ

裸ん坊なんだもん



くるっ
てカーテンが巻き返されて、
僕、
海斗に抱っこれてた。



「だ、誰も来ないと思ったの。」


頭にキスされ、
バスタオルを巻かれ
僕は軽々と抱き上げられる。


「可愛い。

お前は
ほんとに可愛いよ。」


僕は
もう一度階段を上がってく。
海斗の抱っこで上がってく。



二階のお部屋に
クローゼットがあった。



「自分で選べるな?」


海斗は
一人でまた下りていく。


クローゼットを開けてみる。

ああ
海斗のスーツだ。

幾つも並んでる。


僕は

クローゼットの中を

歩いてみる。



海斗……

海斗……

海斗の匂い



うっとりする。

鏡に

僕が映る。



ああ
僕、
もう知ってるよ。


海斗が
付けてくれたお印だよね。





花びらが

たくさん散ってる。


どの花びらに

どんな声を上げたか

僕、

覚えてる。



海斗のものだから

僕は海斗のものだから


僕は海斗に奏でられる。




花びらが

熱くなっちゃう



だめだめ


僕、

服選ばなきゃ。



白いシャツ
黒いカーディガン



が、学校って
なんか白と黒な気がしちゃう。



僕は
また階段を下りていく。



「失礼します!」

太い声


また
伊東さんと
鉢合わせちゃった。



もう平気


服着てる


伊東さん
いい人だもん



あれ?

伊東さん真っ赤。

四角いお顔が真っ赤だよ。



「おはようございます」

僕は
挨拶する。


「お、お、お、
おはようございます!

先程は
失礼いたしました!」


伊東さんは
また
走って行っちゃった。



キッチンに入る。

お皿に焼き海苔。

海斗が

お握りを握ってる。


大きな手に
ギュッ

三角お握りが
小さく見える。




僕のお弁当だ!


わーい

「海苔を巻いてみるか?」


「うん!」


手を洗ってきて
並んだお握りを
そっと
持ち上げる。


あれ?

なんで?

海苔が三角になっちゃった。


「斜めじゃない。

真っ直ぐに置いて
お握りを置いてごらん。」



斜めのお握りを
海斗が
横に寄せる。


あとのは
上手にできた。


僕、
なんだか
できること
すごく増えた。



お握り
たくさんある。


朝のご飯も
お握りなのかな?


僕、
いつの間にか
首を傾げてたみたい。



「俺も
昼は弁当にする。

二人分だ。」


…………な、なんかドキドキする。

僕、

お昼、

海斗と同じなんだ。



「おいで。

朝は別に作ってある。」


僕、
海斗に抱きついた。


海斗

僕、

学校頑張るね。


海斗


僕、


お昼、


すごく楽しみだよ。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。