黒猫物語 浮舟の選択 小景 王の独白
NEW! 2016-08-19 17:18:23
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





透き通る肌に
勾玉の翠が煌めく。


こうして
近づければ
俺たちの絆は光に確かだ。



お前は、
激しかった。
傷つけていないか
そっとあらためる。



ほっと
ため息がでる。


お前は
温室の花だ。
風に耐えぬ儚さに
目を離すことなく守ってきた。


なのに
お前は自分を顧みない。



もう
あんな無茶はさせない。
可哀想なことをした。


お前は
繊細な花だ。
無惨に花弁を毟る真似はすまい。




ああ
だが、
羞じらいに流れる
お前の涙が浮かぶと
俺は狂おしくなる。


屋敷奥深く
お前を閉じ込めてしまいたい。
息絶えるまで
お前を責め抜きたい。


今日
何回その姿を思い描いたか。

そうした長もいたという。
それどころか………………。





石が繋ぐ二人は
求め合う。


財も
力も
関係ない。


どうしようもなく
惹かれ合い
分かちがたい繋がりに
結ばれる。



そうした二人に
石は反応するんだろう。





そして、
ときに命を奪ってきた。
「石が」
ではない。
「思いが」
だ。





俺も分かる。
石をもつ前から
何度も
何度も
思い描いた。



お前を責め殺す瞬間を。

お前と迎える死を。



だが、
石よ、
俺は変わり種だ。




俺は
瑞月のために
鷲羽を求めた長だ。



鷲羽の財も力も
興味はない。



お前もだ。
お前の力など
信じてはいなかった。


ただ、
瑞月を生かすために
約束の証と
したかっただけだ。



お前に灯りが点り、
闇を確かめ、
今は
その力も意味も
分かりかけている。


お前は
瑞月を生かしてくれた。


感謝している。


そして、
おそらく、
お前は
俺を映す。


瑞月が映すのは
俺の真実だ。


お前は
もっと単純だ。
願いに反応する。


瑞月を苛みたい俺を
お前は映した。



そう。
確かに
その俺もいる。

瑞月には
誤魔化せない。


だから、
責めた。



だが、
俺は、
流されはしない。


始まりが
違う。


石よ
俺の願いは
………………。






海斗……

愛らしい声に
夢現に呼ばれ
その髪を撫で囁く。



ここにいる


応えて絡み付くお前を
俺は抱き寄せる。




愛しい。
愛しくて堪らない。



お前とともに
生きてみせよう。


それが
俺の願いだ。



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