黒猫物語 小景 朝食の時間に
NEW! 2016-03-10 05:09:43
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






瑞月は羞じらう。

屋敷に来て
咲さんの母性に包まれてからは
以前にも増して
幼くなっていた。




周りの愛を
一点も疑わずに受け止める。
己の感じたことを素直に口にする。

赤子のように
抱かれる悦びまでも隠さなくなっていた。




それがどうだ。

上げる声に羞じらい
微かに眉をひそめ、
お前は
その声を
飲み込もうと耐える。




朝陽に余すところなく照らし出され
わずかに胸を覆い隠そうと
折り曲げて胸に畳まれた細い腕がいじらしい。




その腕にキスして
そっと胸を開かせれば
薄紅色の花びらを一面にあしらった象牙の肌が現れる。




「瑞月
   世界で一番きれいだ」

昨夜の愛の刻印を
一つ一つ指でなぞりながら囁けば


うなじまで染めて
横を向く。




その色に映えて
花びらの色は深まり
肌は透明度を増していく。



俺は
耐えきれない。


「可愛い」

頬に手を添え
唇を塞ぐ。




体の芯まで震えるキスを受け
瑞月の呼吸は切迫する。

肩にかかる指は
痛いほどに食い込む。
感じすぎて怖がるお前が
新鮮で
いとおしい。



初夜が明けて
悦びを学んだ瑞月は
初々しく
可憐だ。



白い足にかけられた
俺の手に
お前は震える。


瑞月、
お前は俺の愛撫で掻き鳴らされる
美しい琴だ。


さあ瑞月、
情を交わそう。
お前の音色を聞かせてくれ。






「来ませんね」

豪君は
つぶやく。



「行こうか」

俺は誘う。




「瑞月、
   だいじょうぶでしょうか」

豪君は階段を見上げる。



「海斗さんは
   連絡を入れている。

   考えあってのことだ。」

俺は慰めた。
俺たちのもう一つの初夜だ。
短い言葉に海斗さんの喜びは伝わった。



豪君
瑞月は幸せだ。
それは間違いないよ。






「今朝は
   訓練を任せる。
  俺は行けない。」

そう言われた。



……昨夜は8時には寝室に入っていく瑞月ちゃんを確認した。
この時間から?
そう思った。



チーフは
瑞月ちゃんをどうしたんだろう。
もともと華奢な瑞月ちゃんだ。



いや
まさか
チーフは加減を知っている。
この上なく可愛がっておいでだ。
壊しはしない。

そうだ
瑞月ちゃんが発熱したのかもしれない。

………………。




「全員部屋を出ろ。
  5分でいい。」

部下は外に出した。
モニターを切り替える。




やっぱり!
チーフだめです!!


瑞月ちゃんは昨夜から
あなたを受け入れているんでしょう?
壊してしまいます。




瑞月ちゃん?

これ…………瑞月ちゃんではない。
いや
瑞月ちゃんか。



美しい。
輝いている。
羞じらっているのが魅力的……いやまずい。

そんな意味で確認したんじゃない。




チーフ
その子は誰ですか?

あなたが抱いてるんだから
瑞月ちゃんですよね。





佐賀さん
瑞月ちゃんを捕まえたのかしら。

とにかく
今朝は二人で過ごすのね。



いいわ。
佐賀さん
許してあげましょう。

うまくいった。
そういうことでしょうから。





さて
ご飯をどうしようかしら。

瑞月ちゃんには
おじやにしないとね。
ドアの外に
置いたげましょう。




佐賀さん
あなたの責任です。
瑞月ちゃんに
ふーふーして食べさせたげなさい。

今日は学校に連れてくんです。
ちゃんと回復させてもらいますからね。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。