黒猫物語 記憶7
2016-02-27 18:13:08
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






ここ10年の大まかな流れから
じいさんが関わったものを確認する。

気づけば
1時間を大きく越えていた。




拓也は
しきりに促す。

「瑞月、
   一人ですよ。

   そろそろ
    帰らないと
   本当に危なくないですか?」



「だいじょうぶだろう。
  一人で寝かせはしない。」




いや
寂しがっている。
分かってる。

俺の整理がつかない。
瑞月を危険にさらすことになる。
だからだ。



拓也が
まとめを急ぐ。
もう考えてあったんだろう。

大した奴だ。




「僕、
   決めました。

   今日言われた通りの役目で
   当分はいきます。

   じいさんのやってきたことは
   本当にすごい。

    ただ
    じいさんだから
    できてきた。

    考えているのは
   発展的な終わらせ方です。

    あるいは
    明確に目標を定めて
   その達成までをやり遂げるか。

    どう考えますか?」



「お前は
   これからだ。
   何もかもこれから始まる。

    俺は瑞月だけだ。
    家庭をもつつもりはない。
    咲さんもだ。

   自分の家庭をもちたくはならないか」



「そんなに悲観的には
   考えてません。

   鷲羽の血は絶えています。

   それは
   最初の時点で
   受け継いでしまった重さのためですよね。

    今は逆に
    それが身を守ってくれている。

    上手くやりましょう。」



「じいさんに
   話してみよう。

    決めるのはじいさんだ。
    俺はそれに従うさ」




瑞月…………。

お前は思い出すだろうか。
そのとき
お前は
また閉じてしまうだろうか。


俺は
お前を守って生きるだけだ。
守れるだけの強さをもちたい。
それはこの屋敷を守ることで得られる。




「もう戻らなきゃだめですよ。
   咲さんもいません。
   瑞月は……泣いてますよ」





ビーっビーっ
突然の警報
伊東だ!


「出るぞ!
  伊東だ。」




地下室から駆け上がり
飛び出す。



「報告!」

「すみません
   瑞月ちゃんなんです

   部屋にいません

    風呂に入るのを確認してから
    誰も見てません。」



風呂場だ!



「もう2時間たちます!」

伊東が叫ぶ




戸を開ければ
突っ伏した瑞月がいた。








そっとコップをあてがえば
お前は
ごくごくと飲み干す。



点滴をしてある。
経口での摂取もできた。
一安心だ。



自分が風呂場にいたことは
覚えているようだ。

拓也も気づいていたが
瑞月は
自分の危険に対応する力が弱い。

空腹に
傷の痛みに
気温の高低に

自分で反応できずに
倒れる。




明かりを小さくし
瑞月を抱いて
じっと
考える。


俺は
どのくらい
瑞月を愛せるか

俺は
どのくらい
瑞月に溺れているかを




小さな声がする。

「海斗…………あのね、
   どきどきさせて」




この子を
泣かせてばかりの俺だ。
何回言わせてきただろう。
僕の一番は俺だと。


それを信じてやれば
済むことだ。




追い詰めて泣かせては
後悔して
二人で燃え上がり
陶酔する。



ただ愛してやろう。
それでいい。




小さな温もりをくれる瑞月
その小さな額に
唇を寄せる。


愛してる
愛してる
俺の瑞月、


俺のキスで
眠らせてやる


伝わるか
瑞月




「抱っこじゃやだ」

甘えるお前は
せがむ。


布団と俺の体でできた穴蔵に
いたずらな仔猫がいる。

パジャマを脱がせてやれば
俺の手をすり抜けて
ぴたっと寄り添う。



華奢な足が
蔦のように絡まりつく。
可愛いキスが
もぞもぞと上がってくる。

瑞月、
俺の仔猫、
くすぐったいぞ。




ぽかっと
布団から顔を出すお前。
愛らしい仔猫は
大人のキスで
さらに熱くせがむ。



そっと
いつもの薬を手に取ると
お前は
嬉しそうに
背中を向ける。

身を進めれば
ただ俺にしがみついて
悦びに震える。



甘えるお前に
ただ応えていよう。
幼くて
可愛い
俺の仔猫


愛している



画像はお借りしました。
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