黒猫物語 小景 舞う雪
2016-02-09 22:08:33
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。
この回は「みんなの役割」の前に入るものです。








洋館からは
お勝手口が近いし
ご飯食べるとこだし

海斗も
こっちから来るよね。




道しか見えない。
雪が舞って明かりの中にくるくるってしてる。


来るかな
来るよね
あの角から
海斗が出てくるんだもの
待ってなきゃ




お庭に木がいっぱいで
曲がり角の向こうは全然見えない。

ほっぺに雪がくっつく。
髪に雪がついて
足元が
まだらになってく。






瑞月は
まだ泣いているだろうか?

俺の手を拒み必死に抗ったお前も
素直に身を任せながら
啜り泣くお前も
どうしようもなく愛おしい。




俺に恋をしたのか
瑞月
お前の激しさに
俺は惑わされるばかりだ

お前の笑顔が見られたら
俺は
それだけで
幸せだった。

お前が
俺に恋をするなんて
想像するのも怖かった。




天使のようなお前
花のようなお前
誰かに
熱く思いを捧げるお前を想像しては
気が狂いそうになる日を重ねてきた。




俺の言葉一つ目線一つに
お前が揺れている。
信じられない。
今は
幸せで目が眩む思いだ。





雪が舞っている。
急に寒くなった。
母屋は
林に隠れて見えない。

海斗さんは
黙って先を行く。



不思議な人だ。
地下の書庫に入った
どこに何があるか
海斗さんは
頭に入っていた。

あれほどの内容を
この人は諳じている。
警護すべきものを把握しただけだ……か。



おじいちゃんの本命は
佐賀海斗だったに違いない
海斗さんは世直しに興味はない
少なくとも今は。





角を曲がった。
いきなり海斗さんが駆け出す。



目に飛び込んできたのは
転がるように駆けてくる瑞月の
真っ白なセーターだ。

セーター?!
まったく!!
君は寒くないの?



海斗さんは
瑞月を抱き止めるやいなや
自分のコートに包み込む。


真っ黒な狼の胸元に
幸せに微笑む白ウサギが
ピョコンと頭を出している。




一生懸命話してるね瑞月
ごめんなさいを
しているのかな?




近づいたときは
こんな感じだった。



「僕、
   海斗に嫌われたら
   死んじゃうかもしれない……」

海斗さんの胸に
ぴったり頬をつける瑞月ちゃん



『嫌う?
   忘れられたら
  どんなに楽だろうと
   忘れようとしたこともある。

   できはしなかった。

   お前を手放す日を覚悟し
   ただ守っていくと
   決めていた。

   それでも
   お前の寝顔を見ると
   何度奪ってしまいたくなったか
   わからない。

    会ったときから
   俺はお前のものだ。

    いつも
   お前に恋をしている。』




熱いね
お二人さん

近づいた俺を見て
瑞月が
無邪気に
声を上げる。



「拓也さん!
   ごめんなさい
  僕、
  勘違いしてたの。」



(もう誤解は解けたのかな?)


「うん!」


『雪が舞ってる。
   中に入るぞ。』



瑞月は
咲さんに話したことを
話しながら
歩き出した。




ハラハラは恋のエネルギーかぁ。
流石です 咲さん!

半歩遅れて
俺は
二人についていく。

純愛ストーリーはこれからが
楽しみなところだ。




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