黒猫物語 小景 アドバイス 咲
2016-02-09 17:30:30
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。








囲炉裏のお部屋は
いつも暖かい。
お気に入りよ。



咲さんたちの仕事も
もう仕上げ時にかかっている。
瑞月たちには
夕食で会えるわね。




元気いっぱいに
恋人モードで帰国したようじゃない。
咲さんたちが嬉しそうだわ。





……あれ?
瑞月じゃないの。

まあ 一人で!




うーん
ちょっと萎れてない?




「クロちゃん
   ただいま」



瑞月は
私を抱き上げる。
こういう時に
私を使うのよね。

ねらいは……咲さん?





咲さんが
皆に目で合図する。
女性陣みんなでニッコリ。

咲さんが
土間から上がってきた。





〔一人で来たのね。
  佐賀さんは?〕


「ご本のお部屋」


〔そうなの。
   さびしい?〕


「…………ううん。」




ちょっと間をあけて
私を抱えたまま
かぶりを振る瑞月。




咲さんが
瑞月の頭を
そっと抱き寄せる。

〔何か
   さびしいことが
   あったのね?

   可哀想に〕




瑞月は
ぐすんってなる。



「あのね、
   僕、
   キス待ってたの。
   すごくドキドキしてた。

   でもね、
   海斗ね、
   かくれんぼに夢中で
   僕のこと
   忘れちゃったの

   すごく悲しかった。」



咲さんは
まず
瑞月を
ぎゅっ、
って抱き締めた。



背中をさすって
そっと瑞月が落ち着くのを待ってる。
だって
涙がポタポタ落ちてくるんだものね。



そして聞いたの。

〔それが悲しくて泣いてるの?〕




「ううん
   海斗は
   謝ってくれて
   たくさん愛してるって
  言ってくれたの。

  僕、
  我が儘で
  海斗が見てくれないと
  もう泣いちゃうし…………

   嫌な子なんだ
   嫌われちゃう……
   海斗に嫌われたらどうしよう」




涙が
ボタボタっ、
って一気に溢れちゃった。




うーん
咲さん解説したげて

瑞月ちゃん
あなたの海斗は
たぶん
1秒も忘れてないわよ
あなたのこと。




〔あのね、
   瑞月ちゃん
  私も洋館にいたの。

  覚えてる?〕



瑞月が
コクンと頷く。

〔私が戻るとき
   武藤さんが二人を探しに行ったの。

   佐賀さんは時間も分かっていらっしゃる。
   武藤さんが探しにきた理由も
   分かっておられたでしょう。
  お屋敷一番の切れ者なんですから。

  そんなとき
  佐賀さんは
  かくれんぼなんかするかしら?〕



「……でも、したよ」

あらあら
瑞月は頑なね。




咲お母さんは
優しく
聞いてあげる。

〔大人の常識を外れても
  したいことがあったのね。

  なんだと思う?〕




「あ……。」

瑞月の顔が明るくなったわね。
そう
海斗の一番はいつもあなたよ。



〔瑞月ちゃんのドキドキに
  応えてあげたかったんでしょうね、

  だいじょうぶよ
  瑞月ちゃん
  佐賀さんは瑞月ちゃんに夢中だわ。

  嫌うなんて
  とんでもない。



   瑞月ちゃん
   瑞月ちゃんが恋に気づくまで
   ずっと待っておられた方ですよ。

    瑞月ちゃんが
   佐賀さんに恋する気持ちを
   どんなに嬉しく思っているか。

    瑞月ちゃんは
    佐賀さんを信じて
    恋する気持ちに正直にしてればいいの。〕




瑞月が涙目のままで
咲お母さんに相談する。



「僕、
   勘違いして
   海斗を困らせちゃった

   どうしよう?」




咲お母さんは
悠然と
応えてあげる。



〔少し心配させとくくらいが
   殿方には
   いい薬です。


    瑞月ちゃん
    振り回してあげるくらいが
   恋にはいいのよ。

   ハラハラは恋のエネルギーです。

    瑞月ちゃんは
   ただ可愛くごめんなさいすればいいの。

    だいじょうぶよ。
    屋敷の全員があなたの味方です。〕



その通り!
瑞月ちゃん
あなたには
咲お母さんがいる。



素敵!
頼もしいお母さんだわ。

可愛く謝る
可愛くよ

海斗は
それで幸せなんだから




画像はお借りしました。
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