黒猫物語 カナダ滞在 23
2016-02-07 13:48:19
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







エスカレーターを上がってくる長身の姿。
まずは頭から視界に入る。


端正な
それでいて精悍な顔立ち
佐賀さんの目立ちっぷりは変わらない。




その胸に抱き寄せた少年
華奢な肢体に可憐な顔立ち
頬は上気し
眸は輝いている。



佐賀さんが瑞月の足元を
然り気無く気遣い
二人はエスカレーターから踏み出す。





みーちゃった!
佐賀さん
すごく優しくなってる。
瑞月を気遣うのは前からだけど
受ける瑞月が違ってる。




動物園のころ、
瑞月は
きょろきょろ見回しては
何かを見付けたらとことこ動いてて
佐賀さんが幼子を見守る役割をしてる感じだった。




今は違ってる。
佐賀さんの一つ一つから
愛してるを受け止めて
味わってる。




とろけるほどに甘い恋人たちが
俺を見付けた。

瑞月が
佐賀さんを見上げ何か囁いて笑いかける。
かと思ったら
身を翻して駆けてくる。




顔一杯の笑顔!
幸せなんだね
瑞月





抱きついた瑞月と
勢いでくるっと回ってしまった。

「おはよう!武藤さん」



(おはよう
  元気だね 瑞月)


「うん!
  すごく幸せ!

  あのね
  僕、
  海斗に恋しちゃったんだよ」



(すごい!
   よかったね

   どきどきしてる?)



「うん!
  どきどきしてる。」


(佐賀さんにどきどきしてるんだね)


「うん!
   見られても
   触られても
  どきどきしちゃう」



お、
恋人海斗がやってきたぞ。



(瑞月、
  きっとね
  瑞月のドキドキは
  瑞月の中で待ってたんだよ。 )



「待ってたの?」


(そう
   だって
   瑞月は佐賀さんが
   誰より特別だったでしょ?)


「うん!」


(佐賀さんはね
  瑞月の大好きを全部引き受けてたんだ。

  瑞月の大切な人、
  増えたでしょ?

  みんな違うんじゃない?)


「……ほんとだ!
  あのね
  武藤さんはね
  わからないこと教えてくれる人だよ。」



(光栄だよ 瑞月

  ほらね
  おじいちゃんも
  咲さんも
  違う大好きを感じるでしょ?)


「うん!」


(だからね
   佐賀さんが瑞月のどんな人か
  はっきりしたんだ。

   佐賀さんはね
   瑞月が
   求めずにいられない人なんだ。)


「僕が求める?」


(そうだよ
   恋って
   時々すごく苦しい。

   どうしようもなく欲しいのに
   相手が求めてくれない

   そんなときは
   苦しくてたまらなくなる)


「…………知ってる。
   自分で自分を滅茶苦茶にしちゃうんだよね。」


(そんな人がいたの?)


「うん
   …………可哀想だった」


(佐賀さんも苦しかったんだよ)


「え?
   僕、
   いつも海斗が一番だったよ」



(恋してる…………は初めてでしょ?

   燃えるように熱くなる気持ち)



「そうだけど…………」


(瑞月は
   いつも
   佐賀さんを見てたものね。

   でもね
   今の気持ち
   すごくドキドキで抑えられないんじゃない?)


「……うん。
  海斗が好きでたまらない。」


(佐賀さんは
   最初から
   瑞月に
  そんな気持ちだったんだ。

   瑞月は自分を好きだ。
   それはわかってる。

   でも、
   いつか瑞月が燃えるような恋をしたら?

   そんな不安…………わかるかな?)


「…………海斗、泣いてた……。」




『こら!』

「あん!」

佐賀さんが厳然と鉄槌を下した。
頭ゴツン!

うーん
まだまだ大人と子どもだな。


俺は鉄槌を免れた。
ま、
俺が言ったわけじゃない。
海斗、泣いてた…………

(おめでとうございます。)



佐賀さんが
忌々しげに言った。

『お前は
   嫌になるほど優秀だな。』




瑞月は
瞬間立ち直りだな。

「海斗
   だから泣いたの?」

真っ直ぐに佐賀さんを見詰める。
佐賀さんもお手上げだな。
目を逸らしながら白状した。

『もう黙れ
  俺はお前を求めずにいられない。
  最初からだ。』



瑞月が
佐賀さんに抱きついた。
夢中でキスを求める。

恋人たちの時間が流れる。
みんな
空港によくある恋人たちの場面と
思うようだ。
キャスティングが凄いけどね。



目の保養をしながら行き過ぎる善男善女
そして、
瑞月は言った。

「…………海斗!
   ありがとう
   待っててくれて

   ごめんなさい
   待たせちゃって

   僕、
   海斗が好きでたまらない。
   苦しいくらい。
   好きで好きで幸せだよ

   ありがとう」




さあ
続きは日本だ。
皆で帰ろう


画像はお借りしました。
ありがとうございます。