この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






黒猫物語 小景 縁側
2016-01-18 21:30:39
テーマ:クロネコ物語





庭の端に
ふっと人影が現れた。
長身が際立つ。




ほら
海斗よ

私は
瑞月の胸から抜け出した。





「あん!

  どこ行くの?」



瑞月が
コロンと寝返りを打って
顔を上げる。





佐賀さんが
軽く手を上げる。
野性が匂うのよね
あなたの仕草は。




黒づくめの狼さん
あなたの仔猫がふくれてたわよ。
この子の食べ頃を見計らって
戻ってきたの?




「海斗!
   遅いよ。

   僕、
   もうご飯たべなきゃ。
  4時には寝たいんだもの。」



ふくれる瑞月に
目を細める佐賀さんね。





佐賀さーん
あなた

ビミョーに反抗されてるわよ。




縁側に
腹這いのまま
頬杖をついて見上げる瑞月は
足をぱたぱたして
ご機嫌斜めを
アピールしている。





その鼻先に
顔を近づけて
佐賀さんが
返す。



『まだ1時過ぎだ。

   早くないか?』




ピキッ……。



音がしたかと思ったわ。



お目目を
三角にしちゃって。
仔猫ちゃん怒ったの?





「食べるだけじゃないもん!」


『何するんだ?』




真顔で問い返す佐賀さんは
落ち着き払ってる。




「…………いじわる」


縁側にペチャンと顔を伏せて
今度は
上げようとしない。




佐賀さんは
優しく
瑞月の髪に手をやる。


『ちゃんと頼んである。
   すぐに食べられる。

   俺も
   食べてからが
   待ちきれない。


   お前がふくれているのが
   嬉しかったんだ。

   嬉しくて
   お前に言ってほしくなった。


   いじめた。
   悪かった。』





瑞月は顔を上げない。
上げないまま聞く。


「何してたの?」





佐賀さんは
優しく応える。


『すまない。

   屋敷には
   挨拶しなきゃならない人が
   けっこういるんだ。』





狼には
仔猫は
何ほどの重さもない。

ひょいと抱き上げ
膝に乗せると
ギュッと
仔猫がしがみつく。




小春日和の昼下がり
縁側の二人を
温かな日差しが包む。



「許したげる」

『ありがとう』




仔猫が
ちょっと身を離して
佐賀さんを見上げる。


「ご飯食べたらどうするの?」




そうね
確かめなくちゃ
あなたの海斗は意地悪なんだから。




佐賀さんが応える。

『風呂に入ろう。
   そこからは
   俺たちの時間だ。

   お前のよがる声が聞きたい。
   お前が欲しいだけ
   俺をお前にやる。


   これで正解か?』




瑞月は満面の笑顔ね。

「うん!」




じゃ
ご飯に行きましょ。
お台所の横のお部屋でしょ?

素敵なとこよ。
いつもお魚を残しといてくれるの。



あ、
お家じゃないんだから
瑞月を下ろしなさい。
お姫様抱っこで行くのは
どうかと思うわよ。



理性で考えてね、
海斗君。




画像はお借りしました。
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