この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





黒猫物語 正月プロローグ
2016-01-10 20:59:34
テーマ:クロネコ物語





昼には迎えが来る。
じいさんには
多分分かっているんだ。

じいさんは
なんでも分かってくれたからな。
分かって…………認めて…………待ってくれる。

連戦連勝で勝ち上がった。
最強と言われた。
道を失った。
未成年が飲んだくれた。
起きたら屋敷の中だった。

起きてから思い出した。
道に転がっていた。
横にころんと誰かも転がった。

〈家に帰らんのか?〉

『ないんだ。』

〈朝出てきたとこはどうかの?〉

『できなくなったら入れない。
   俺はできなくなったんだ。』

〈ふーん。そうか。〉

『そうだ。』

〈わしんちに来んか?〉



おはよう!
ご飯できてるわよ。
新米さん

長い髪
屈託のない笑顔
俺の道子

……………………。


「佐賀さん
   僕、
   何を着たらいい?」

瑞月、
俺の瑞月。
お前を連れて
あの屋敷に行くのか。


『スーツにしよう。
   正月だ。
   夕べのじゃないぞ。』

「うん!」

元気に着替えようとする手をつかみ
抱き寄せる。

「まだいいの?」

『昼の約束だ。』

見上げる唇を唇で塞ぐ。



お前を愛すること
道子を愛したこと
それは
どちらも運命だった。


じいさんは
きっと分かっている。
いつも分かっていたんだから。


唇を離し
抱き上げ
ベッドに寝かせる。


「え?
   待って
   僕…………」


一気に引き剥いで囁く。

『瑞月
   俺はお前を愛してる。
   忘れるな。』

初めて経験する性急な営みに混乱し
瑞月は悲鳴を上げる。


瑞月の哀しげな悲鳴に
自分の咆哮が重なる。


意識が半濁した瑞月の体を
そのまま抱き締める。

宝物だ。
手の中にあるのに
どうして
こんなに
零れ落ちていきそうに不安なのか。


逢ひ見ての後の心には
今日からの生活に
自分の心が
不安に
震えるのを
抑えることができない。


俺は不安なんだ。
その不安を見据えて
お前を守ろう。



お前を不安にさせたりはしない。
道子に助けてもらう。
俺の道子
俺の瑞月
俺は愛しているんだ。



瑞月が目を開ける。
急激に快感と苦痛の狭間を
揺さぶられたまま
ぼんやりと焦点を結ばない眸。


背を静かに撫でてやる。
瑞月は胸に顔を埋めて深く息をつく。

「どうしたの?」


『欲しくなった。』


「怖かった。
   佐賀さんも怖かった?」

『俺はいつも怖い。
  お前が大切だからな。』

瑞月の髪にキスして
佐賀はベッドを抜けた。





着替えを済ませ
荷物もまとめた。

佐賀は
瑞月に約束させた。

1じいさんに誘われても
    二人だけで外出しない。

2じいさんに誘われても
   どこかに隠れたりしない。

基本
俺の言うことは必ず聞くこと。
じいさんと結託しない。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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