この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






黒猫物語番外編 パーティー2
2016-01-09 08:14:34
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。



新春のホテル正面玄関は
正月飾りにお祝いモードだ。

先程から
到着するメンバーを
メモするだけの退屈な今だ。

俺はこれでも新聞記者だ。
政治畑に配属されたばかり。
入社3年目!
少々張り切ってもいる。

内輪の集まりとかのパーティーを聞き付け
どんな内輪かが知りたいと
一張羅を着込んで
やってきたのだ。


奥様にお嬢様にと
華やかな連れが多い。
与党議員に
財界人
家族ぐるみの内輪という意味だったかと
自分の気負いが気恥ずかしくなっていた。


また
車が滑り込んできた。

運転手が
素早く回り込み
後部座席のドアを開ける。

支配人が一歩踏み出しお迎えする。
紋付き袴の恰幅のよい初老の男。
鷹様に頷く様子に
無理がない。

大物だ。レベルAといったところか。
名前がわからない。
チェックだな。


連れが降りる。
背が高い。
かなり高い。
190前後。
年の読めない男だ。
精悍な顔立ちに最高級のスーツ。
身のこなしに無駄がない。

その男を
レベルAの大物は
腰を低くして迎えた 。
……何者だ?

長身の男は続いて降りる者に
手を差し出す。
奥方か?
落ち着いたオーラがある。
家庭をもっている可能性が高い。

細い指先が
男の手に握られる。
深いワインレッドの袖が続く。

パンツスーツか?

華奢な肢体が
そっと男の腕の中に迎えられた。

男の子!!

細腰を包むかっちりしたスーツが
華奢な肢体を
いやが上にも際立たせている。

胸元から上は白いレースが
うなじまでを柔らかく包んでいる。

レースから覗く首もとに
深紅に輝く石を配したチョーカーが
艶かしく
ドキッとした。

小動物の首輪めいて
付けさせた者を想像させる刺激がある。

もちろん
あの男なのだろう。
手ずから付けさせたのだろうか。

白いうなじを男に向ける少年。
振り向いて
似合う?
と微笑む少年。

頭の中にとめどなく湧いてくる
少年の様々な顔に焦った。

こら
落ち着け

品のある子だ。
なんて綺麗なんだろう。
何を血迷っているんだ。
天使って感じじゃないか。

男の子はいいんだよ。
あの男だろう。


一行は
中に入ってきた。

ロビーのあちこちに咲いていた会話が
次々と静まっていき、
嘆声が上がる。

精悍な狼が
咲き溢れる花を抱いて
ロビーを優雅に進んでいく。

俺は
名刺を出して後を追った。

(失礼します。)
前に回り込み
最敬礼した。
(パーティーの取材にきた者です。
お話を伺えないでしょうか?)

恰幅のいい体を揺らし
大物は応えた。
《ただの宿の主でございますよ。
   御利用いただいているご縁で
   呼ばれております。》

そのまま進もうとする。

(あの!)
主が振り返る。

(そちらの方は?)
長身の男に向かう。

主が
面白そうに訊ね返す。
《私の連れですが
何か?》

(あの
   何というか……
   凄い迫力がある方なので
   ……)

《ただ者ではない。
   そう思われましたか?》

主はにこにこし始めた。
狼を振り返り
話し掛ける。
《ほら佐賀様
   お若い方は
    感じたことに素直なものですな。》

主は名刺を受け取ってくれた。
一応名の通った社だ。
会場に入れてくれると言う。

よし!


佐賀は
付いてくる若造に気取られぬよう
声を潜めて問うた。

『どういうつもりですか?』

《若造にご祝儀をあげただけですよ。
  あなた様に目を付けるなど
  新年早々
  喜ばせてくれましたからな。

  なに
  お気になさることはございませんよ。
  宿で忍び逢っているわけではない。

  新年会でございます。
  楽しませてやりましょう。》

そっと佐賀のスーツが
掴まれた。

セツ渾身の作品が
目を奪う美しさに仕上げられている。
そして、
その眸は不安を浮かべている。

佐賀は
抱いた手に力を入れた。
そっと囁く。
『だいじょうぶだ。
   世話になった人に
   お前を見てもらう。

   それまで
   好きなものだけ
   食べていていいぞ。』

「佐賀さんは?」

『そばにいる。
   だいじょうぶだ。』

「うん!」


気負う若造を加えた一行は
エレベーターに乗った。
最上階
降りればそこは
パーティー会場である。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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