この小説は純粋な創作です。
実際には人物・団体に関係はありません。





黒猫物語番外編 不在の1週間<初秋>8
2015-12-31 10:13:26
テーマ:クロネコ物語






客間に急いだ。
ドアを開けると

妹が太めの体で
天使を背中に隠し、
文鎮を握り締めて
鬼の形相で睨み付けていた。

ああ
そうだよな。
泣き虫のお前は
昔から
自分のために泣いたことがない。

天使を守るために
その文鎮で戦うつもりだったのか。

俺の顔を見て
くしゃっ、
と顔を歪めて泣き出した。
泣きながら
天使を前に押し出す。



天使の泣き顔がサガを見詰める。
銃声の響く中、
ずっと泣いてたのか。

サガがそっと声をかける。

『……おいで』

天使はサガに飛び付いた。
しがみついて名前を呼ぶ。
ただサガの名前を呼びながら
泣いている。

そうか
怖かったんだな。
サガが
サガが心配で
しかたなかったんだな。


サガは天使を抱き締めて
目を閉じた。

自分の腕の中に天使がいることを
しっかり確かめるように
目を閉じて
天使が自分を呼ぶ声を聞いていた。


そして、
目を開けると
天使を抱いたまま
妹に黙礼した。

万感を込めて
サガは頭を下げた。


落ち着いてから
妹は言っていた。

あたしね
ダイジョウブだけ
覚えたのよ。
いつもサガさんが言ってたから。

だから
この子を抱いてね
それだけ
言ってたの。

銃声の響く中
妹は
天使を抱き締めて
あやすように
言い続けたのだ。

ダイジョウブ
ダイジョウブ
ダイジョウブ

妹が言うには
不思議と
全然怖くなかったそうだ。

腕の中の
天使のことしか
考えてなかったんだとさ。


で、
俺とサガは署に行った。
天使は妹が自分の家に連れ帰った。
大量に買い込んだ
レースとリボンとフリフリの服も
しっかり持ち帰った。

俺たちも
署でやることやったら
妹の家に来るように
厳重に言い渡された。
天使は人質だそうだ。

天使は
不安そうだったが、
妹に肩を抱かれ
サガに言い含められ
妹と一緒にパトカーに乗った。

そうだな。
天使はともかく
サガには
もう少し
俺に
付き合ってもらうしかない。

天使には
その間
妹に付き合ってもらうようだ。

思い出したよ。
女の子がいたら
可愛い服を着せてあげられるのに
昔、
残念そうに言っていた。

これ以上可愛い子は
どこ探してもいないだろう。
遣り甲斐があるというものだ。

明日の朝
妹の家に入るときが
楽しみなような
怖いようなだ。

どんな服を
着せてるだろう。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


人気ブログランキングへ