この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






黒猫物語番外編 不在の1週間<初秋>3
2015-12-29 09:31:32
テーマ:クロネコ物語





二人は
救急車で移動だった。

サガが説明して
天使はサガに同乗した。

俺はパトカーにした。
総合病院の前で二人に合流。
天使がびったりサガに張り付いている。

《この子は被害者だ。
診察を頼みます。》

俺が依頼すると
天使も看護士に手を掴まれる。

キャアアアアアッ

初めて聞く天使の声は
悲鳴だった。
無我夢中で
サガにしがみつこうとする。

サガが俺を見詰め、
俺は慌てて
言葉を添えた。

《一緒にお願いします。
  ショックを受けていますから。》

ERは何でも屋だ。
構うまい。

サガの傷は深かった。
カイト・サガ 30歳。
何者なんだろう。

顔色一つ変えず縫合を受けている。
見詰めているのは
隣のベッドだ。




天使が不安げになる度に
静かに声をかけている。

一番は下肢を確認するときだった。
天使は悲鳴を上げ
サガはピシッと声を張った。

『待ってください。』

大声でもないのに
室内は固まった。
医師も
看護士もだ。

まあ、
患者が二人だけで良かったよ。
人命に関わっちまう。

『縫合にどのくらいかかりますか?』

自分の傷を縫い合わせている若い衆に
静かに訊ねる。

若い衆は
教授にでも答えるみたいに
上擦った声で答えてた。
あ、あと10分くらいです!



何だかだで
下肢の確認は
サガの縫合のあとに回された。

縫合を終えたサガは
隣のベッドに移り
天使を抱いて
カーテンを閉めた。

啜り泣きが聞こえる。
サガの声が
優しくかぶる。

ダイジョウブ
ダイジョウブ
ダイジョウブ

何だろうな。
室内にいた皆が
しみじみしてしまうような
不思議な声だった。



治療が終われば調書だ。
俺は非番だ。
誰が来るのかと思ったら…………最悪だった。

《……お前か。》

[何か問題でも?]

問題だ。
お前がNon Whiteにどう対処するか
俺は知っている。

[へぇ
   これは稼げる玉じゃないか。

  どこの店の子だ?]

《被害者だと言ったはずだ。》

[客とのトラブルかい?]

気がついたら
俺はぶん殴っていた。

奴は壁まで吹っ飛んだよ。
ここが救急病棟でよかったぜ。




サガの声が響いた。

『今の刑事の言葉に
   こちらは訴える用意がある。
   そう署にお伝えください。

    皆さん、
   証人になっていただけますか?』

終わりの言葉は
室内にいた全員に向けられた。
皆が口々に請け合ったよ。

天使を汚したんだ。
思い知れ!
ってなもんだ。



で、
サガは
獲得した
調書は俺が取ることを。

『よろしくお願いします。』

《モーガンと言います。
   こちらこそ。》



事件は未遂だが
夏の殺人事件もある。
俺は頼んだ。

《二、三日こちらに
  滞在できませんか。》

『ホテルは引き払いました。
   今夜帰る予定でしたので。』

俺は勇気を振り絞った。

《お、俺の家に泊まりませんか?》

サガは見定めるように
俺を見た。

そして、答えた。

『この子を一人にできません。
   ホテルは望ましくないと
   思っていました。

  助かります。』

天使が我が家にやってくる。
俺は柄にもなく
ときめいていた。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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