この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







小景 恋人の目覚めを待つ
2015-12-23 10:55:20
テーマ:クロネコ物語





仔猫の目覚めを
狼は
待ち受ける。



幼い恋人が目覚めたとき
自分を見る眼差しが
狼は気になるのね。

私もよ。



狼はカーテンを開け放す。
その顔を明るい中に
見ようと?



まず
あなたに見惚れる。

レースのカーテンに
柔らかく調節された光が
狼の全身を
陰影に描き出す。

精悍にして優雅な狼が
恋人を待ち侘びて
焦れている。




「サガさんて…………綺麗。」

微かな声が
ベッドから届く。

仔猫が
サガさんを見詰めていた。




まっすぐ恋人を捉える目が
眩しいほどに
揺らがない。



ただ狼だけを見詰める眸を
その
身に染み入らせて
狼は佇む。



仔猫はしっかりと
身を起こし
年上の恋人を待ち受ける。



二人は挨拶を交わす。

『おはよう。』

「おはよう。」


寒気から恋人を守るよう
狼は仔猫の体を
枕元のガウンに包んだ。



愛するものに
与えられた
快感に撃ち抜かれて

幼い恋人は
はっとするほどに
艶めいた。



ガウンの胸元を寄せる仕草に
匂い立つものがある。

自分もガウンを羽織り、
裸の胸に
暖かな仔猫を抱き取り
慈しむように
囁く。


『愛している』



仔猫も応える。

「愛してる。」


幼さの言わせる「愛してる」を
切なく聞いていた日々は終わりね。

この「愛してる」は
ちょっと期待できるわよ。



「サガさん…………怖かったけど
    もう一度行きたい。

   今度は
  ちゃんと
  サガさんと行きたい。」



狼の胸に唇を這わせようとして
仔猫は狼にそっと顔を上げさせられた。


『まだだ。

   大切な時期だ。
   傷でもついたらどうする。
   馴らしてからと
   言っただろう。


  それより、

  今のお前が
   何を感じているか
   今日はそれが見たい。


   目覚めるお前を見るまで
   不安でたまらなかった。

   傷ついたんじゃないか。
   また、
    泣くんじゃないかと。

  今、
  俺はほっとしているんだ。

  お前は強いな。
   強くて優しい子だ。』



仔猫は微笑み
サガさんを見上げる。

「泣いたりしない。
   愛されてるのに
  なぜ泣くの?


   僕の気持ち、
   また見ていてね。

   サガさんが欲しいって
   わからせたげる。

    僕はサガさんを
    愛してるって
    全身で叫ぶからね。」



そして、
困ったことに
またサガさんを引きずり込もうと
画策するのよ。




これだから
恋人になりきれない。


今日はオフじゃない。
今はジョギングに行く時間。
それが終わったら
あなたの苦手なご飯の時間。



サガさんに
ベッドから叩き出されて
仔猫は着替える。

『まだ無理。』

『もう少し。』

『止めろ。』

『あきらめろ。』

『絶対だめだ!!』

『さっさと動け!!!』


なんだかだと
まとわりついてるうちは
平気でしょ。

子どもなんだから
誘惑されない。



今日のこの子、
私も見たいわ。

そのときは、
ちょっと危なそう。



新年まではお預けよ、
二人とも。

せっかく立てさせた計画でしょ。
きっちり頑張らせてね。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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